12月10日、Anthoropicが「Donating the Model Context Protocol and establishing the Agentic AI Foundation」と題した記事を公開した。この記事では、オープン標準「Model Context Protocol(MCP)」をLinux Foundation傘下の新組織へ寄贈し、エージェントAIの基盤を強化する取り組みについて詳しく紹介されている。

以下に、その内容を紹介する。
Model Context Protocol(MCP)の現在地
MCPは、AIアプリケーションが外部システムと接続するためのユニバーサルなオープン標準として1年前に公開された。公開以降、MCPは急速に普及し、開発現場から大企業まで幅広く利用されるようになった。
エコシステム全体では、1万以上のMCPサーバーが稼働し、ChatGPT、Cursor、Gemini、Microsoft Copilot、Visual Studio Codeといった主要AIプラットフォームもMCPを採用している。
Claude向けには75以上のコネクタが揃い、APIでは大規模なエージェントワークフローを前提としたTool SearchおよびProgrammatic Tool Callingが追加された。数千単位のツールを扱う処理の効率化が進み、商用規模でのMCP活用が容易になっている。
また、MCPサーバーを検索できる公式レジストリの整備、非同期処理・ステートレス設計・サーバーID・公式拡張といった仕様強化、主要言語向けのSDK(Python/TypeScriptで月間9,700万ダウンロード超)など、エコシステムの成長を支える基盤が揃いつつある。
Linux Foundationと新設のAgentic AI Foundation
Linux Foundationは、Linuxカーネル、Kubernetes、Node.js、PyTorchなどの世界的OSSをホストする非営利組織である。中立的な立場でガバナンス、コミュニティ運営、インフラを提供し、企業と開発者が共同で取り組める場を提供してきた。
今回設立されるAgentic AI Foundation(AAIF)は、このLinux Foundationのもとに置かれる新しい基金である。この基金は directed fund(ディレクテッド・ファンド) と呼ばれる形式で、
「特定の目的に使い道が限定された基金をLinux Foundationが管理し、企業・団体がその目的に沿って資金や開発リソースを拠出する仕組み」
である。
簡単に言えば、“エージェントAIの標準化と発展のためだけに使われる基金” という位置づけである。
AAIFの設立メンバーはAnthropic、Block、OpenAIで、Google、Microsoft、AWS、Cloudflare、Bloombergなどが支援に参加している。目的は、エージェントAIにおける標準仕様・インフラ・エコシステム構築を透明かつコミュニティ主導で進めることにある。
MCP寄贈と、関連プロジェクトの位置づけ
MCPは、このAAIFの創設プロジェクトの一つとして寄贈される。あわせて、以下の2つの関連プロジェクトもAAIFのもとに統合される。
● goose(Block提供)
- ローカルファーストなAIエージェントフレームワーク
- ユーザーのデバイス上で動作するエージェントの構築に重点を置く
- MCPとの連携も視野に入れたオープンソース基盤
- GitHub: https://github.com/block/goose
● AGENTS.md(OpenAI提供)
- AIエージェントが特定リポジトリでどう振る舞うべきかを定義するメタデータ仕様
- 例えば「どのディレクトリを触ってよいか」「依存関係は何か」「ビルドルールは何か」など、リポジトリの“行動規範”を機械可読で記述するための簡易標準
- Web: http://agents.md
これら3つのプロジェクトがAAIFのもとに集約されることで、エージェントAIの基盤技術がより統合的に発展する体制が整う。
MCPのガバナンスは従来どおりで、メンテナーによる透明性とコミュニティ参加を重視した運営が継続される。特定企業の意向に左右されない中立的な生態系を維持するための措置である。
エージェントAIに向けたオープン基盤の強化
今回の寄贈は、エージェントAIが安全で持続的なエコシステムとして成長するための基盤整備を念頭に置いたものだ。
MCP、goose、AGENTS.mdといった要素を中立的なファウンデーションに集めることで、エージェントの設計・運用・互換性がより明確な標準のもとで進化していく。
特にMCPのような「ツール接続の標準」は、エージェントAIの拡張性を大きく左右する。Linux Foundationへの寄贈は、技術が特定企業の製品戦略に依存せず、公共性の高い形で成熟していくための大きな一歩となる。
詳細はDonating the Model Context Protocol and establishing the Agentic AI Foundationを参照していただきたい。