10月24日、デザイナー兼フロントエンド開発者のDave Bushell氏が「Reactを規制するべき時期ではないか?(Is it Time to Regulate React?)」と題した記事を公開した。この記事では、近年のWeb開発におけるReactの支配的地位と、それがもたらす弊害について論じられている。Bushell氏は、Reactがもはや「便利なフレームワーク」ではなく、Webを劣化させる一因になっていると強く批判している。以下に、その内容を紹介する。
Reactがもたらした「Webの劣化」
Bushell氏は冒頭で、Reactに対する「規制」という刺激的な言葉を用いながらも、真意は「開発者自身による自省と是正」にあると述べている。
彼によれば、今日のWebは「遅く」「壊れやすく」「アクセシビリティを欠いた」状態にあり、その多くがReactによって構築されているという。過剰なJavaScriptによるCPU負荷、バンドルサイズの肥大化、ユーザー体験を損なう複雑なUI。これらが「Reactが生み出した業界構造的な問題」だと指摘する。
Bushell氏はReactを「かつてのフレームワークから転じて、宗教的に崇拝されるカルトのような存在」と評し、開発者に基本的なWeb技術(HTML, CSS, JavaScript)の理解を避けさせる構造を批判している。
Reactを学ぶよりも、「メタフレームワーク(Next.jsなど)を使うべき」とされる風潮が、開発者をよりブラックボックス化された環境に閉じ込めているというのだ。
“React can be performant and accessible!”
— 典型的なReact擁護者
と皮肉を述べつつも、Bushell氏は「10年以上経ってもReactがWebを改善したとは言い難い」と断じている。
Reactが抱える構造的な欠陥
Bushell氏はReactの問題点をいくつかの観点から整理している。主な批判点は以下の通りだ。
- API設計の混乱:
useEffectのようなフックに関して、公式ドキュメントやブログ記事でも正しい使い方が統一されておらず、無限に議論が続いている。 - 仮想DOM(Virtual DOM)の性能限界:そもそも「速い」とされたVirtual DOMは、今では多くのエンジニアにとってボトルネックと化している。
- 過剰な依存構造:開発初期の段階で多メガバイト級の依存関係を導入し、問題解決のたびに
npm installを繰り返すことで、ユーザー体験を犠牲にしている。 - 基本技術の軽視:React開発者の多くがHTMLやCSSの理解を深めずに開発しており、「Web開発者」とは呼べない状態にある。
Bushell氏は、これらの積み重ねが「Reactスロップウェア(React Slopware)」と呼ぶ、低品質なWebアプリを大量生産する温床になっていると警鐘を鳴らす。
React Foundationへの懸念
また、Bushell氏は最近設立されたReact Foundationについても厳しく批判している。
彼は、参加企業の中には倫理的に問題のある大手テック企業が含まれていることを指摘し、「React Foundationは業界の自浄作用ではなく、むしろ権益の温存に過ぎない」と述べている。
“React Compiler and Server Components will fix this!”
— 誰かがそう言った
としながらも、Bushell氏は「このような“救世主的アップデート”への期待は、根本的な問題解決にはならない」と断言する。
「規制」ではなく「自省」を
タイトルの「Regulate(規制)」という言葉は挑発的だが、Bushell氏の本意は「政府による介入」ではなく、「Web開発者自身による再教育と責任の自覚」にある。
彼は冗談めかして「JavaScript税を導入すべきだ」と述べつつも、パフォーマンスやアクセシビリティの低下がユーザー体験の障害となっている現実を直視すべきだと主張する。
Bushell氏は、WCAG 3.0やEuropean Accessibility Actなどのガイドラインに基づけば、「パフォーマンスが悪いこと自体がアクセシビリティ違反」とみなされる可能性があると指摘。
「Web開発とは、ユーザーの使いやすさを第一に考える営みであるべきだ」と締めくくっている。
React開発者からWeb開発者へ
Bushell氏は、開発者に対して「React開発者からWeb開発者へ戻る」ことを勧めている。
ブラウザが提供する標準APIやWebプラットフォームの力を理解し、Reactを介さずに構築できるWebの可能性を再評価すべきだという。
“It has never been easier to build a website, stop avoiding it!”
(これほど簡単にWebサイトを作れる時代はない。避ける理由はない。)
と強調し、「Webの原点に立ち返れ」と呼びかけている。
まとめ
Bushell氏は最後に、皮肉を交えて次のように締めくくる。
自身も「サービス提供リストにReactを掲げている」が、それはクライアントが「技術的根拠もなくReactを使いたがる」からであり、実際には多くのWebサイトをReactなしで成功裏に構築してきたという。
詳細はIs it Time to Regulate React?を参照していただきたい。