6月26日、Los Angeles Timesが「AI stock slump raises the question if investors are just taking profits or getting very nervous」と題した記事を公開した。AI関連株の急落が単なる利益確定なのか、それとも投資家がAI投資の持続可能性に対して本格的に神経質になり始めたサインなのかについて詳しく論じている。
4社だけで最大7200億ドルを投じるAI投資競争
AI投資の規模感を示す数字がある。Alphabet(Googleの親会社)、Amazon、Meta、Microsoftの4社だけで、今年最大7200億ドルを主にAIデータセンターへの投資に充てる計画だ。
2023年以降、ChatGPTの爆発的普及をきっかけにAIインフラ投資競争が加速。各社はGPUクラスターや大規模データセンターの建設に巨額をつぎ込んできた。その勢いは2025〜2026年にかけてさらに増し、今や個別企業の手持ちキャッシュでは賄いきれない規模に達している。
Alphabetは今月、株式売却により800億ドルを調達すると発表。今年の投資支出は最大1900億ドルに上る見通しで、これはウォルト・ディズニーの時価総額を上回る。同社は来年の投資を「大幅に増加させる」とも予告している。
Amazonは3月に米欧で540億ドルの社債を発行し、今年のAI投資約2000億ドルの資金に充てる。イーロン・マスクのSpaceXも、AIデータセンターを宇宙空間に構築するという計画に向けた社債発行の一部をAI投資に充てると発表している。
かつては手持ちキャッシュで賄えていたAI投資が、いまや市場からの資金調達なしには回らない規模に膨らんでいる。
株価急落の震源地:チップ株の過熱と反動
今週の売りが特に激しかったのは半導体・ストレージ関連だ。
Sandisk(Western Digitalから2025年にスピンオフしたフラッシュストレージ専業メーカー)の株価は年初来で700%超の上昇を記録していたが、今週火曜日に13.6%下落。Marvell Technologiesも同日9.4%下落した。Nvidiaなどもこの売りに引きずられた形だ。
割高感の議論では、PER(株価収益率)が一つの目安になる。Marvellは5期連続赤字ののち今年ようやく黒字転換(純利益27億ドル)したが、PERは年初の約30倍から約100倍まで跳ね上がっている。SandiskもPERは現在68倍だが、向こう12ヶ月のEPS予想(188.05ドル)を基にした予想PERは約11倍と、将来業績への大きな期待が織り込まれている構図だ。なお、S&P 500全体のPERは現在約25倍である。
ETF(上場投資信託)にも波及し、Invesco QQQ Trust(Nasdaq上位100銘柄を追う代表的なETF)は3.3%安、iShares Semiconductor ETFは7.9%安となった。韓国のKOSPI(韓国取引所に上場する全普通株を対象とした総合株価指数)では売りが集中し売買停止が発動。これが米国市場への波及的な売りの一因にもなったとWedbushのアナリスト、Dan Ivesは指摘している。
「利益確定」か、投資家心理の変化か
今回の下落の解釈は二分されている。
一方には「単なる利益確定」説がある。S&P 500のテックセクターはここ3ヶ月で**約27%、年初来でも約17%**上昇していた。Edward JonesのBrock Weimer氏は「3月安値からの力強い反発後の利益確定を反映したものと見ており、明確な下落要因は見当たらない」と述べている。
もう一方には、構造的な過剰投資リスクを警戒する声がある。MorningstarウェルスのCIOであるPhilip Straehl氏は先週のレポートで「過去を振り返ると、資本投資が過熱した局面が投資家にとって良い結果をもたらしたことは少ない」と指摘。2000年前後のドットコムバブルでも、インフラ整備への過剰投資が価格競争と収益圧迫を招いた末に崩壊した経緯がある。Straehl氏はAIコンピューティング能力の急速な拡大が同様に価格下落圧力を生み、企業収益を圧迫し、最終的には投資縮小につながると予測する。半導体企業はこのダイナミクスに「特に脆弱」だとも述べている。
一方、WedbushのIves氏はアジアにおけるAI企業向け需要には「揺らぎはなく、来年にかけてAI勝ち組テック株に強気を維持する」と反論する立場だ。
元記事は「investors are getting very nervous(投資家が非常に神経質になっている)かどうか」を問うトーンに留まっており、バブル崩壊を断定するものではない点には留意が必要だ。強気・弱気双方の見方が拮抗している現状を伝えることに主眼が置かれている。
今の局面が一時的な調整なのか、あるいは過剰投資への本格的な疑念の始まりなのかは、各社が今年末にかけて示す収益がどこまで「7200億ドル規模の賭け」を正当化できるかにかかっている。
詳細はAI stock slump raises the question if investors are just taking profits or getting very nervousを参照していただきたい。