6月9日、Emanuel Maibergが「"Sloppenheimer:" Amazon Employees Mock the Company's AI on Slack」と題した記事を公開した。この記事では、Amazon社内でAIツールをSloppenheimer(役立たずのオッペンハイマー)と揶揄し、従業員が不満を表すミームが拡散している状況について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「Sloppenheimer」- Amazon社内でAIを嘲笑するミーム
創業者のジェフ・ベゾス氏はAIが前例のない生産性向上をもたらし、食料や住宅費の低下、さらには世帯収入の変化まで起こすと予測している。しかし、Amazon社内では従業員がAIツールを嘲笑し、その出力を「slop(役立たずのもの)」と呼び、会社のAI推進策を皮肉るミームが拡散している。
これらのミームは、AI企業が公的に語る潜在的な力と利益と、実際にそのツールを開発・使用する従業員たちの現実との間に存在する対比を示している。
コーディングAI「Kiro」への辛辣な批判
社内Slackチャンネル「**#actual-aws-memes**」で共有されているミームの多くは、AmazonのAI駆動コーディングツール「Kiro」を標的にしている。
あるミームでは、Kiroのロゴを掲げたジェット機が離陸する画像に「すべて揃った」というテキストが添えられ、その下に滑走路に取り残された人々の写真と「ナレーター:彼は必要なものを何も持っていなかった」という皮肉なコメントが付けられている。
別のミームでは、水面上は小さく見えるが水中に巨大な質量を隠している氷山の画像に「Kiro:『全体像を把握した』」というテキストが添えられ、AIが問題の一部しか理解していないことを風刺している。
AIツール乱立を皮肉る「Sloppenheimer」
最も印象的なミームは、映画『オッペンハイマー』のキリアン・マーフィーの顔を中心に、Amazon Kiro、Anthropic Claude Code、Meshclawといった複数のAIコーディングツールのロゴで囲んだ画像だ。そこには単純に「Sloppenheimer」とだけ記されている。これは、Amazonが従業員にこれら全てのツールの使用を推奨してきたことを皮肉っている。
失敗したAI使用率リーダーボード
特に話題になっているのは、AmazonがKiroの使用量を追跡する内部リーダーボードを最近廃止したことだ。会社側は「AI ツールの使用を動機付けて教えるという目標を達成した」と発表したが、実際には従業員が不要なタスクをKiroに依頼してスコアを稼ぐチート行為が横行し、無駄で高額なAI利用を招いたため廃止された。
「リーダーボードを廃止したとき、Slackチャンネルでは『使用量を上げるよう奨励したらどうなると思ってたんだ』という議論が多く出た」
ある従業員は「AI使用率」の下降を示すミームを共有し、「インセンティブがなくなった後のAI使用量」とコメントした。
グッドハートの法則の実例
従業員たちは、このリーダーボードの失敗をグッドハートの法則の実例として捉えている。これは「測定指標が目標になると、それは良い測定指標でなくなる」という格言だ。
ある従業員は「cron jobでKiroを1時間ごとに呼び出す」方法や「シェルスクリプトでチートするのは簡単だ」といった議論がチャンネルで行われていたと証言している。
Amazon側の反論
Amazonは404 Mediaに対し、SlackでのAI批判は「少数の個人」によるもので、会社や大多数の従業員の視点を代表していないと反論している。
同社は「80%以上のソフトウェア開発者がKiroを使用しており、効率性と成果において驚くべき改善を見せている」と主張している。特に仕様駆動開発とプロパティベーステストにおいて、他のツールにはない差別化された機能を提供していると述べている。
エンジニアの現実的な反応
匿名のAmazon従業員は「リーダーシップがAI導入を強制し始めた2024年末から2025年初頭にかけて、アンチAIミームが始まった」と証言している。
別の従業員は「actual-aws-memesはストレス発散の場所なので否定的に偏りがちだが、『KiroではなくClaude Codeを使えるようになった』『Kiroの限界について不満を持つ真面目なユーザー』『企業ポリシーへの純粋な不満』といった様々なジャンルがある」と説明している。
この状況は、AI企業の華々しい発表と現場エンジニアの実体験との間に存在する温度差を浮き彫りにしている。Amazonのようなテック大手でさえ、AI導入において従業員の理解と支持を得ることの難しさを示している。
詳細は"Sloppenheimer:" Amazon Employees Mock the Company's AI on Slackを参照していただきたい。