7月3日、Dataconomyが「Anthropic explores Samsung partnership to develop custom AI chips」と題した記事を公開した。AnthropicがSamsungと独自AIチップの共同開発に向けた協議を進めていることを報じており、The Informationの報道に基づく内容だ。
Nvidia依存からの脱却を模索するAI各社
AI業界において、NvidiaのGPUへの依存度を下げる動きが各社で加速している。Anthropicもその例外ではなく、The Informationの報道によると、SamsungとのカスタムAIチップ共同開発に向けた協議が進行中だという。
ただし、チップの用途・サーバーへの統合方法・仕様といった具体的な詳細はまだ決まっていない段階だ。協議はあくまで初期フェーズにあり、正式な契約や開発ロードマップの合意には至っていない。
「ハードウェアの多様化」を明言
Anthropicは米TechCrunchに対し、Google・Amazon・Nvidiaのコンポーネントを含む多様なハードウェアスタックを維持する方針を強調した。Samsungとの提携についての追加コメントは出していない。
この発言からは、Samsung製チップへの一本化ではなく、調達先を分散させることでチップ不足への耐性を高める戦略が読み取れる。大規模言語モデルの学習・推論には膨大なコンピューティングリソースが必要であり、単一ベンダーへの依存はコスト面でも供給安定性の面でもリスクとなる。Anthropicはこうしたリスクを分散するため、複数のハードウェアパートナーとの関係構築を進めているとみられる。
OpenAIの「Jalapeño」が背景にある
今回の動きの背景として見逃せないのが、OpenAIの動向だ。元記事によると、OpenAIは「Jalapeño」と呼ばれるカスタム推論プロセッサを開発・発表しており、既存の競合モデルより高い効率性を主張しているとされる。
Anthropicの今回の協議は、こうしたOpenAIの動きへの対応という側面もあると記事は指摘している。AI推論(inference)向けの専用チップ開発は、大規模言語モデルの運用コスト削減において直接効いてくる領域だ。汎用GPUと比べ、特定のワークロードに最適化されたASIC(特定用途向け集積回路)は消費電力あたりの処理効率が高く、推論コストの大幅な削減が期待できる。各社が独自チップを持つかどうかはコスト競争力に直結するため、主要AI企業がこぞって自社チップ開発に動いている。
Samsungの立ち位置
Samsungは半導体設計・製造の両面で実績を持つ企業だ。元記事によると、NvidiaのAIチップ関連ソフトウェアを活用したチップ生産を手がけており、韓国国内ではAIチップ向け工場の建設も進めている。またGoogleとのAIチップ関連協議を別途模索してきた経緯もあると記事は述べている。
こうした文脈でSamsungを理解する上で重要なのが、HBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリ)だ。HBMはAI向けチップに不可欠なメモリ技術であり、SamsungはSK Hynix・Micronと並ぶHBMの主要サプライヤーでもある。AIチップの性能はメモリ帯域幅に大きく左右されるため、チップ製造技術とHBM供給能力の両方を持つSamsungは、AI企業にとって魅力的なパートナー候補といえる。
Samsungはこのように、複数のAI企業との連携を並行して模索しながら、AIチップサプライチェーンの中で存在感を高めようとしている状況だ。
まとめ
現時点では協議の初期段階であり、チップの仕様も用途も未確定だ。ただ、Anthropic・OpenAI・Googleといった主要AI企業が軒並みカスタムチップの内製・共同開発に動いているという構図は明確になってきた。Nvidia一強の市場に対する圧力が、AIの需要拡大とともに高まっている。Anthropicにとって今回のSamsungとの協議は、その戦略的布石のひとつと位置付けられる。
詳細はAnthropic explores Samsung partnership to develop custom AI chipsを参照していただきたい。