11月8日、The Cooldownが「57% of kids turn to AI for emotional support, nearly matching homework use, survey finds」と題した記事を公開した。子どもの**57%**が悲しみや孤独感を感じたときにAIチャットボットに頼っているという調査結果は、AIが「学習ツール」という位置づけをとっくに超えていることを示している。しかも、精神的に不安定な子どもほどAIへの依存度が高いという相関も報告されており、テクノロジーとメンタルヘルスの関係をめぐる議論は新たな段階に入っている。
宿題利用と肩を並べる「感情サポート」としてのAI
メンタルヘルス支援団体のJED Foundationが実施した調査によると、9歳〜17歳の子どもの**90%**がAIチャットボットを利用したことがあると回答した。その用途の内訳が注目に値する数字を示している。
- **58%**:宿題や学校の勉強に利用
- **57%**:悲しみ・ストレス・孤独感・気持ちの圧迫感を感じたときに利用
- **12%**:友達代わりや会話相手として利用
- **約20%**(高校生対象の別調査、CDT「Hand in Hand」調査レポート、2025年11月公開):本人または友人がAIと「ロマンティックな関係」を持った経験あり
宿題利用(58%)と感情サポート利用(57%)がほぼ拮抗しているという事実は、AIが「学習ツール」という枠をとっくに超えていることを示している。なお、CDT調査レポートはPDF形式で公開されており、本紹介記事執筆時点(2026年11月)から遡ること約1年前にあたる2025年11月に発行されたものである。データの時系列として参照の際は留意されたい。
精神的に不安定な子どもほどAIに頼る傾向
調査では、感情的な苦境においてAIに頼った子どもほど、過去の自殺念慮や自殺未遂の報告が多く、また自己評価による精神的健康度・ウェルビーイングの指標も低かった。
JED Foundationの心理学者・研究評価担当副社長のKayla Anderson氏は、Oregon Public Broadcasting(OPB)に対して次のように述べている。
「若者がAIをどのように使っているかを把握し、それがウェルビーイングの指標、自殺念慮・自殺未遂の経験、精神的健康の悪化とどう相関するかを個別に分析できました」
発達心理学者のAnne Maheux氏(本調査には非参加)は同媒体に対し、より踏み込んだ見方を示した。
「精神的に不調な子どもがAIを頼る。しかしそのAI利用が、改善ではなく、精神的課題をさらに悪化させている可能性があります」
因果の方向性が問題だ。もとからメンタルが不安定な子がAIに向かうのか、AIへの依存がメンタルを悪化させるのか、現段階では断定できない。JED Foundationはこの点を整理するため、「感情的な苦境でチャットボットを使った」ケースと「単に使ったことがある」ケースを区別して分析を進めている。
テキサスの15歳が示す「AIへの依存」の具体像
テキサス州に住む15歳のArjun Sharda君は、化学のテストが心配でChatGPTに繰り返し問いかけたエピソードをOPBに語っている。
「変換とモルの最初の化学テストで落ちるのが怖くて、ChatGPTに何度も『大丈夫かな?GPAは維持できる?』と聞き続けました」
これは学習支援というより、不安の緩和を求める行動だ。AIが「何度でも否定せずに答えてくれる存在」として機能している側面が浮かぶ。子どもにとって、親や教師には言いにくい不安をAIには打ち明けやすいという構造が、感情依存を促進している可能性がある。
環境負荷という別の問題
記事は、子どもの感情依存という社会的問題を論じる文脈の延長として、AIがもたらすより広範なコストにも目を向けている。感情サポートや学習支援としてのAI利用が日常化・低年齢化するほど、チャットボットの稼働量も増大する。チャットボットはデータセンターの電力を大量に消費し、冷却に相当量の水も必要とする。子どものメンタルヘルスへの影響と、AIインフラの環境コストは、AI利用の拡大という同じ根を持つ問題の異なる側面として並行して議論されている。
子どものAI利用をめぐる動き
この調査結果を背景に、各方面での対応も進んでいる。
- カリフォルニア州では、OpenAIが未成年者に個人情報を収集させたとする訴訟が進行中
- OECDは91カ国のデータをもとに、AIがティーンエイジャーの学力を低下させる可能性を警告
- ニューヨーク市とロサンゼルス市は学校でのAI利用の大部分を禁止
- シカゴのある私立校(年間授業料5万5,000ドル)では、全学科をAIが担当する体制を導入
規制と活用の間で、現場の対応は割れている。AIを感情の受け皿として日常的に使い始めた世代が成長したとき、どのような影響が顕在化するかはまだ誰にも分からない。
詳細は57% of kids turn to AI for emotional support, nearly matching homework use, survey findsを参照していただきたい。