12月18日、海外スタートアップFinalRoundが「AWS CEO Explains 3 Reasons AI Can’t Replace Junior Devs」と題したブログ記事を公開し、話題を呼んでいる。この記事では、「AIがジュニア開発者(若手エンジニア)を置き換える」という短絡的な発想に対して、AWS CEOのMatt Garman氏が挙げた3つの理由を軸に、企業の人員戦略・育成・AI活用の現実について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。

記事は、「AIで人を置き換えてコストを削る」ことが流行語のように語られる状況に対し、Garman氏が「ジュニアをAIで置き換えるのは最悪のアイデアの一つだ」と評した背景を掘り下げる構成である。氏は、エージェント型AI(agentic AI)が今後職場を変えること自体は見据えつつも、ジュニア削減が合理的とは限らないという立場を示している。
3つの理由(要点)
(1) ジュニアはAIツールに慣れている場合が多い
記事では、Garman氏の実感として「最もジュニアな層こそAIツールを使いこなしていることが多い」という趣旨が語られる。新卒や若手は在学中・インターン中からAI支援ツールに触れていることがあり、機能を試し、ショートカットを見つけ、AIエージェントの“使いどころ”を探索する速度が速い、という整理である。加えて、2025 Stack Overflow Developer Survey(AIセクション)の数字として、キャリア初期層のほうが日常的にAIツールを使っている比率が高い旨も引かれている。(2) ジュニアは「コスト削減の第一候補」になりにくい
2点目はコストの話である。記事は、ジュニアは一般に給与・ベネフィットが相対的に低く、仮に削ったとしても「劇的な節約」になりにくい、というロジックを提示する。利益率改善やコスト最適化を語るなら、ジュニアだけを機械的に切るのではなく、企業全体の支出構造を見て判断すべきだ、という主張である。記事中では、レイオフを節約策として実施した結果、かえって費用が増えた例が一定割合で存在する、という外部記事への参照も付されている。(3) ジュニアを減らすと「育成のパイプライン」が壊れる
3点目は長期の組織設計である。記事は、ジュニア採用と育成を止めれば、将来の中堅・シニアが社内から育たず、結果として組織が先細りする、と述べる。スポーツチームの比喩(ベテランだけ残し新人を入れなければ、世代交代の時に破綻する)を用いながら、メンタリングと内部育成こそが「良いアイデアが出る源泉」になりうるとも語られる。あわせて、需要面の根拠として、デロイトのレポート(技術人材需要の伸び)への参照も挙げられている。
まとめ:仕事は変わるが、「人を育てる設計」は残る
記事の結論は、「AIは生産性を上げ、開発者の仕事を変える。しかし、短期の置き換えでジュニア層を削ると、むしろ中長期で企業が詰む」という方向性である。AIによって作れるものが増えるほど、ソフトウェア開発の需要自体が増え、開発者には“書く”以外の責務(技術の変化への適応、より上流の判断、より多くのアウトプット)が求められる、という見立ても示される。最終盤では、Geoffrey Hinton氏の「CS学位の重要性」への言及を絡めつつ、基礎力を備えた新しい人材が将来の高付加価値領域を担う、という含意へつないでいる。
詳細はAWS CEO Explains 3 Reasons AI Can’t Replace Junior Devsを参照していただきたい。