9月30日、codemanshipが「Comprehension Debt: The Ticking Time Bomb of LLM-Generated Code」と題したブログ記事を公開し、話題を呼んでいる。この記事では、大規模言語モデル(LLM)が生成するコードが引き起こす「理解負債(comprehension debt)」という新たな課題について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
LLMコード生成がもたらす新たな負債
記事では、従来のレガシーシステム開発に似た問題が再び表面化していると指摘されている。すなわち、コードを修正・変更する前に「そのコードが何をしているのか、なぜそう書かれているのか」を理解しなければならないという点である。
ただし、今回の問題は規模が桁違いだ。LLMによるコード生成が爆発的に広まり、膨大な量の「読みにくく理解されていないコード」が大量のプロジェクトに流れ込んでいる。
品質を重視するチームとそうでないチーム
品質を重視するチームは、生成コードを取り込む前にレビューやリファクタリングを行う。しかし、そのプロセスに時間がかかり、LLM利用による「時間の短縮効果」は相殺されてしまう。
一方で、レビューを省略し、最低限のテストすら行わずに生成コードをリポジトリへ投入するチームも存在している。記事では「そして、その数は決して少なくない」と警鐘を鳴らしている。
「理解負債」とは何か
著者が提唱する「理解負債(comprehension debt)」とは、生成されたコードを将来的に修正・拡張する際に、まず理解するための余分な時間が必要になることを指す。
理解負債は、コードの内容を理解するまでのコストが将来に先送りされる点に特徴がある。特にLLMによって大量生成されるコードは、
- 背景や意図が説明されていない
- 命名や構造が不自然
- チームのコーディング規約から逸脱している
といった理由から、読む側が「なぜこうなっているのか」を理解するのに大きな労力を要する。
この理解コストは、コードが利用され続ける限り必ず顕在化する。変更や修正の必要が生じた時点で、「まず理解する時間」が大きな負債となってのしかかる。
コードが一度利用され始めれば、いつか必ず変更が必要になる。その際に「ツールに再度生成させればいい」という楽観論もあるが、記事では「それが通用するのはせいぜい7割程度」だと述べている。
LLM依存の「ドゥームループ」
LLMを使った修正作業では、「 ドゥームループ 」と呼ばれる状況に陥ることが少なくない。
これは「LLMに修正を頼んでも正しく直せず、何度も生成・修正を繰り返す」という現象である。結局は人間が自力でコードを読み解く必要があり、その時に理解負債の存在が大きな障壁となる。
急速に積み上がるリスク
技術的負債は意識的に管理される場合も多いが、理解負債は「無意識のうちに積み上がる」点が危険である。特に、レビューを省略し、テストも不十分なままLLM生成コードを取り込むチームが少なくない現状では、ソフトウェア業界全体で大規模な理解負債が蓄積しつつあると警告している。
詳細は Comprehension Debt: The Ticking Time Bomb of LLM-Generated Codeを参照していただきたい。