6月29日、The Next Webが「Nvidia-backed Firmus will build a 360MW AI data centre in Indonesia and expects $30 billion in offtake deals」と題した記事を公開した。Nvidiaが出資するオーストラリアのAIインフラ企業Firmusが、インドネシア・バタム島に360MWのAIデータセンターを建設し、GPUを初期費用ゼロで導入する収益分配モデルのもと6年間で最大300億ドルの契約を見込んでいるという内容だ。170,000枚という圧倒的なチップ規模と、ビットコインマイニングから出発した企業がわずか数年で55億ドル評価に達したというストーリーは、東南アジアのAIインフラ競争が新たなフェーズに入ったことを示している。
バタム島に360MW、170,000チップのAI拠点
Firmus Technologies(企業評価額:55億ドル)は、Nvidiaとの8年間のパートナーシップのもと、インドネシアのバタム島に「Nvidia DSX AIファクトリー」キャンパスを建設する。シンガポール沖に位置するバタム島は、シンガポールの金融・テクノロジーエコシステムに近接しており、地理的な優位性がある。シンガポール拠点のデータセンター開発企業DayOneとの共同開発で、2027年第1四半期の稼働開始を予定している。
施設の規模は360MW。Firmusは2027〜2028年にかけて、収益分配およびクレジットサポート契約を通じて最大170,000枚のNvidia AIアクセラレーターチップにアクセスする。パートナーシップの最初の6年間で、250億〜300億ドルのコミット済みオフテイク契約(引き取り契約)を見込んでいるという。
Nvidia DSXプログラムとは
Nvidia DSX(Data Center as a Service Exchange)プログラムは、データセンター事業者がGPUインフラを初期費用なしで導入できる仕組みだ(「Data Center as a Service Exchange」という呼称は本記事での表現であり、元記事での正式表記に準じている)。購入ではなく収益分配ベースでGPUを展開するモデルで、Nvidiaにとってはハードウェア販売以外の収益経路を確保する意味合いを持つ。従来、大規模なGPUクラスタの導入には巨額の先行投資が必要だったが、このモデルはその障壁を大幅に下げる。Firmusとのインドネシア案件はこのプログラムの地理的拡大を示す事例となる。
マルチテナント型施設と「AIバブル懸念は無関係」
今回の施設はマルチテナント型で、AIネイティブな顧客を対象とする。Firmusがオーストラリアで手がけてきたハイパースケーラー(大手クラウド事業者)向けプロジェクトとは異なる位置づけだ。特定の大口テナントへの依存度を下げながら、AIワークロード特化型の顧客層を幅広く取り込む戦略といえる。
AI関連株の市場変動について、Co-CEOのTim Rosenfield氏はBloombergに対し次のように述べた。
"largely irrelevant(ほぼ無関係だ)。私たちは顧客から実際に見えている需要と、締結している契約に基づいてビジネスを構築している。"
IPO計画についてはコメントを避けたが、今年中の上場が広く予想されている。
ビットコインマイニングから55億ドル企業へ——成長の軌跡
Firmusの出発点は、2019年にタスマニアで始めたビットコインマイニング事業だ。エネルギー集約型のマイニングで培ったインフラ運用ノウハウを基盤に、AIデータセンター事業へ軸足を移し、急成長を遂げた。今年4月にはCoatue Managementが主導し、Nvidiaも参加したラウンドで5億500万ドルを調達、評価額は55億ドルに達した。現在は、CDC Data Centersとの提携でオーストラリア国内に2028年までに最大1.6GWのデータセンターを開発するパイプラインも持ち、インドネシアのプロジェクトはその国際展開の先陣を切る位置づけとなる。
アジア太平洋地域のAIインフラ投資競争
アジア太平洋地域のデータセンター投資は急加速しており、Blackstoneが出資するAirTrunkがインド単独で300億ドルのコミットメントを表明するなど、競争の規模感が膨らんでいる。地域全体でAIコンピューティング需要が逼迫するなか、バタム島のキャンパスは東南アジアの地域AIコンピューティングハブとしての役割を担うことが期待されている。
インドネシア政府にとっても、バタム島はシンガポールの産業集積と隣接しながら土地・電力コストで優位に立てる場所であり、国家レベルでのAIインフラ誘致戦略と合致する。Firmusが掲げる「初期費用ゼロ」モデルは、こうした地域において資本コストの高さがボトルネックになりがちなAIインフラ整備を加速させる可能性を持つ。
詳細はNvidia-backed Firmus will build a 360MW AI data centre in Indonesia and expects $30 billion in offtake dealsを参照していただきたい。