8月21日、RailsおよびPhoenix向けのブラウザ内コーディングエージェント「Tidewave Web」がリリースされ、大きな話題を呼んでいる。
この記事では、Tidewave Webの概要と特徴について詳しく紹介する。
概要
Tidewave Webは、開発者の手元の開発環境で、Webアプリケーションのページとコードの両方のコンテキストを共有しながら動作するコーディングエージェントである。
従来の汎用エージェントでは、「ブラウザで不具合を確認→エディタでテンプレートを探す→見えている内容をAIに説明する」といった往復が発生しがちである。修正後に実行すると今度は実行時例外、さらにDBマイグレーション抜け……といった具合で、エンジニアは主にAIエージェントに対する「翻訳役」になってしまう。具体的には、画面に映っている内容を説明したり、スタックトレースをコピーペーストしたり、ツール間でコンテキストが失われたりする往復作業が前提となる。
従来: エンジニアが実行結果(Webアプリ)とコーディングエージェントの間で「翻訳役」を担う
Tidewave Webは、UIの状態や使用中のフレームワークを理解し、実際のアプリケーション実行環境の内部でコードを動かす。インスペクタでUI要素(例:メニューコンテナ)を選び「このページのデータをCSVでエクスポートするボタンを追加し、機能全体を実装せよ」と指示すれば、該当テンプレートとコントローラ/ビューへ直結し、必要に応じてDBを自動クエリし、モデルやスキーマにアクセスし、ブラウザで実際に操作して検証し、問題時はログを読む。つまり、開発者・エージェント・アプリが同じ文脈を共有する。
Tadewave Webは実行結果(Webアプリ)に自らアクセスし、エンジニアとコンテキストを共有しながら作業する
主要機能
Tidewave Webの主な機能は以下の通りだ。
- Shared page context(ページ文脈の共有) — 現在のUI状態へ直接アクセスし、それを対応するコントローラ・ビュー・テンプレートへ自動でマッピングするため、見えている箇所の説明やコード経路の手作業追跡を不要にする。
- Deep framework integration(深いフレームワーク統合) — 実行中のRails/Phoenixアプリ内でコードを実行し、DBクエリ、ログ監視、ドキュメント参照などを行う。開発者と同等の開発ツールにエージェントがアクセスできる。
- Collaborative browser testing(協調的なブラウザテスト) — ブラウザ上で機能を実装し、その場で動作検証する。ポイント&クリックのインスペクタから改善提案や変更依頼が可能である。
- Runs in your dev environment(手元の開発環境で動作) — Rails/Phoenixアプリにパッケージを1つ追加し、既存のGitHub CopilotまたはAnthropicアカウントを接続、アプリの
/tidewave
ルートにアクセスすれば利用開始できる。
提供形態・要件・料金
Tidewave WebはRailsおよびPhoenix向けのパッケージとして提供され、利用にはGitHub CopilotのサブスクリプションまたはAnthropicのAPIキーが必要である。インストール後、Webアプリの/tidewave
にアクセスして登録すると、月20メッセージまでの無料トライアルを利用できる。有料のTidewave Proは月額10ドルでメッセージ無制限となる。無料トライアルはこちら。
対応範囲とロードマップ
現時点ではフルスタックなRails/Phoenixアプリで最も効果を発揮する。クライアントサイドフレームワーク(ReactやVue)は現状「見えない」ため、フルな恩恵は受けにくい。React対応はロードマップにあり、今後の対応予定である。さらに、Django、Flask、Next.jsなど他のWebフレームワークへの拡張にも取り組んでおり、希望者はウェイティングリストまたはDiscordサーバーで通知を受けられる。
初期リリースの焦点は「ページとWebフレームワーク実行環境への深い統合」であり、TODO管理やサブエージェントなど、さらなるエージェント機能はユーザーとともに優先度を見極めて磨いていく方針である。
まとめ
Tidewave Webは、ブラウザ・コード・ランタイムを跨いだ往復を減らし、開発者とエージェントが同じ文脈で作業できる環境を提供することに重点を置く。初期対応はRails/Phoenixにフォーカスしつつ、Reactや他フレームワークへの拡張、エージェント機能の強化を見据えたロードマップが示されている。
詳細はTidewave Web: in-browser coding agent for Rails and Phoenixを参照していただきたい。