7月1日、Anthropicが「Introducing Claude Sonnet 5」と題した記事を公開した。エージェント性能を大幅に強化した新モデル「Claude Sonnet 5」のリリースと、その価格・性能の詳細が紹介されている。AIエージェント(自律的に複数ステップのタスクを実行するAIシステム)の実用化が加速する中、「高性能モデルを使わなければ完遂できない」というコスト上のボトルネックを打破する位置づけのモデルだ。
「Opus級の性能をSonnet価格で」が今回の核心
Claude Sonnet 5の最大のポイントは、Anthropicの上位モデルであるOpus 4.8に近い性能をSonnetクラスの価格で提供する点だ。
Anthropicのモデルラインナップは、軽量・高速な「Haiku」、バランス型の「Sonnet」、最高性能の「Opus」という3段構成を基本としている(※編集部の考察:今回登場する「Mythos」「Fable」はSonnet・Opusとは別系統の内部評価用・研究用モデルとみられるが、Anthropicは詳細を公開していない)。従来、エージェント用途(ブラウザ操作、ターミナル実行、複数ステップの自律処理など)で高い性能を出すにはOpusクラスのモデルが必要だった。今回のSonnet 5はそのギャップを縮め、推論・ツール使用・コーディング・知識作業といったエージェント性能の主要指標で、前世代のSonnet 4.6を大幅に上回った。

価格は入力トークン100万件あたり$2、出力トークン100万件あたり$10(導入価格)。その後は入力$3・出力$15に移行する。Opus 4.8と比較してコストを抑えながら、用途によってはほぼ同等の結果を出せるという位置づけだ。
実際にどう動くのか:パートナーの声
Anthropicは早期アクセスパートナーからのフィードバックを複数公開している。これが具体的で興味深い。
Claude Sonnet 5にSalesforceのアカウントティア更新と、エンタープライズ連絡先へのローンチ告知送信という2段階のタスクを渡したところ、最後まで完走した。以前は途中で止まっていた。日常的な自動化には迷わず選べる。
バグの調査を依頼したところ、指示していないのに再現テストを書き、修正を実装し、変更なしでバグが再現することを確認するためにスタッシュした。すべて1パスで。
数十件の実際のプルリクエストに対してSonnet 5を走らせたところ、それぞれをテスト・検証済みの結果まで単独で仕上げた。エンジニアは判断と最終承認に集中できるようになった。
「途中で止まらない」「自分で出力を確認する」「複数ステップを完走する」という点が繰り返し言及されている。前世代のSonnetモデルとの差として、タスクの完遂率が最も強調されているポイントだ。AIエージェントが普及しつつある現在、「賢いが途中で詰まる」という信頼性の問題は実運用上の大きな障壁であり、Sonnet 5はその克服を主眼に設計されたモデルといえる。
エージェント性能の測定:BrowseCompとOSWorld-Verified
性能評価には2つのベンチマークが使われている。
- **BrowseComp**:ブラウザを使った情報収集タスクの評価。OpenAIが提案した指標で、複数ページにわたる検索・情報統合能力を測る
- **OSWorld-Verified**:コンピュータ操作(GUI操作を含む)の評価。実際のデスクトップ環境でのタスク遂行能力を測る指標
いずれもSonnet 5(オレンジ)はSonnet 4.6(グレー)を上回り、Opus 4.8(イエロー)には及ばない。ただしeffort(処理量・思考ステップ数)レベルを調整することで、コストと精度のバランスを取れる設計になっている。
安全性評価:サイバー攻撃タスクは意図的に制限
安全性の観点では、Sonnet 5はSonnet 4.6より全体的に改善されている。
- 悪意あるリクエストの拒否率が向上
- プロンプトインジェクション攻撃への耐性が強化
- ハルシネーションと迎合的な回答(sycophancy)の発生率が低下
一方、サイバーセキュリティタスクの能力は意図的に制限されている。Firefoxのブラウザ脆弱性に対するエクスプロイト開発評価(Mozillaとの共同開発によるもの。対象の脆弱性はFirefox 148で修正済み)では、Sonnet 5は完全なエクスプロイト開発に成功したケースがゼロだった。Sonnet 4.6より部分的成功率はわずかに高いものの、Opus 4.8や上位の内部評価モデル(Mythos 5・Fable 5)を大幅に下回る結果となっている。

この結果を受け、Sonnet 5にはデフォルトでサイバー安全ガードが有効化されている。これはOpus 4.7・4.8と同等のリアルタイム検知・ブロック機能だ。ただし、全体的なミスアライン行動率はOpus 4.8や内部評価モデルのMythos Previewよりは高く、Sonnetクラスの制約として認識しておく必要がある。
提供形態とAPI利用
本日より全プランで利用可能。FreeとProプランのデフォルトモデルに設定されており、Max・Team・Enterpriseでも利用できる。Claude CodeおよびAPIからも利用可能で、APIでの正確なモデル識別子はモデル一覧ページで確認できる。
また、AnthropicのコラボレーションUI「Cowork」(複数ユーザーやエージェントが同一セッションで協働する機能)を含む、Chat・Claude Code・Claude Platformの全体でrate limitsが引き上げられており、高effortレベルでのトークン消費増加に対応している。
安全性評価の詳細はClaude Sonnet 5 System Cardにまとめられている。
詳細はIntroducing Claude Sonnet 5を参照していただきたい。