7月1日、The Decoderが「Meituan's LongCat-2.0 shows China can train massive AI models without Nvidia」と題した記事を公開した。中国の食品デリバリー大手・美団(Meituan)がNvidiaチップを一切使わず、国産ASICだけで1.6兆パラメータのLLMを学習させることに成功したと発表した。ただし現時点では自己申告段階であり、外部による独立検証は完了していない点には留意が必要だ。
独立検証はまだできない
最初に押さえておくべき重要な留保がある。LongCat-2.0は現時点で**HuggingFace上で公開されておらず**、外部による独立したベンチマーク検証が行えない状態だ。また、学習に使用したチップメーカーの名称も非公開のままだ。
美団の主張が自己申告にとどまっている点は、エンジニアとして割り引いて読む必要がある。とはいえ、5万基超のASICクラスタを実際に稼働させること自体が相当なインフラ投資であり、その事実自体は中国の国産AIハードウェア産業の現在地を示すものとして読める。
Nvidiaなしで1.6兆パラメータ
美団が開発するLLM「LongCat-2.0」は、5万基超の中国製AI ASICで構成されたクラスタ上で学習された。学習トークン数は35兆トークン以上。モデル規模は1.6兆パラメータに達する。
美団のLongCatチームは2023年に発足したばかりで、最初のモデルをリリースしたのは2024年末のことだ。わずか2年足らずで、この規模のモデルを国産ハードウェアのみで仕上げた計算になる。
美団自身は「国内計算クラスタ上で大規模モデルを学習できる能力を持つことを実証した」と声明で述べている。
地政学的背景:輸出規制と国産ASICへの転換
この発表が持つ意味は、モデル性能の話だけにとどまらない。米国は2022年から対中AI半導体輸出規制を段階的に強化してきた。Nvidiaの高性能GPU(A100・H100等)は事実上、中国への輸出が禁止されている状態だ。
その状況下で、美団は国産ASICを5万基以上並べることでこの制約を迂回した形となる。チップメーカーの名称は明かされていないが、華為(ファーウェイ)の昇腾(Ascend)シリーズや、カムブリコン(Cambricon)といった国産AIチップメーカーが国内では主要プレーヤーとして知られている。
今回の発表は、輸出規制が大規模モデル開発の完全な抑止手段とはなっていない可能性を示す事例として注目されている。ただし、あくまで自己申告段階の発表であり、この一例をもって規制の実効性を断定することはできない点は強調しておきたい。
ベンチマーク性能:勝つ分野と負ける分野
性能面では、特定のタスクでは西側の主要モデルを上回る結果が出ている。なお、比較対象として登場するGPT-5.5・Gemini 3.1 Pro・Claude Opus 4.7/4.8はいずれも2025〜2026年にかけてリリースされた最新フロンティアモデルである。
- SWE-bench Pro(ソフトウェアエンジニアリングタスク):59.5点 → Gemini 3.1 ProおよびGPT-5.5を上回るが、Claude Opus 4.7・4.8には届かず
- SWE-bench Multilingual(多言語対応コード修正):77.3点 → 同様にGemini・GPT-5.5超え
一方で、他のベンチマークでは主要モデルに対して大きく劣後している。
- IFEval(指示追従):90.0点
- IMO-AnswerBench(数学オリンピック問題):81.8点
- GPQA-diamond(大学院レベルの科学問題):88.9点
これらの数値がどの程度「大差」かについては、比較対象モデルの具体的なスコアが元記事に掲載されているため、詳細は元記事のベンチマーク表を直接参照していただきたい。
詳細はMeituan's LongCat-2.0 shows China can train massive AI models without Nvidiaを参照していただきたい。
