Cline利用におけるデータの取り扱いについて

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【2025年5月16日追記】

利用規約について、Cline社からの回答により適用範囲が明確となりました。

以下の記事も合わせてご覧ください。 blog.serverworks.co.jp

【2025年5月16日追記ここまで】

これまでClineに関するブログ記事をいくつか公開し紹介してきました。 今回、利用規約の変更に伴うユーザーデータの取り扱いについて懸念が生じたため、本記事ではClineの利用規約の中でも特に注意すべき点と、弊社の対応についてご説明します。

Cline利用規約の変更点とデータ収集のリスク

Clineの利用規約 (https://cline.bot/tos 更新日: 2025年2月24日) を確認すると、ユーザーコンテンツの取り扱いに関する記述が変更されていることがわかります。特に注目すべきは、利用規約の3.2における以下の記述です。

You further grant, and you represent and warrant that you have all rights necessary to grant, to us, under all of your Intellectual Property Rights, an irrevocable, perpetual, transferable, sublicensable (through multiple tiers), fully paid, royalty-free, and worldwide right and license to use, copy, store, modify, distribute, reproduce, publish, list information regarding, make derivative works of, and display your User Content and Output

3.2の中で定義されているUser Contentは利用規約の3.1で以下のように定義されております。

As between us and you, you (or your licensors) will own any and all information, data, and other content, in any form or medium, that is collected, downloaded, or otherwise received, directly or indirectly, from you (or on your behalf) by or through the Service (“User Content”).

また、3.1で定義されているServiceは利用規約の冒頭で以下のように定義されています。

(a) the Visual Studio Code extension and software development agent provided by Cline Bot Inc. (including its successors and assigns, "Cline," "we," "our," or "us") that uses frontier models to write, edit, and build software; and (b) the website(s), including cline.bot, and any successor URL(s), and any and all related software, documentation, and online, mobile-enabled, and/or digital services that link to these Terms (collectively, the "Service")

これは、ユーザーがClineのサービスを通じて入力または出力したコンテンツ(User Content and Output)に関して、Cline社に対し、使用、コピー、保存、変更、配布、複製、公開、派生物の作成、表示などを含む広範な権利を、取り消し不能かつ永続的に許諾することを意味します。

この条項は、VS Code拡張機能などを通じてClineに入力・出力される情報も「User Content」の範囲に含まれると解釈でき、開発中のソースコードなどが意図せず収集・利用される可能性を示唆しています。

具体的な懸念事項

現状のClineの機能において、直ちに重大なリスクが発生するという事ではありませんが、利用規約の文面からは、将来的に以下のような形でユーザーデータが収集・利用される可能性が否定できません。

  • Clineが提供するAPIプロバイダー利用によるデータ収集の可能性:

    • Clineは様々なAPIプロバイダーを選択することができますが、Clineが提供するAPIプロバイダー (Clineの基盤を経由してLLMを利用できるプロキシ) を選択して利用した場合、入力されたデータがCline側のサーバーに送信され、記録・分析される可能性があります。
  • Telemetry機能を通じたデータ収集の可能性:

    • ClineにはTelemetryという機能があります。Telemetry機能とは、ソフトウェアの使用状況や動作状態に関するデータを自動的に収集し、開発元に送信する仕組みです。現状では、VS CodeのTelemetry設定を有効化していて、かつClineのTelemetry機能を明示的に有効化していない限り情報連携はされません。ただし、今後の機能拡張により、この経路から詳細な情報が収集される可能性があります。利用規約の文面を考慮すると、Telemetry機能の仕様変更によって、ユーザーが気づかないうちにコードやプロジェクト情報が収集される懸念があるため、この機能についても注意が必要です。 *1

弊社の対応

上記の懸念点を踏まえ、弊社では現在Clineの積極的な利用を見送っております。お客様の大切な情報を保護し、意図しないデータ収集のリスクを避けるための判断です。

まとめ

Clineは非常に魅力的な開発支援ツールですが、利用規約の内容、特にユーザーデータの取り扱いについては十分に注意が必要です。ご利用を検討されている場合は、利用規約をよく確認し、潜在的なリスクを理解した上で判断されることをお勧めします。

弊社では、今後もツールの利便性とセキュリティのバランスを考慮し、お客様に安心してご利用いただける開発環境の構築に努めてまいります。

※AIを活用した開発ツールの状況については日々変化するため、本件に関する最新情報があった場合は、改めて報告させていただきます。

*1:Telemetry機能についてのドキュメントURL https://docs.cline.bot/more-info/telemetry