7月2日、The Next Webが「Palantir's 'AI sovereignty' manifesto takes aim at the labs」と題した記事を公開した。Palantirが9カ条のAI主権マニフェストを発表し、OpenAIやAnthropicのトークン課金モデルを「偽の進歩」と批判した件について詳しく紹介されている。
「tokenmaxxing」への宣戦布告
Palantirは7月1日、「AI主権の重要性に関する考え」と題した9カ条のスレッドをXに投稿した。内容を一言で言えば、「データとモデルの重みを他者に渡すな」というものだ。
最も鋭い攻撃は「tokenmaxxing」という概念に向けられている。これはAIにできるだけ多くのトークンを消費させ続けること、つまりOpenAIやAnthropicのような企業が収益を得る構造そのものを指す。Palantirはこれを「偽の進歩という中毒的な感覚」と切り捨てた。
続けて、「トークンを売る側が価値ベースの課金を拒む理由がある」とも述べている。これはトークン従量課金で収益を上げるOpenAIやAnthropicへの直接的な批判だ。CEOのAlex Karpはフォローアップ投稿でさらに直接的に「本当に価値があるなら、なぜトークン単位で課金するのか」と問いかけた。
この批判には一定の根拠がある。トークン単価は下落し続けているにもかかわらず、企業のAIコストは3倍に膨らんでいるという実態が背景にある。
マニフェストの中身
9カ条の主要な主張は以下のとおりだ。
- 「AIの主権が組織の未来を決定する」(第1条)
- 「データ保持は財産である」(第2条)
- 「モデルの重みを制御することが運命を制御すること」(第4条)
「モデルの重み(weights)」とは、学習済みモデルが獲得した知識をエンコードする数値群のことだ。どのモデルが何を「知っている」かはこの数値に集約されており、Palantirはこれを組織の「最重要資産」と位置づけている。
Palantirとは何者か
ここで企業の文脈を補足しておく。Palantir Technologiesは2003年にピーター・ティール、アレックス・カープらによって設立されたデータ分析・AI企業だ。CIAの出資を受けたIn-Q-Telが初期投資家として名を連ねており、創業当初から米国政府・防衛機関向けのデータ基盤構築を主軸に置いてきた。CEOのAlex Karpは哲学博士号を持つ異色の経営者として知られ、シリコンバレー的な「テック楽観主義」とは一線を画す発言で注目を集め続けている。現在はNYSE上場企業であり、政府部門・民間部門の双方にFoundry・AIPなどのプラットフォームを提供している。
原則に見えるが、実態は営業トークでもある
ここで重要な文脈がある。Palantirのビジネスモデルは、顧客のインフラ内部にソフトウェアやAIモデルを展開することだ。外部ネットワークから切り離されたエアギャップ環境も含む。今週はNATOの機密ネットワークへの認定取得も発表した。また、NvidiaのオープンモデルをパッケージングしてAI政府向けに「主権AI」として販売している。
「スタックを自社で所有せよ」というマニフェストは、そのままPalantirを買う理由になる。
Karpは以前からライバル企業への批判を隠さない。CNBCでは「AI企業は自分たちがどれだけ嫌われているか理解していない」と発言し、「製品は顧客が期待する通りには動かない」とも述べた。AI企業の国有化を予測する発言もしている。今回のマニフェストはその世界観と一致しており、スタートアップではなく国家や軍に向けて書かれている。
「主権」はPalantir自身にも向かう刃
皮肉なことに、「主権」という言葉は今やPalantir批判にも使われている。欧州では、フランスの対外情報機関がPalantirを捨て国産ツールに切り替えた。ドイツ軍も距離を置き続けている。EU各国にとっての「真の主権」は、声高に独立を説く米国ベンダーへの依存も含めて排除することを意味するからだ。
Palantirの主張の核心——データとモデルの重みは競争優位の源泉であり、第三者に渡すことはリスクを伴う——は合理的な指摘だ。マニフェストが指摘するtokenmaxxing問題やベンダーロックインへの警鐘は、企業・政府のAI調達担当者にとっても検討に値する論点を含んでいる。一方で「alpha」や「生産手段」といった大げさな言葉で9カ条の聖典に仕立てたのは、西側の機関がAIの所在を急に気にし始めたこの時機を狙ったブランド構築でもある。主張の妥当性と語り手の利害関係を切り分けて読む視点が求められる。
詳細はPalantir's 'AI sovereignty' manifesto takes aim at the labsを参照していただきたい。