7月4日、The Newsが「Meta CEO Mark Zuckerberg admits AI strategy 'miscalculated' after 8,000 layoffs」と題した記事を公開した。ロイターが入手した社内タウンホールの録音によれば、MetaのCEO マーク・ザッカーバーグが、約8,000人規模のレイオフ後もAIエージェント開発が期待通りに進んでいないと率直に認めていたことが明らかになった。公式声明ではなく社内発言の漏洩という形で表面化した事実だけに、その重みは一層大きい。
「想定通りに加速しなかった」——社内録音が捉えたザッカーバーグの言葉
Metaが今週開催した社内タウンホールで、ザッカーバーグはロイターが入手した録音によると、「少なくとも過去4ヶ月間、エージェント開発の軌跡は我々が期待した形では加速していない」と発言した。さらに、構造改革への賭けは「まだ実を結んでいない」とも述べている。
この発言が重いのは、発言の約2ヶ月前——2025年5月頃——に約8,000人(全従業員の約10%)を削減し、さらに別途7,000人をAI特化チームへ異動させる大規模な組織再編を実施していたという文脈がある。これだけの犠牲を払った構造改革が、当初の想定どおりに機能していないと、CEOが社内で率直に認めた格好だ。
ザッカーバーグは、この再編が計画ほど「クリーン」ではなかったと認め、変更のタイミングを「幹部が誤算した(miscalculated)」と述べた。一方で、MetaのAI投資から3〜6ヶ月以内に意味ある成果が出ると見込んでいるとも従業員に語っている。
組織再編の背景——幹部が「超楽観的」だったツールへの期待
ザッカーバーグは誤算の背景にも言及した。1月〜2月に組織再編を計画していた段階で、幹部らはAnthropicのClaude Codeなどのコーディング支援ツールに対して「超楽観的(super optimistic)だった」と述べた。当時の社内の議論は「Metaが競合の動きに追いつけていないのではないか」という焦りから生まれたものだったという。
ただし、録音の内容はロイターを通じた間接的な報道であり、ザッカーバーグがClaude Codeを誤算の「主因」として名指しした事実は元記事でも明確にされていない。あくまで当時の楽観的な雰囲気を象徴するツールとして言及されたものとして受け取るべきだろう。
MetaはAIインフラへの投資を今年だけで最大1,450億ドル支出する計画を持つ。この巨額投資は、ザッカーバーグが2023年に掲げた「Year of Efficiency」路線——大規模なコスト削減と組織スリム化——からの大きな方針転換でもある。効率化を優先した末に積み上げた余力を、今度はAIに全振りする構図だが、現場の実行力がそのペースに追いついていない実態が、今回の社内発言から浮かび上がる。
※Claude CodeについてはAnthropicの公式ページに詳細がある。
組織内の混乱——現場から「カオス」の声
同タウンホールでは、Meta CTOのアンドリュー・ボズワース(Andrew Bosworth)も登壇し、問題が相次ぐ組織の立て直しを宣言した。
ボズワースは以前、Wiredが報じた社内メモの中で、Metaが3月に設立した6,500人規模のApplied AI部門の立ち上げを「ひどい(atrocious)」と表現していた。この部門に配属された社員からは「業務がカオスだ」という声が上がっており、ある社員は職場環境を「グラーグ」と呼んだと伝えられている(「グラーグ(Gulag)」はソ連時代の強制労働収容所制度を指す歴史的用語で、これは社員が職場環境を皮肉った表現として伝えられたものである)。
ボズワースは今後の改善策として以下を示した:
- マネージャー1人あたりの直属レポートを最大20人に制限
- キャリア開発への投資
- オフィス環境の改善によるモラル(士気)の立て直し
マウストラッキング問題にも言及
タウンホールではもう一つの問題も取り上げられた。一時停止されていたMetaのマウストラッキングソフトウェアのレビューについて、ボズワースは「従業員データがAIのトレーニングに使われた事実はなかった」と説明した。プログラムを再開する場合はオプトイン方式で運用するとしており、これは4月時点の「オプトアウト不可」という方針からの転換となる。
まとめ——「Year of Efficiency」の次に来るはずだった果実
大規模なレイオフと組織再編を断行してなお、AIエージェント開発の実態は「想定より遅い」。2023年の「Year of Efficiency」でコスト構造を刷新し、2024年〜2025年にかけてAI投資を急拡大させたMetaだが、現場組織の再構築が追いついていない現実が、今回の社内発言から透けて見える。Applied AI部門の混乱はその象徴的な事例であり、投資規模と実行能力のギャップを埋める作業は、まだ緒に就いたばかりと言える。
ザッカーバーグが示した「3〜6ヶ月以内に意味ある成果」という見通しが現実のものとなるか。それとも社内からの不満がさらに表面化するか。AI覇権を競う各社が開発を加速させる中、Metaが内部の実行力をどう立て直すかは、業界全体にとっても注目点となるだろう。
詳細はMeta CEO Mark Zuckerberg admits AI strategy 'miscalculated' after 8,000 layoffsを参照していただきたい。