7月4日、Laurie Vossが「AI has torched the market for junior programmers」と題した記事を公開した。Vossはnpmのリードエンジニアを務めた人物で、現在はテック産業のデータ分析を専門とするブロガーとして知られる。
AIの登場によってプログラミングの裾野は爆発的に広がった——しかしそれと同時に、ジュニアプログラマーの雇用市場は静かに崩壊している。この逆説的な現状を、複数のデータから鮮明に描き出した記事だ。
22〜25歳のエンジニア雇用が19%減
スタンフォード大学のDigital Economy LabがADP(全米最大の給与処理会社)の給与データをもとに作成したチャートが、この問題の核心を示している。
2022年10月を基準(100)とした場合、22〜25歳の米国ソフトウェア開発者の雇用は2022年末のピークから19%減少した。一方、30歳以上はすべての年齢コホートで増加しており、41〜49歳は14%増となっている。
興味深いのは、この下落のタイミングだ。ジュニア層の雇用はChatGPTのリリース(2022年11月)ではなく、その数ヶ月前からすでに下落を始めている。そして最も急激に悪化したのは2024年から2025年前半にかけて——これはコーディングアシスタントが「行の補完」から「チケット(タスク)全体の完遂」へと進化した時期と重なる。ここで言う「エージェント型プログラミング」とは、AIが人間からの指示を受けて要件定義から実装・テストまでを自律的にこなすスタイルを指す。ジュニア雇用を本当に破壊したのはChatGPTではなく、このエージェント型AIだ。
他の数字もこの傾向を補強している。
- エントリーレベルのソフトウェア求人:2022年ピーク比で28%減
- コンピュータサイエンス専攻の卒業生失業率:**6.1%**(リベラルアーツ専攻を上回る)
2019年には考えられなかった数字だ。
「平均」を見ると何も起きていない
矛盾するようだが、マクロ統計では雇用市場は堅調だ。
- 米国全体の雇用:2024年5月〜2025年5月で0.8%増
- コンピュータ・数学系職種:同期間で1.3%増(経済全体より速い成長)
- ソフトウェア開発者の総数(BLS=米労働統計局):2022年5月の153万人から2025年5月に169万人へ、10%増
なぜジュニアの壊滅と総数の増加が同時に起きるのか。答えはシンプルで、ジュニア(22〜25歳)は開発者全体の約8%にすぎない。そのセグメントが崩壊しても、集計値はほぼ動かない。「平均を見る研究は何も見つからず、ジュニアを見る研究は惨状を見つける」という構造だ。
消えているのは「コードを書く仕事」だ
BLSの職種別データ(2024年5月〜2025年5月)がさらに示唆的だ。
- コンピュータープログラマー:16%減(BLSが2020年代初頭に予測していたのは「10年間で6%減」であり、わずか1年でその予測値の2倍以上の下落が起きている)
- ウェブデベロッパー:11%減
- QAテスター:6.5%減
- データサイエンティスト:12%増
- システムアナリスト:4.4%増
消えているのは「仕様通りにコードを書く」仕事だ。成長しているのは「どんなコードを作るべきかを判断する」仕事である。AIは非常に特定の種類のプログラミングジョブを侵食している。
新しい開発者は「別の名前」で現れた
Vossはかつて「AIは新しい抽象化レイヤーであり、これまでの抽象化レイヤーと同様に開発者を爆発的に増やす」と予測していた。その予測自体は当たったが、彼らは自分を「開発者」とは呼ばない。
- GitHubは直近のOctoverse年に3,600万の新規アカウントを追加(史上最速の成長)
- 新規リポジトリ数は1億2,100万件(プラットフォーム史上最多)
- 新規ユーザーの80%が初週でCopilotを使用
App Storeのデータも象徴的だ。iOSアプリの新規申請は2016年のピーク後8年連続で減少していたが、2025年に24%増加に転じた。2026年Q1はさらに前年比80%増を記録し、Appleのレビュー期間が2日から数週間に延びるほどだ。
これらの新しい作り手は誰か。Vercelによると、バイブコーディング(vibe-coding:AIへの指示だけで直感的にアプリを作るスタイル)ユーザーの63%がノンデベロッパー。Lovableは60%がノンデベロッパーとし、毎日10万件以上のプロジェクトが生まれている。Replitには5,000万人が利用した。マーケター、創業者、教師、アナリスト、プロダクトマネージャーがソフトウェアを書いている。だが彼らの肩書は「マーケター」「PM」であり、労働統計はその肩書を数える。
最大の問題:次のシニアエンジニアはどこから来るか
かつてのエンジニアキャリアはこう機能していた。ジュニアが平凡なコードを書き、シニアがレビューし、その繰り返しの中でジュニアは判断力を吸収し、10年後にシニアになる。このサイクルが壊れた。
AIが平凡なコードを書くようになったため、ジュニアを雇う必要がなくなった。するとシニアになるための行列に並ぶ人間がいなくなる。
セキュリティの問題も深刻だ。Veracodeの調査では、AIが生成したコードの45%がOWASP(オープンWebアプリケーションセキュリティプロジェクト)の基本的なセキュリティテストに不合格。バイブコーディングアプリの監査では、10%にユーザーデータを露出させる重大な行レベルセキュリティの欠陥が見つかっている。
企業の対応は真っ二つに割れている。IBMはAIを装備したジュニアが従来のシニア業務を担えるとの判断から、エントリーレベル採用を3倍に拡大している。一方、Salesforceは昨会計年度のエンジニア採用をゼロにした。この2社が描く未来のどちらが正しいかで、2036年にシニア開発者が十分に存在するかどうかが決まる。
求人データには微かな回復の兆しもある。Indeed上のソフトウェア開発求人は2025年5月を底に13ヶ月連続で増加し、前年比10%増となっている。
「タイピスト」の前例
Vossはこう締めくくる。「タイピスト」はかつて職業だったが、タイピングが誰もが持つスキルになった時点で職業としては消えた。プログラミングも同じ道を歩んでいる。問題なのは、その梯子に登り始めようとしていた人たちに向けて、まだ新しい梯子が用意されていないことだ。今後数年で「次の梯子」が何になるかを見極めることが、この業界全体の課題と言える。
詳細はAI has torched the market for junior programmersを参照していただきたい。