5月29日、オンラインマーケティングプラットフォームのSparkToroのブログにおいてRand Fishkinが伝えるところによると、Googleから大量の内部ドキュメントが漏洩したという。
この漏洩文書は、Googleの検索部門からのものであり、Googleの元従業員によれば、本物の内部文書である可能性は高いとされている。
これにより、Googleが長年にわたり公にしてきた声明と実際の内部動作に矛盾があることが明らかにされた。
同記事では、漏洩文書を入手した経緯やその真贋の確認プロセスなどについても詳しく述べられている。
ここでは、同記事で語られているSEO関連の考察についてポイントをまとめた。
漏洩された文書から明らかになった主な点
NavBoost: クリックデータの重要性
Googleは、クリックストリームデータ(ブラウザによって訪問されたすべてのURL)を使用して検索エンジンの結果の品質を向上させている。特に「NavBoost」と呼ばれるシステムがこのデータを利用し、ユーザーのクリック行動を評価している。(NavBoostについては後述)Chromeブラウザの役割
GoogleはChromeブラウザを使用して、ユーザーのクリックデータを収集し、検索結果のランキングに影響を与えている。これは、特定のページのクリック数に基づいて、そのページをサイトリンクに含めるかどうかを決定するために使用されている。ホワイトリストの存在
Googleは、旅行、Covid-19関連、選挙関連の検索結果に対してホワイトリストを使用している。これにより、信頼性の高い情報源が検索結果の上位に表示されるようにしている。品質評価者のフィードバックの利用
Googleは、品質評価者からのフィードバックを検索システムに組み込んでおり、これが検索結果の評価に影響を与えている。リンク評価の方法
Googleは、リンクの品質を評価するためにクリックデータを使用しており、高品質なリンクはランキング信号を伝えるが、低品質なリンクは無視される。
NavBoostとは?
NavBoostは、Googleの検索アルゴリズムにおいて、ユーザーのクリック行動を基に検索結果を最適化するために使用されるシステムである。このシステムは、ユーザーが検索結果をどのようにナビゲートするかに基づいて、検索結果の品質を向上させることを目的としている。
主な機能と役割
クリックデータの収集と解析
NavBoostは、ユーザーが検索結果をクリックする際のデータを収集し、それを解析する。これには、どのリンクがクリックされたか、そのクリックがどれくらいの時間続いたか(長クリック vs 短クリック)、ユーザーがどのページに戻ったか(ポゴスティッキング)などが含まれる。これにより、検索結果の品質と関連性を評価する。トレンドの特定
NavBoostは、特定のキーワードに対する検索需要のトレンドを特定する。これには、特定のキーワードがどれだけ頻繁に検索されているか、その検索結果がどれだけクリックされているかが含まれる。これにより、急上昇中のトピックや人気のコンテンツを特定し、検索結果に反映させる。ナビゲーションパターンの評価
NavBoostは、ユーザーが特定の検索クエリの後にどのようなナビゲーションパターンを取るかを評価する。例えば、多くのユーザーが「白石俊平」と検索し、その後「TechFeed」と検索して techfeed.io をクリックする場合、NavBoostは「白石俊平」の検索結果に techfeed.io を上位表示するように調整する。スパム対策
NavBoostは、クリックスパム(手動および自動の不正クリック)に対抗するために、クッキー履歴やログイン状態のChromeデータ、パターン検出を利用する。これにより、不正なクリックを排除し、信頼性の高いクリックデータを基に検索結果を最適化する。地理的なデータ考慮
NavBoostは、クリックデータを地域ごと(国や州などのレベル)に評価し、モバイルとデスクトップの使用状況を考慮に入れる。ただし、特定の地域やユーザーエージェントに関するデータが不足している場合は、そのクエリ結果に対して一般的な処理を適用することがある。
具体的な使用例
動画や画像のトリガー
特定の検索クエリに対して、ユーザーが動画や画像に多くの注意を払っている場合、NavBoostはそのクエリと関連するクエリに対して動画や画像のフィーチャーをトリガーする。全体的なサイト品質評価
NavBoostは、ホストレベルでサイトの全体的な品質を評価し、これが検索結果のランキングに影響を与える。例えば、GoogleやSEO業界で「Panda」と呼ばれるアルゴリズムの評価に相当する。
NavBoostは、ユーザーのクリック行動を基に検索結果を最適化するための強力なシステムであり、Googleの検索品質向上に大きな役割を果たしている。このシステムにより、ユーザーにとってより関連性の高い検索結果を提供し、スパムを排除することで、検索エクスペリエンスを向上させることができる。
オーガニック検索トラフィックに関心のあるマーケター向けの大局的な考察
漏洩されたGoogle APIドキュメントから得られる、マーケティング戦略に重要なポイントを以下にまとめる。
ブランドの重要性
Googleは、ウェブ全体で強力かつ広く認識されているブランドを優先してランキングする傾向にある。小規模な独立サイトや新興企業が大手ブランドと競うことは難しい。このため、マーケターは Google検索以外でのブランド構築に力を入れるべき である。E-E-A-Tの実際
「経験」「専門性」「権威」「信頼性」(E-E-A-T)が直接的なランキング要素としてどれほど重要かは不明確である。APIドキュメントには、これらに関する具体的な言及は少ない。しかし、著者としての影響力がランキングに影響する可能性は高い。マーケターは、自身やブランドのオンラインでの評判を高めることが重要である。ユーザーの意図とナビゲーションパターン
ユーザーの検索意図とそのパターンは、コンテンツやリンクよりも重要である。特定の地域で特定の検索意図がある場合、その意図に応じた結果が表示される。これを活用するためには、地域ごとのユーザーのニーズや行動を理解し、それに応じたコンテンツを提供することが重要である。古典的なランキング要素の変化
PageRankやアンカーテキストリンクなどの古典的なランキング要素は、以前ほど重要ではなくなっている。しかし、ページタイトルは依然として重要な要素である。マーケターは、ページタイトルの最適化に注力すべきである。小規模ビジネスや新規作成者にとってのSEOの現実
小規模ビジネスや新規作成者にとって、SEOはすぐに大きな成果を上げるものではない。信頼性、ナビゲーション需要、強い評判を確立するまでは、SEOの効果は限定的である。このため、初期段階では他のマーケティング手法にも力を入れるべきである。
漏洩文書から明らかになったこれらのポイントは、Googleの検索アルゴリズムがどのように進化しているかを示している。マーケターは、ブランド構築、ユーザー意図の理解、ページタイトルの最適化に注力し、小規模ビジネスや新規作成者はSEO以外の手法も取り入れることが重要である。
この漏洩文書は、Googleの検索アルゴリズムの内部動作についての新たな洞察を提供し、SEO(検索エンジン最適化)業界における実践に大きな影響を与える可能性がある。今後、より詳細な分析が行われ、新たな発見が公開されることが期待される。
詳細はAn Anonymous Source Shared Thousands of Leaked Google Search API Documents with Me; Everyone in SEO Should See Themを参照していただきたい。