7月23日、Elad Gil氏が「AI Market Clarity」と題したブログ記事を公開し、話題を呼んでいる。この記事では、生成AIブームから約4年を経てAI市場の主要セグメントが「結晶化」(市場動向がほぼ固まった状態)し、勝者が浮き彫りになった現状と、次の成長フロンティアとなる領域について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
6つの市場セグメントで勝者が固まりつつある
- 基盤モデル(LLM)
Anthropic、Google(Gemini)、Meta(Llama)、Microsoft/OpenAI、Mistral、X.AIなどが中核プレイヤーとなり、クラウド大手との資本提携により数十億ドル規模の資金障壁が形成された。
- コード生成・開発支援 Claude Code、Cursor、GitHub Copilot/Microsoft、OpenAI、Cognition Labs(Devin)、Windsurfなどが先行。IDE統合型とエージェント型のハイブリッドへ収斂する見通し。
- リーガルテック HarveyとCaseTextが法律事務所・企業法務向けにリード。EvenUpやEveなど、特定分野のワークフロー全自動化を狙う新興勢が台頭する。
- メディカル・スクライビング Abridge、Ambience、Commure/Athelas、Nuance(Microsoft)が診療記録作成を中心に市場を確立。今後は診療周辺業務へ横展開が課題となる。
- カスタマーサービス/CX DecagonとSierraがスタートアップ勢の双璧。ZendeskやIntercomなどの既存SaaSも生成AI機能を急速に内製し、統合AIエージェントへの移行が進む。
- 検索・情報検索の再発明 Google、OpenAI(ChatGPT)、Metaに加え、Perplexityが唯一の有力スタートアップとして存在感を高めている。エージェント化したブラウザ「Comet」で購買行動まで自動化する動きも注目だ。
次に結晶化が見込まれる6領域
- 会計
- コンプライアンス(例:医薬品規制)
- 金融分析ツール
- 営業支援エージェント
- サイバーセキュリティ(AIエンドポイント防御含む)
- その他未開拓市場(提案歓迎)
GPTラダー──モデル進化が市場創出を促進

モデル性能の段階的向上(GPT‑4→GPT‑5など)は、コードやリーガルのように「ある閾値を超えた瞬間に実務導入が爆発する」市場を順次開放する。これを著者は「GPTラダー」と呼び、各段で新規市場が開くと指摘する。
シート売りから“認知単位”売りへ
生成AIの普及で、従来の「座席課金型」SaaS(ユーザー数に応じた課金型SaaS)から「処理したタスク量=認知単位」に応じた課金モデルへの転換が進むだろう。エージェントが業務を肩代わりする世界では、人間労働に相当する成果物単位が新しい価値尺度となるためだ。
市場終局を左右する“決定的一手”
資本投入、M&A、パートナーシップによる流通チャネル独占など、トップ2社を束ねて一気に市場を制する「マーケットエンディングムーブ」が今後活発化すると予測される。既に買収・合併を前提としたAIロールアップ戦略も投資家の関心を集めている。
まとめ
生成AI黎明期に混沌としていた各領域は、4年間で主要プレイヤーが固まり、市場構造が急速に安定化した。一方で、会計やセキュリティなど次のフロンティアはまだ流動的で、新規参入の余地が大きい。モデル性能向上とエージェント化の進展が、今後も新たな市場創出と再編を加速させるだろう。
詳細はAI Market Clarityを参照していただきたい。