6月30日、Simon Willisonが「Ornith-1.0: Self-Scaffolding LLMs for Agentic Coding」と題した記事を公開した。DeepReinforceが初リリースしたオープンウェイトのエージェントコーディング向けLLM「Ornith-1.0」の紹介記事で、わずか20GBの量子化モデルがローカル環境で同規模オープンソースモデル最高水準のコーディング性能を達成するという主張が注目に値する。LLMがスキャフォールディング(足場)を自分自身で組み立てながらコードを探索・実行する「Self-Scaffolding」アーキテクチャは、これまでクラウドAPIに頼りがちだったエージェントコーディングのローカル実行という選択肢を現実的なものにする可能性を持っている。
自己スキャフォールディングとは何か
「Self-Scaffolding」とは、モデル自身がタスクを分解し、ツール呼び出しを連鎖させながら目標を達成する能力を指す。いわゆるエージェント型の動作のことで、人間が逐一指示しなくても、複数ステップの作業を自律的にこなすことが求められる。Ornith-1.0はこの能力に特化して訓練された点が特徴だ。
従来のコーディング特化モデルの多くは「コードを補完・生成する」能力に最適化されているが、Ornith-1.0が目指すのは「コードベースを自律的に探索・調査し、複数ツールを連鎖させて問題を解決する」動作だ。この違いは、単なる補完ツールとしてではなく、実際の開発ワークフローに組み込めるエージェントとして機能するかどうかに直結する。
モデルの構成と性能
Ornith-1.0はDeepReinforceによる初のモデルリリースで、MITライセンスのオープンウェイトモデルとして公開されている。バリアントは以下の4種類:
- 9B Dense
- 31B Dense
- 35B MoE(Mixture of Experts)
- 397B MoE
ベースモデルには**Gemma 4(Apache 2.0)とQwen 3.5**(Apache 2.0)を使用している。Simon Willisonは記事中で、両モデルのライセンスがMIT配布と互換性があることを確認している。特にGemma 4については、旧来のGemmaモデルを縛っていた独自の「Gemma利用規約」が廃止されてApache 2.0に統一されており、ライセンス上の懸念がない点を明示している。
コーディングベンチマークでは、同規模のオープンソースモデルの中でSOTA(最高水準)を達成しているとされる。
実際に動かしてみた結果
Simon Willisonは**LM Studioを使い、35B MoEの量子化版(ornith-1.0-35b-Q4_K_M.gguf、20GB)をローカルで動作させ、エージェントフレームワークPi**に接続して検証を行った。
Piは、LLMをローカルまたはリモートのエンドポイントに接続し、ファイルシステム操作やコマンド実行といったツールを与えてエージェントとして動作させるためのフレームワークだ。Simon Willisonの記事執筆時点ではまだ広く知られた存在ではなく、詳細な公式ドキュメントへの言及も限られているが、今回の検証ではOrnith-1.0のツール連鎖能力を引き出すプラットフォームとして機能している。
テストの一つは、Datasetteのソースコードに対して「アクタークッキーをデコードするコードを探せ」「挿入ダイアログを開くボタンのクリックハンドラを探せ」と指示するもの。実際のターミナルセッションが公開されており、複数のツール呼び出しを連鎖させながら問題なく処理できたと報告している。
また、画像生成テストとして「ペリカンを描かせた」結果が以下だ。103トークン/秒の速度で生成された。

「少し崩れているが、ペリカンであることは明らかだ」とSimon Willisonは評している。
DeepReinforceについて
DeepReinforce自体の情報は現時点では少ない。Simon Willisonが見つけた最も古い論文は**CUDA-L1: Improving CUDA Optimization via Contrastive Reinforcement Learning**であり、CUDAカーネルの最適化を強化学習で改善する研究だ。エージェントコーディング特化モデルを出してきた背景に、強化学習の研究蓄積があると見られる。
なお、このarXiv IDは「2507.xxxxx」形式であり、2025年7月投稿を示している。元記事の公開日(2026年6月30日)との間にタイムラグがある点について元記事では特段の言及はないが、読者が論文を参照する際は該当ページで投稿日時を直接確認されたい。
詳細はOrnith-1.0: Self-Scaffolding LLMs for Agentic Codingを参照していただきたい。