6月5日、Herb Sutterが「C++: The Documentary released today」と題した記事を公開した。
C++は「死んだ言語」ではなかった — 驚異の復活劇を描くドキュメンタリー
2025年第3四半期、C++は世界のトップ4プログラミング言語の中で最も成長率の高い言語となった。 過去3.5年間でユーザー数は90%増加している。多くの開発者が「オワコン」と考えていたC++の驚異的な復活劇を描く本格ドキュメンタリー「C++: The Documentary」がYouTubeで公開され、大きな話題となっている。
1時間8分のこのドキュメンタリーには、Bjarne Stroustrup(C++創始者)をはじめ、Alexander Stepanov(STL設計者)、Anders Hejlsberg(C#、TypeScript作者)、Chris Lattner(Swift、LLVM作者)ら錚々たるメンバーが出演。40年間のC++史上初めて、関係者が一堂に会してその軌跡を語っている。
なぜ今C++なのか — AI・ゲーム・金融で急成長する理由
C++復活の背景には、現代の技術トレンドがある。AI・機械学習推論では、PythonやJavaScriptでモデルを構築しても、本番環境でのパフォーマンスを求めるとC++が必要になる。NVIDIA CUDA、Intel oneAPI、OpenMPなど、並列計算ライブラリの多くがC++をメイン言語としているためだ。
ゲーム業界ではUnreal Engine 5の普及により、C++開発者の需要が急騰している。高頻度取引(HFT)でも、マイクロ秒単位の処理速度が求められる現場でC++は不可欠だ。
さらに、C++23標準の策定(2023年)、C++26の開発進行により、言語自体も継続的に進化している。ISO C++委員会は3年サイクルでの標準更新を継続しており、「古い言語」という印象を払拭している。
2000年代「C++の冬」からModern C++による復活まで
ドキュメンタリーが最も詳しく描いているのは、C++が直面した「言語戦争」の時代だ。2000年代前半、MicrosoftのC#の登場により、C++は「複雑すぎる言語」として厳しい批判にさらされた。この時期は「C++の冬」と呼ばれ、多くの開発者が他言語に流出した。
転機となったのは2011年のC++11(Modern C++)のリリースだった。autoキーワード、ラムダ式、スマートポインタ(std::shared_ptr、std::unique_ptr)など、開発者の生産性を大幅に向上させる機能が追加され、C++は「書きやすい言語」として生まれ変わった。
その後もC++14(2014年)、C++17(2017年)、C++20(2020年)と継続的に機能追加が行われ、特にC++20ではコルーチン、コンセプト、モジュールといった大型機能が導入された。
豪華キャストが語るC++の「真実」
ドキュメンタリーには、プログラミング界のレジェンドが多数出演している:
- Bjarne Stroustrup: C++設計者(Bell Labs、現Texas A&M University)
- Alexander Stepanov: STL設計者
- Anders Hejlsberg: C#、TypeScript、Turbo Pascal作者(Microsoft)
- Chris Lattner: LLVM、Swift、Mojo作者
- Brian Kernighan: 「The C Programming Language」共著者(Princeton)
- John Romero: Doom、Quake共同開発者
さらに、CERN(大型ハドロン衝突型加速器での活用)、Microsoft、Nvidia(CUDA)、Hudson River Trading(高頻度取引)など、実際にC++を活用している現場の専門家も登場する。
Bell Labsでの誕生から現在まで — 詳細な章構成
ドキュメンタリーは時系列でC++の歴史を追っている:
- 1980年代: AT&T Bell Labsでの「C with Classes」誕生
- 1985年: C++への進化と命名(「++」はインクリメント演算子から)
- 1990年代: 標準化の必要性とSTLの統合
- 1998年: 初の国際標準ISO C++98策定
- 2000年代前半: 「C++の冬」とC#との言語戦争
- 2011年: Modern C++(C++11)による復活
- 2020年代: C++20/23/26による継続進化と成長率トップ達成
特に興味深いのは、ISO/IEC JTC1/SC22/WG21(C++標準化委員会)の内部事情や、言語設計における政治的な駆け引きについても率直に語られていることだ。Herb Sutterは「C++を複雑にしすぎているのではないか」という批判についても言及している。
プレミア公開でStroustrup氏らがライブチャット参加
YouTubeでのプレミア公開では、Bjarne Stroustrupをはじめとする出演者たちがライブチャットに参加し、視聴者からの質問に直接回答する場面もあった。現在、ドキュメンタリー本編は無料で視聴できる。
40年間の歴史を持つプログラミング言語のドキュメンタリーとしては異例の本格的な作りとなっており、C++開発者のみならず、プログラミング史に興味がある人にとっても必見の内容だ。C++の現在の勢いを理解するには、ISO C++公式サイトやC++リファレンスも合わせて確認することをお勧めする。
詳細はC++: The Documentary released todayを参照していただきたい。