5月14日、海外の技術メディアAIMが「Why Developers are Quietly Quitting Golang」と題した記事を公開した。この記事では、Go開発者が同言語を静かに離れつつあるという現状について述べられている。以下に、その内容を簡単に紹介する。

Go に今逆風が吹いている
記事の冒頭では、フィンテック系スタートアップのエンジニア Yash Batra が半年で Go から Kotlin へ全面移行した体験を取り上げている。Batra は「 私たちはツールを作るためにツールを作っていた 」と述べ、Go の最小主義がプロダクト開発の速度を著しく低下させたと回顧する。
また、長年 Google で Go を率いてきた Ian Lance Taylor が 2025 年 4 月に退職したことも、コミュニティに衝撃を与えた。Taylor は「Go は“単なる一言語”の段階に到達した」と述べ、環境変化に合わせた言語進化の必要性を強調した。
Go言語に対する開発者たちの不満
Go は 2007 年に Rob Pike、Ken Thompson、Robert Griesemer が開発し、クラウド・インフラ向け言語(“C of the Cloud”)として脚光を浴びた。しかし 2022 年頃から、早期採用者の間で「プロトタイピング専用言語」「入門用言語」として位置づけ直す声が増え始めた。背景にはエコシステムの限界や AI ワークフローとの相性の悪さがある。
Go から離脱する開発者が挙げる代表的な不満点は次のとおりだ。
- エラー処理が冗長で、同じ
if err != nil
パターンが散在する。 - goroutine は強力だが、競合状態や静かな失敗を招きやすく、テストが難しい。
- “No frameworks” 文化により、共通機能を一から実装する負担が大きい。
- Go エンジニアの母数が少なく、採用・オンボーディングコストが高い。
- 生成 AI が慣用的な Go コードを出力しづらく、Python などに比べ生産性が劣る。
一方で、パフォーマンスとシンプルさを兼ね備えた Zig、豊富なツールチェーンを持つ Kotlin、安全性と速度で評価される Rust などの新たな言語は、Go言語への不満を解消する選択肢として、開発者たちの関心を集めているという。特に Zig は GC を持たず、async/await を標準搭載する点で注目されている。
Goの今後に注目
とはいえ批判が高まる一方で、Go はクラウドネイティブツールや軽量 API サーバの分野で依然として高い採用率を誇る。支持者は「Go の退屈さこそが信頼性の源泉だ」と主張し、言語の成熟がもたらす安定性を評価する。
Taylor は「プログラミング言語に完成はない」と語った。Go が引き続きインフラ領域で地位を保つのか、あるいは他言語に主役を譲るのかは、エコシステム拡充と開発体験の改善にかかっている。Go が掲げる「シンプルさ」を武器に進化を遂げられるかが、今後数年の焦点となる。
詳細はWhy Developers are Quietly Quitting Golangを参照していただきたい。