7月2日、Kanwal Mehreenが「10 Agentic AI Frameworks You Should Know in 2026」と題した記事を公開した。この記事では、2026年時点でAIエンジニアが押さえておくべきエージェントAIフレームワーク10選について詳しく紹介されている。
エージェントAIフレームワークは、LLMとツールを繋ぐ薄いラッパーから脱却しつつある。今や優れたフレームワークは、状態管理・メモリ・ツール利用・評価・デプロイまでを統合して提供する。著者のKanwal MehreenはGitHubのディスカッションやRedditのスレッドを精査しつつ、実際にいくつかを使った経験をもとに10本に絞り込んだという。
この変化の背景には、2025〜2026年にかけて起きたいくつかの構造的な変化がある。**MCP(Model Context Protocol)の普及により、ツール・データソースとエージェントを繋ぐ標準インターフェースが整いつつある。また、LangSmithやWeaveといった評価・観測基盤の成熟により、「エージェントが何をしているか把握できない」という本番投入への最大の障壁が低くなった。さらに、マルチエージェント構成やHuman-in-the-loopを前提とした設計パターンがコミュニティで標準化されてきたことで、フレームワーク側もそれらをファーストクラスでサポートするようになっている。こうした基盤整備が揃ったことで、エージェントAIは実験段階から実用フェーズ**へと移行しつつある。
最も制御が効く:LangGraph(⭐約36k)
10本の中でエンジニアが最初に検討すべきは**LangGraph**だろう。アプリケーションを「状態と遷移のグラフ」としてモデル化し、分岐・ループ・中断・障害後の再開・チェックポイントからの復帰といった複雑な制御フローを表現できる。
LangGraphの本質は「エージェントをより自律的にする」ことではなく、「エージェントを検査可能にする」ことにある。モデルが自由に動いてよい箇所、決定論的なロジックが必要な箇所、ツール使用に承認が必要な箇所、状態を永続化すべき箇所——これらをすべて開発者が明示的に決定できる。
カスタマーサポートシステム、リサーチアシスタント、コーディングワークフロー、運用ツールなど「最初からやり直せない長時間実行エージェント」に向く。学習曲線は急だが、本番環境の複雑さに耐えるワークフローが必要なら選択肢として外せない。
向いているケース: 複雑なステートマシン、長時間実行ワークフロー、Human-in-the-loopエージェント
素早く動かしたい:CrewAI(⭐約55k)
**CrewAI**はGitHubスター数トップのフレームワークで、メンタルモデルのわかりやすさが人気の理由だ。エージェントにロール(研究者、アナリスト、ライター、レビュアーなど)を与え、タスクを割り当て、「クルー」として組織する。非技術系のステークホルダーにも説明しやすいワークフローを素早く構築できる。
ただし、ロールベースのマルチエージェント構成は必要以上に複雑になりがちという指摘もある。出力の検証やツールアクセスの制御、エージェント間の重複作業の排除は依然として開発者の責任だ。
向いているケース: ロールベースのマルチエージェント・プロトタイプの高速構築
残り8フレームワークの概要
紙幅の都合上、LangGraphとCrewAIを詳述し、残り8本は要約形式で紹介する。
OpenAI Agents SDK(⭐約27k)
ツール使用エージェントを小さく始めたいチーム向け。エージェント・ツール・ハンドオフ・ガードレール・セッション・トレースがコアの構成要素。OpenAI以外のモデルプロバイダーにも対応する。LangGraphほどワークフローの永続設計に踏み込まない分、学習コストは低い。
Google ADK(⭐約20k)
Gemini・Vertex AI・Cloud Runを使うチーム向けのコードファーストツールキット。ローカル開発UIを内蔵し、クラウドにデプロイ前のエージェント検証が容易。MCP(Model Context Protocol)統合にも対応。開発ペースが速いため、バージョンを固定して慎重にアップグレードすることが推奨されている。
PydanticAI(⭐約18k)
型安全性・バリデーション済みツール入力・構造化出力を重視するPython開発者向け。PydanticやFastAPIが浸透させた開発体験をエージェント開発に持ち込む。サポートチケット生成、DB更新、APIペイロード生成など「フィールドの誤りが下流に影響する」ユースケースに強い。
smolagents(⭐約28k)
Hugging Faceによる軽量フレームワーク。JSONの代わりにPythonコードでアクションを表現する「コード思考型エージェント」。コアのエージェントロジックが小さく読みやすい。ただし、モデルが生成したコードを実行するため、サンドボックス設計とパーミッション管理が必須。本番投入前にセキュリティ設計を先行させること。
Mastra(⭐約25k)
TypeScriptファーストのフルスタックフレームワーク。エージェント・ワークフロー・メモリ・RAG・評価・MCP統合をカバーし、React/Next.js/Node.jsとのインテグレーションを提供。「モデルが判断する部分」はエージェント、「手順が決まっている部分」はワークフローと使い分ける設計が実践的。
Microsoft Agent Framework(⭐約12k)
Pythonと.NETの両方をサポートするエンタープライズ向けフレームワーク。グラフベースのオーケストレーション・ミドルウェア・テレメトリ・Azure連携を提供する。.NETの知見を持つ組織やMicrosoft 365連携が必要なチームに向く。※元記事に「AutoGenとSemantic Kernelの知見を統合」という記述があるか確認が取れなかったため、前版の該当表現は削除した(編集部注)。
Strands Agents(⭐約6.3k)
ワークフローの各ステップを事前定義せず、モデル自身がツール選択と手順を推論する「モデル駆動型」アプローチ。AWS・Amazon Bedrockユーザーとの親和性が高い。オープンエンドなタスクには便利だが、重要なアクションを伴う場合はツール境界の設計と承認ステップが必要。※リンク先リポジトリは元記事との照合結果に基づき更新した。正確なURLは元記事で確認されたい。
LlamaIndex Workflows(⭐約38k)
イベント駆動型のワークフローモデルで、ステップがイベントを受け取り・処理し・次のイベントを発行する設計。RAGや文書分析、エンタープライズ検索など「エージェントに正しいデータを渡すことが主な課題」となるユースケースに特に向く。汎用エージェントオーケストレーションより検索・文書ワークフローが強みと評価されている。※前版のリポジトリURL(llama-agents)はスター数が極端に少なく旧リポジトリの可能性があったため、LlamaIndexメインリポジトリへのリンクに修正した。正確なWorkflows専用リポジトリは元記事で確認されたい(編集部注)。
選び方の整理
| フレームワーク | 主な強み | 言語 |
|---|---|---|
| LangGraph | 制御性・検査可能性 | Python |
| CrewAI | ロールベース・高速プロト | Python |
| OpenAI Agents SDK | 軽量・クリーンなAPI | Python |
| Google ADK | Gemini/GCP統合 | Python |
| PydanticAI | 型安全・構造化出力 | Python |
| smolagents | コード思考・軽量 | Python |
| Mastra | フルスタック | TypeScript |
| Microsoft Agent Framework | エンタープライズ/.NET | Python/.NET |
| Strands Agents | モデル駆動・AWS親和 | Python |
| LlamaIndex Workflows | RAG・文書処理 | Python |
著者がまとめているとおり、「最も人気のあるフレームワーク」が「最も適切なフレームワーク」とは限らない。制御の粒度・状態管理の必要性・チームのスタック・本番環境の要件を軸に選ぶのが現実的な判断基準だ。
詳細は10 Agentic AI Frameworks You Should Know in 2026を参照していただきたい。