6月29日、Microsoft Devblogsが「WSL container is now available for public preview」と題した記事を公開した。Windows Subsystem for Linux(WSL)にLinuxコンテナ機能を直接統合した「WSLコンテナ」が、WSL 2.9.3プレリリースとともにパブリックプレビューとして公開された。
2022年のDocker Desktop有料化以降、Windows上でのコンテナ開発環境を巡る選択肢は広がった一方、「とにかく何かサードパーティツールを入れなければならない」という状況は変わっていなかった。WSL自体はLinuxバイナリを実行できても、コンテナランタイムは含まれていなかったためだ。WSLコンテナはその制約を取り除く。WSL本体にコンテナランタイムとCLIを内蔵し、追加インストールなしにLinuxコンテナのビルド・実行・管理を完結させる構成だ。
wslc.exe:Dockerライクな操作感でコンテナを動かす
WSL 2.9.3プレリリースに更新すると、パス上に wslc.exe(エイリアス: container.exe)が追加される。更新は以下のコマンドで行える。
wsl --update --pre-release
GitHubのリリースページから直接インストールも可能だ。
wslc は既存のDockerコマンドに近いインターフェースを持ち、慣れ親しんだ操作感でそのまま使えるよう設計されている。たとえば、コンテナ内でLinuxデスクトップ環境(Ubuntu KDE)を立ち上げ、ブラウザ経由でアクセスする例:
wslc run -d --name=webtop -e PUID=1000 -e PGID=1000 -e TZ=Etc/UTC \
-p 3000:3000 -p 3001:3001 lscr.io/linuxserver/webtop:ubuntu-kde
GPU(CUDA)アクセスも動作する:
wslc run --rm --gpus all pytorch/pytorch:2.5.1-cuda12.4-cudnn9-runtime \
python -c "import torch; print(torch.cuda.is_available()); print(torch.cuda.get_device_name(0))"
ローカルでLLMや機械学習モデルを動かす開発者にとって、コンテナ内から直接GPUを叩けるのは実用的な強みだ。
WindowsアプリからコンテナをAPIで制御する
個人開発者向けのCLIにとどまらず、WSL Container APIも提供される。NuGetパッケージとして配布されており、nuget.orgおよびWSLリリースページから入手できる。C、C++、C#に対応する。
MSBuildおよびCMakeとの統合も備えており、プロジェクトファイルに数行追加するだけで、コンテナのビルドとデプロイをアプリケーションのビルドプロセスに組み込める。公式サンプルコードはGitHubで公開されており、APIリファレンスも参照できる。
エンタープライズ向け:セキュリティ監査とポリシー管理
組織での利用を想定した管理・セキュリティ統制機能も用意されている。
- Microsoft Defender for Endpoint(MDE)との統合:WSL既存のMDEプラグインがコンテナイベントにも対応。現在はプライベートプレビューとしてサインアップから参加できる。
- Intuneによるポリシー管理:WSLディストリビューションとコンテナの利用可否、および許可するコンテナレジストリのアローリストを設定できる。現時点ではGPO/ADMXポリシーで利用可能で、数週間以内にIntuneダッシュボードにも対応予定。
- VS Code Dev Containers:拡張バージョン
0.462.0-pre-releaseでWSLcサポートが追加済み。Dev Container設定の「Docker Path」をwslcに変更するだけで使える。まもなくGA(一般提供)に移行予定。
基盤技術も同時に刷新
WSLコンテナの開発に合わせ、WSL全体の基盤にも複数の改善が入っている。
- ファイルシステム:デフォルトを
virtiofsに変更し、Windowsファイルアクセスが2倍高速化 - ネットワーク:新しいデフォルトモード
consomme(OpenVMMプロジェクト)を採用。LinuxのネットワークトラフィックをWindowsを経由してリレーすることで、VPNや企業プロキシ環境でもWindowsホストと同等のネットワーク設定・ポリシーが自動的に適用される。これまでWSL内でVPN接続が切れる・通信できないといった問題を抱えていた企業ユーザーには特に恩恵が大きい。 - メモリ管理:Linux VM内の未使用メモリをWindowsホスト側に段階的かつ継続的に返却する仕組みに改善
これらの変更は現時点ではWSLコンテナにのみ適用されており、WSL全体へのデフォルト適用は今後予定している。なお、Docker Desktop、Podman Desktop、Rancher Desktopといった既存のコンテナツールも、この基盤改善の恩恵を受けると明記されている。
GA(一般提供)は2026年秋を予定
現在はWSLプレリリース版でのパブリックプレビューという位置づけで、2026年秋にGAを予定している。フィードバックはGitHubのIssueで受け付けている。
詳細はWSL container is now available for public previewを参照していただきたい。