7月3日、Matthias Bastianが「Anthropic reportedly explores custom chip manufacturing with Samsung while insisting Nvidia still matters」と題した記事を公開した。「NvidiaはAnthropicの戦略の中核であり続ける」と公言しながら、その裏でSamsungとのチップ製造交渉を進め、専任チップエンジニアの採用まで加速させているAnthropicの動きは、建前と実態の乖離として注目に値する。
AnthropicがSamsungとカスタムチップを交渉中
The Informationの報道によると、Anthropicはサムスン電子と独自AIチップの製造について協議を進めている。ただし、プロジェクトはまだ初期段階にあり、詳細な設計は存在しない。チップの役割や必要なスペックすら、現時点では固まっていないという。
Anthropic自身はこの動きを矮小化しており、「AWS・Google・NvidiaのチップはAnthropicの戦略の中核であり続ける」とThe Informationにコメント。自社チップのロードマップについての言及は拒否した。
Samsungとの交渉という点も注目される。Samsungの半導体部門(Samsung Foundry)は、TSMC(台湾積体電路製造)と並ぶ受託製造の大手として知られているが、近年はTSMCとの歩留まり・技術力の差が指摘されてきた。一方で、価格競争力やAnthropicの主要投資家であるAmazonとの既存関係なども含め、パートナーとして選ばれる理由は複数考えられる。初期段階の交渉先としてSamsungが浮上していること自体、Anthropicがコスト面での柔軟性を重視している可能性を示唆している。
チップ開発に向けた人材採用は進んでいる
公式見解とは裏腹に、チップ開発に向けた布石は着々と打たれている。
Anthropicはチップエンジニアの採用を進めており、注目されるのがClive Chanの入社だ。彼はTeslaとOpenAIの双方でカスタムチップチームの初期メンバーを務めた人物であり、Anthropicでは専任チップグループの立ち上げを担うと見られている。
OpenAIの「第2号チップエンジニア」をAnthropicが引き抜いた、という文脈は象徴的だ。シリコン開発の経験者を取り込む動きは、「まだ研究段階」という説明と整合しない部分もある。
なぜ今、AIラボは独自チップを目指すのか
これはAnthropicだけの話ではない。AI業界全体でカスタムシリコン(特定用途向けに設計・最適化された半導体)への傾斜が加速している。
推論コストの削減が直接的な動機だ。AIモデルを動かすインフラを安くできるほど、売上から手元に残る利益が増える。汎用GPUより専用チップの方がコスト効率で勝る場面が多く、大手はそこに投資している。
OpenAIは最近、BroadcomとともにLLM推論向けの自社チップ「Jalapeño」を発表した。AWS(Trainium/Inferentia)、Google(TPU)、Meta(MTIA)もすでに独自シリコンをAIワークロードに投入済みだ。Anthropicがこの流れに乗ろうとしているのは自然な帰結といえる。
Nvidiaとの関係は維持しつつ
Anthropicの「NvidiaはまだCentral」という発言は単なる外交的配慮だけではないかもしれない。カスタムチップは特定のワークロードに特化している分、訓練や汎用推論ではNVIDIA GPUの柔軟性に頼る部分が残る。OpenAIもJalapeñoを発表しながら、NvidiaとのGPU調達関係を維持している。
両立させること自体がAIラボの現実的な戦略であり、「独自チップ=Nvidia排除」という構図は単純すぎる。Anthropicが仮にSamsungとの製造契約に至ったとしても、当面はNvidiaのH100/H200系GPUを訓練インフラの主軸に置き続けるとみるのが自然だ。
詳細はAnthropic reportedly explores custom chip manufacturing with Samsung while insisting Nvidia still mattersを参照していただきたい。