7月16日、Lean UXの著者として名高いJeff Gothelf氏が「アジャイルは終わったのか? (Is Agile over?) 」と題した記事を公開した。この記事では、アジャイル開発手法の現状とその将来性について述べられており、海外で大きな注目を集めている。以下に、その内容を紹介する。
アジャイル開発の普及と問題点
アジャイル開発は過去20年以上にわたり、ソフトウェア開発チームや企業全体に広く浸透してきた。書籍、コース、トレーニング会社、認証、フレームワーク、そして無数の図表が市場を席巻し、会議は満員となり、アジャイルの革命的なアイデアを学びたい人々であふれかえっていた。しかし、2023年末からアジャイルに対するビジネス界の関心が薄れつつある兆候が見られる。果たしてアジャイルの時代は終わりを迎えるのだろうか?
浸透が成熟を意味するわけではない
アジャイルとビジネス界において、アイデアが広く浸透したからといって、そのアイデアが内面化され、最終的に有効活用されているわけではない。もし、経営者に「あなたの会社はアジャイルな方法で運営されていますか?」と尋ねたら、99%の手が挙がるだろう。しかし、詳しく調べてみると、確かにアジャイルは使われているが、実際に利益を得ている企業は非常に少ない。なぜだろうか?
コンサルタントに言わせると「多くのアジャイル実装は間違っていた」と言うだろう。実際失敗も多く、これにより多くのビジネスパーソンは、アジャイルのメリットに対して懐疑的になっている。端的に言えば 「アジャイルはダメだ」と思っている のだ。さらに、リーダーたちはチームの機敏さを高めるために働き方を変更することには抵抗する。
そう、確かにアジャイルは市場に浸透した。しかし、多くの組織でその浸透は表面的なものであった。多くの企業がアジャイルについて語るのは以下のようなことだ——
- 「我々はSAFe(編注:アジャイル開発の手法を大規模な組織やプロジェクトに適用するためのフレームワーク)を実装しているので、6週間ごとに機能を予測可能に展開できる。」
- 「ビジネス側が製品を定義し、開発チームがそれをストーリーに分割して、高い出荷速度を維持する。」
これは多くの人にとって聞き覚えのある話だろう。しかし、これらの文章を良く眺めて欲しい。これらの物事が実際にどのような価値をもたらしているというのか?
アジャイルは重要な転換点にある
今後も新たにアジャイルを導入する組織はたくさんあるだろう。しかし、アジャイルフレームワークを組織に強制し、それを警察のように監視するというのは間違いだ——アジャイルが置き換えようとしているフレームワークと同じくらいプロセスが硬直化してしまい、失敗を招くことになる。
アジャイルの厳格な実装に焦点を当てるのではなく、アジャイルから得たい利益や望ましい結果に焦点を当てよう。例えば、「2週間スプリントを実施する」というのではなく、「市場からの新しいデータポイントや洞察に2週間以内に対応できるようにする」とチームに求める。「特定の形式でユーザーストーリーを作成し、このツールに入力しなければならない」というのではなく、「分野間の引き継ぎ回数を半減させる」とチームに求めるのだ。
ここでの違いは、 成果(outcomes)を重視するか、出力(output)を重視するかだ。人々に仕事のやり方を指示するのではなく、プロセスの目標を設定し、それが彼らと会社をより成功させるように働きかける。成功は一連の規則に従うことではなく、チームの行動改善に基づいて測定する。
アジャイルではなく、機敏さ(agility)を推進しよう。 この意味で、アジャイルは終わることはない。常にあるべき姿に変化し続けるのだ。
詳細はIs Agile over? を参照していただきたい。