7月4日、The Next Webが「AI chip stocks lost 12% in two days as investors hunted new winners」と題した記事を公開した。AIチップ株が2日間で約12%下落し、投資家の資金がエンタープライズソフトウェア株へと移動しつつある市場の構造変化を報じている。「GPUなら何でも買う」という2年間のテーマが崩れ、「AIの果実を刈り取る側」を探す新フェーズへの移行が鮮明になった週だった。
AIチップ株が2日で12%下落
2026年前半を牽引した「GPU関連なら何でも買う」という投資テーマが、独立記念日直前の短縮取引週に崩れた。
フィラデルフィア半導体株指数(PHLX Semiconductor Index)は水曜に6.3%、木曜に5.4%と、わずか2セッションで**合計約12%**の下落を記録した。同指数は2026年前半だけで80%超上昇していたため、この下げは市場に強い印象を与えた。
個別株ではMicronが水曜だけで10%超の下落。SanDisk、Applied Materials、Lam Researchもそれぞれ約10%安。IntelとMarvellは約9%の下落となった。
売りを加速させた要因の一つが、SK Hynixが高帯域幅メモリ(HBM)の生産拡大を減速させているとの報道だ。HBMはAI向けGPUに不可欠な広帯域・高速メモリ規格であり、Nvidiaのアクセラレーターにも採用されている。供給サイドがAIインフラブームの需要に追いついてきたシグナルと受け取られ、製造装置メーカーのASML、KLA、Applied Materialsも5〜6%下落した。
マクロ環境も重なった。6月の非農業部門雇用者数(NFP)はわずか57,000人増と、市場コンセンサスの110,000人のほぼ半分にとどまり、4月・5月分も合計74,000人下方修正された。
チップから「AIの果実を刈り取る側」へ
ただし、これはAIそのものへの不信任ではない。「AIインフラに投資してきた2年間のフェーズが終わり、実際に収益を生み出す企業を探す段階に入った」という市場の読み替えだ。
資金の向かった先はエンタープライズソフトウェアだ。iShares Expanded Tech-Software ETFは4月の安値から35%上昇。けん引役はServiceNow、Snowflake、Palantirの3社だ。
- Snowflake:5月下旬の決算で36%急騰。純新規顧客616社を獲得し、年間100万ドル超の契約顧客数は779社に到達。
- Palantir:Q1売上高は前年比85%増の16.3億ドル。
- ServiceNow:2030年までのサブスクリプション収益として300億ドルを見込み、そのうち約3分の1をAI製品「Now Assist」が占める見通し。
投資家の論理はシンプルだ。AIインフラを供給する側(チップメーカー)には高いバリュエーションを払い続けてきた。次は、そのインフラを使って実際に収益を上げている企業を証明してほしい、というわけだ。
バリュエーションの問題
S&P 500は前半で9.6%、Nasdaqは12%超、Dowは8.9%と、2021年以来最高の前半パフォーマンスを記録した。しかし、**シラーCAPEレシオ(景気循環調整後株価収益率。単年度ではなく過去10年間の実質利益平均をもとに株価の割高・割安を測る指標)は38〜40倍**と、ドットコムバブルのピーク(44倍)に次ぐ水準にある。
強気派の反論は「今回の企業は史上最高の収益力を持つ」というものだ。Nvidiaだけで2026年度の純利益は1,200億ドル超を記録した。
対して懸念派は「サプライチェーンの頂点が儲かることが、中間層の収益を保証しない」と指摘する。ハイパースケーラー(AWS、Azure、Googleクラウドなどの大規模クラウド事業者)は2026年にAIインフラへ6,500億ドル超を支出する見通しだが、Nvidia以外のプレイヤーがそのコストを正当化できるリターンを得られるかは未知数だ。
FRBの利上げ確率が22%に急低下
弱い雇用統計は金利見通しも塗り替えた。7月29日のFOMCでの利上げ確率は一夜にして約**22%に崩落し、据え置きが78%**で圧倒的な本命となった。
FRB議長のKevin Warshは雇用環境を「安定的」と表現しつつ、2%のインフレ目標へのコミットメントを強調するにとどめ、具体的な金利パスについては言及しなかった。
※編集部の考察:2025年初頭時点ではJerome Powellが議長を務めているが、本記事は2026年の市場状況を報じた元記事に基づいており、Warshへの交代は元記事の記述に依拠している。読者は元記事公開時点の文脈として参照されたい。
次の焦点:ソフトウェア企業のQ2決算
市場が再開する月曜日からQ2決算シーズンが始まる。焦点となるのはAIソフトウェア層の実績だ。Snowflakeの顧客獲得ペースが加速しているか、Palantirの商用パイプラインが実際に受注に変わっているか、ServiceNowのAIアタッチレート(AI機能の採用率)が予測通りに維持されているかが試される。
ソフトウェア各社が結果を出せば、今回のチップからソフトウェアへの「ローテーション」は先見の明があったと評価される。出せなければ、AIトレード全体が「インフラは整ったが、アプリケーションは来なかった」という厳しい問いに直面することになる。
詳細はAI chip stocks lost 12% in two days as investors hunted new winnersを参照していただきたい。