7月1日、Search Engine Journalが「ChatGPT Users Are Now Mostly Non-English」と題した記事を公開した。あなたのプロダクトは、誰に向けて作られているか。「英語話者」を暗黙の前提に置いたまま設計・運用されているなら、ChatGPTが今回公開した消費者利用データは、その前提を根底から揺さぶるものになるかもしれない。
ChatGPTユーザーの過半数が非英語話者に
OpenAIが公開した消費者利用データによると、アクティブなChatGPTユーザーの50%超が英語以外の言語を主に使用している。最も多い非英語言語はスペイン語、ポルトガル語、アラビア語の順だ。
このデータが対象とするのは、Free・Go・Plus・Proといった個人向けプランのユーザーであり、Codex・Enterprise・教育向けプロダクトは含まれない。つまり、職場や技術分野、教育機関での利用は反映されていない点に注意が必要だ。
アフリカ・アジアで最速成長、注目はウズベク語・カザフ語・ビルマ語
OpenAIが運営するSignalsプログラムは、消費者プランの利用状況を継続的に追跡している。2023年7月をベースラインとした比較では、全大陸でWeekly Active Usersが増加しており、相対的な成長速度が最も速いのはアフリカとアジアだ。
OpenAIは、人間開発指数(HDI)が低い国々で相対成長が最速だったと報告している。FreeプランとGoプランを通じた低コストアクセスの提供が、その背景にあるとしている。
非英語圏の中でも特に興味深いのが、小規模言語の急成長だ。2026年6月時点で、月間アクティブユーザーが100万人を超える言語のうち、最も増加率が高かったのはウズベク語・カザフ語・ビルマ語だった。英語圏を中心に普及した初期とは、ユーザー層の地理的構成が大きく変わっている。
検索クエリは今もバックグラウンドで英語処理される
ユーザー構成の多様化が進む一方で、技術的な課題も残る。Search Engine Journalが今年初めに報じた調査によると、ChatGPT Searchは元のプロンプトが英語以外であっても、バックグラウンドの検索処理を英語で実行することが多い。
ここでいう「バックグラウンドの検索処理」とは、回答生成のために複数のサブクエリを展開するfan-outと呼ばれる仕組みを指す。スペイン語やアラビア語で質問しても、英語ソースを経由してから回答に至るケースがある、ということだ。ユーザー層は非英語圏に広がっているが、検索の裏側では英語中心のパイプラインが残っている。この乖離は、多言語対応の本質的な課題を示している。
ユーザー行動の変化:半年で送信メッセージ数が50%増
利用実態に関するデータも公開されている。2025年10月中旬から2026年5月初旬に作成されたアカウントの0.1%サンプルを分析した結果、ChatGPTを6か月使い続けたユーザーは、1日あたりのメッセージ送信数が約50%増加し、試みるタスクの種類も2倍に増えた。
また、推定された利用者の性別構成についても言及がある。女性的な名前を持つユーザーが昨年のパリティ達成を経て、現在は男性的な名前を持つユーザーを上回っているとしている。ただしこれは名前から性別を推定する間接的な手法によるものであり、実際のジェンダー分布を直接計測したデータではない点には留意が必要だ。SEJの記事においても、OpenAIがこの推定にどのデータソースや分類手法を用いたかは明示されていない。
英語圏だけを向いたプロダクト戦略はもう通用しない
2024年9月にOpenAIがハーバード大学と共同で実施した大規模消費者利用調査でも、低所得国での成長加速とジェンダーギャップの縮小が示されていた。今回のデータはその傾向を延長する形になっている。
Signalsは継続的に更新されるデータセットであり、非英語ユーザーが多数派となった今後の推移が注目される。英語話者向けに最適化されたコンテンツやプロダクト戦略を持つ企業にとって、ChatGPT内部の「多数派ユーザー」がすでに別の言語を使っているという事実は、無視できない変化だ。SEOやコンテンツマーケティングの観点でも、英語一辺倒の最適化戦略が前提とするユーザー像と、ChatGPTが実際にリーチしているユーザー層との間に、すでに大きなズレが生じている。
詳細はChatGPT Users Are Now Mostly Non-Englishを参照していただきたい。