11月23日、Windows Reportが「Google Revisits JPEG XL in Chromium After Earlier Removal」と題した記事を公開した。この記事では、Googleが過去にChromeから削除したJPEG XLサポートを、再びChromiumに統合しようとしている動きについて詳しく紹介されている。
以下に、その内容を紹介する。
■ JPEG XLとは何か
JPEG XLは、従来のJPEGを置き換えることを目的に設計された次世代画像フォーマットである。大きな特徴は以下の点にある。
- 高圧縮かつ高画質:既存のJPEGと比較して、視覚的品質をほぼ損なわずに、より小さなファイルサイズを実現する。特に、低ビットレート時の画質劣化が少ない。
- ロスレス圧縮への対応:PNGに近いロスレス圧縮をサポートし、高精細画像をそのまま保存できる。
- 既存JPEGからの再圧縮を無劣化で行える:JPEG XLは変換元のJPEGを完全再現できる「可逆トランスコード」を備え、既存コンテンツを劣化なしで移行できる。
- アニメーションサポート:GIFやAPNGの代替としてアニメーションを扱える。
- HDR・ワイドカラー対応:最新ディスプレイ環境を想定し、HDR画像や広色域の扱いに優れる。
- Web向け最適化:高速デコード、高圧縮率、可逆変換により、Webサイトの高速化・トラフィック削減に寄与する。
Web体験全体を改善しうる仕様にもかかわらず、ブラウザ対応が限定的なことから普及は進んでいなかったが、近年はSafariやWindows 11が対応し、再び注目を集めている。
■ Googleが再びJPEG XLを検討する理由
Googleは約3年前、ユーザー需要が限定的であることを理由にChromeからJPEG XLのサポートを削除した。当時は「利用シナリオが明確でない」と判断されたためだ。しかし、この方針は変わりつつある。
Chromeチームの担当者は開発者向けメーリングリストで、ChromiumへのJPEG XL統合作業を再開したと明らかにし、長期的な保守体制と通常のローンチ要件を満たせば「Chromeに搭載する」と述べた。
背景には複数の動きがある。
- SafariがすでにJPEG XLをサポート
- Windows 11ではMicrosoft Storeの拡張機能によりネイティブ対応
- PDFの仕様で採用が進む
- 開発者やユーザーからの復活要望が継続的に寄せられている
こうした外部環境の変化が、Googleの再検討を後押しする形になった。
■ 再統合に向けた技術状況
ChromiumにはすでにJPEG XLを再導入するコードが提出されており、この実装は「機能的に完成(feature complete)」とされている。開発者によれば、初期実装にはなかったアニメーション対応も追加されている。
コードはChromeの自動テストの大部分を通過しているが、まだレビュー段階であり、一般ユーザーが利用できる状態にはない。
Googleは特に以下を重視している。
- セキュアな統合
- 長期的な保守が可能な体制
- プラットフォーム間での一貫性の確保
これらを満たさない限り、Chromeの正式対応には踏み切らないと明言している。
■ 今後の見通し
Googleは現時点でJPEG XLをChromeに搭載する時期を示していない。Chromeの設定から有効化することもできず、一般ユーザーが利用できるようになるまでには時間を要する見込みだ。
しかし、数年間停止していた開発が再び動き始めたことは、JPEG XLの普及にとって大きな転機である。SafariやWindows 11の対応が進むなか、Chromeが追随すれば、JPEG XLがWeb全体の標準フォーマットとして普及する可能性もある。
詳細はGoogle Revisits JPEG XL in Chromium After Earlier Removalを参照していただきたい。