5月5日、Jason Koeblerが「The AI Hard Drive Shortage Is Making It More Expensive and Harder to Archive the Internet」と題した記事を公開した。
記者が昨年秋に159ドルで購入した2TB SSDが、現在575ドルで販売されている。これは単なる値上がりではない。AIデータセンターの急拡大により、ハードドライブとストレージの世界的な品薄状態が発生し、Internet ArchiveやWikipediaといった人類の知識保存を担う重要な組織が深刻な影響を受けているのだ。
210ペタバイトを管理するInternet Archiveの苦境
インターネット史上最も重要なアーカイブプロジェクトであるInternet ArchiveとWayback Machineの創設者Brewster Kahle氏は、急騰するストレージコストが「時間と費用の両面で非常に現実的な問題」だと404 Mediaに語った。
「我々が好む28-30TBドライブが入手できないか、非常に高価格での提供となっている。我々は毎日100テラバイト以上の新しい資料を収集しており、すでに210ペタバイト以上の資料を継続的なアップグレードとメンテナンスが必要なマシンにアーカイブしているため、常に新しいハードドライブを入手する必要がある」
Wikipediaを運営するウィキメディア財団も同様の懸念を表明している。6,500万以上の記事を持つWikipediaにとって、サーバーとストレージ容量へのアクセスは不可欠だが、「2025年末以降、確実に価格上昇を確認している」と同財団の広報担当者は述べた。
AIが大量のストレージを必要とする理由
なぜAI企業がこれほど大量のストレージを必要とするのか。大規模言語モデル(LLM)の訓練には、インターネット上のテキスト、画像、動画などの膨大なデータセットが必要だ。ChatGPTやGeminiといったAIモデルは、数兆個のパラメータを持ち、その訓練データだけでペタバイト規模のストレージを消費する。さらに、これらのモデルの推論処理においても、高速アクセス可能な大容量ストレージが不可欠となっている。
AIデータセンターの建設ラッシュにより、エンタープライズ向けの大容量ハードドライブの需要が急激に増加。ハードドライブの大手メーカーWestern Digitalは、2026年のエンタープライズ向け在庫を事実上完売したと発表している。
価格急騰の実態:転売市場まで形成
PC部品価格追跡サイトPC Part Pickerによると、昨年10月頃からストレージ価格の全面的な上昇が始まっている。追跡対象の多くのドライブで価格が2倍になったか、150%以上の値上がりを記録している。
一部の店舗ではSSDとハードドライブが単純に売り切れ状態で、現在では一部のSSDに転売市場まで形成され、eBayなどで高値転売が行われている。
RAMとSSDをCrucialブランドで製造していたMicronは、コンシューマー市場から完全撤退することを発表した。同社は「データセンターでのAI駆動の成長により、メモリとストレージの需要が急増した。より成長が早いセグメントの大型戦略顧客への供給とサポートを改善するため、Crucialコンシューマー事業から撤退する困難な決定を下した」と説明している。
アーカイブ活動への二重の打撃
AIブームはアーカイブプロジェクトに複数の形で損害を与えている。AI企業が大規模言語モデルの訓練のためにインターネット全体を無差別にスクレイピングしていることへの反発として、ウェブサイト運営者は登録制の壁を設け、robots.txtを変更してボットをブロックし、その他の方法でボットのアクセスを阻止しようとしている。
これらのウェブサイトの多くが、意図的または偶発的にInternet Archiveやその他のアーカイブプロジェクトからのボットをブロックしてしまっている。Electronic Frontier Foundationは「Internet ArchiveをブロックしてもAIは止められないが、ウェブの歴史的記録は消去される」と指摘している。
現場の声:諦めと創意工夫
ノーステキサス大学のMark Phillips教授は、大統領政権交代時に政府ウェブサイトをアーカイブする「End of Term Archive」の運営を支援している。同教授は「サーバーをリフレッシュしようとした際、それらのマシン用のRAMとSSDのコストが劇的に増加しており、予定していた容量を見直すことになった」と語った。
Redditのr/DataHoarderコミュニティでは、ストレージコストが継続的な議論のトピックとなっている。デジタル図書館員や趣味のアーカイビストたちが様々なアーカイブ設定について議論する同コミュニティには、ドライブの購入を停止せざるを得なかった、アーカイブ計画を保留にした、というユーザーの投稿が多数見られる。
「28TBドライブを今買うなんて考えられない。バックアップ保持期間を調整して、手持ちのスペースを延ばし始めた」
「すべてのAI/データセンターがハードドライブを事前購入してしまった」
回復の見通しについて、Reddit上のコメントでは「2029年まで...もしかすると」という悲観的な見方も出ており、業界関係者の間では長期化への懸念が広がっている。
知識保存の未来への課題
この状況は、AIの急速な発展が思わぬ形で人類の知識保存活動に影響を与えている現実を浮き彫りにしている。デジタル時代において極めて重要な役割を果たすアーカイブ活動が、皮肉にもデジタル技術の最先端分野の需要急拡大により危機にさらされている。
Internet Archiveは1996年の設立以来、ウェブページ、書籍、映画、音楽、その他のデジタル資料を保存し、研究者や一般市民に無料でアクセスを提供してきた。同様にWikipediaは、人類の知識を民主化し、誰もがアクセス可能な形で保存する使命を担っている。これらの組織が直面する困難は、単なる技術的な問題を超えて、デジタル時代における知識の保存と継承という根本的な課題を提起している。
詳細はThe AI Hard Drive Shortage Is Making It More Expensive and Harder to Archive the Internetを参照していただきたい。