11月7日、TechCentralが「Apple cuts AI budgets for engineers to rein in rising costs」と題した記事を公開した。全社のAI・インフラ投資が拡大し続ける中、Appleが現場エンジニアのAIモデル利用予算を大幅に引き下げているという逆説的な構図が明らかになっている。
日次予算の削減幅——多くのエンジニアは300ドルから200ドルへ
Appleが技術系社員のAIモデル利用に設けていた日次予算を、300ドルから200ドルへ引き下げた。これが今回の措置における基本ラインだ。さらにチームによっては100ドルまで削減されるケースがあり、一部の限られたグループでは最低25ドルまで下がる場合もある。25ドルを超える利用が必要な場合は、シニアマネジメントの承認が必要となる。
なお、非技術系社員にはすでに日次上限100ドルが設定されており、今回の措置は主に技術系職種を対象とした追加的な締め付けとなる。
この予算制限はトークン消費量に対して課されるものだ。トークンとは、AIモデルが処理するデータの基本単位であり、コードのデバッグや自動生成といった作業は特にトークンを大量に消費する。現在、社員はGemini・ChatGPT・Claudeへのアクセス権を持っているが、Appleは今後、より安価なモデルやローカルハードウェア上で動作するモデルの利用を推奨していく方針だ。
社内の反応は二分
この変更に対する社内の受け止め方は分かれている。元々の300ドルの上限に達することはほとんどなかったと指摘する社員がいる一方で、今回の措置をより広範なコスト削減の予兆と見る声もある。
こうした不安の背景には、8月に200名以上が削減された人員整理がある。Appleは現在、管理レイヤーの削減や外部コンサルタントの起用による業務効率化を進めており、AI予算の縮小もその流れの一環として捉えられている。
全体的な支出は増加している
逆説的に映るのは、Appleの総支出は増え続けていることだ。直近の年次報告書によれば、営業費用は22%増の755億ドルに達している。AIやインフラへの投資も膨らんでおり、2026年度の研究開発費は32%増となった。
現場エンジニアのAI利用コストを細かく管理しながら、会社全体としてのAI投資は拡大するという構図は、一見矛盾して映る。しかし企業の視点からすれば、戦略的な大型投資と日常的な運用コストの管理は別軸の問題であり、後者を絞ることで前者の原資を確保するという判断とも読める。
大手テック各社に広がるAI予算管理
Appleの動きは業界全体のトレンドとも一致する。Microsoftは7月に部門別のAI利用予算枠を導入、Teslaは週200ドルの上限を設定、Uberはコーディング向けAIソフトウェアに月1,500ドルの上限を課しており、大手テック企業がAI利用コストの管理に本腰を入れ始めている状況だ。
生成AIブームの中でクラウドAPIの利用費用が急騰していることを踏まえると、エンジニアの日常的なAI利用コストをいかに管理するかは、企業規模を問わず共通の課題になりつつある。個人の生産性向上を目的とした自由なAI利用と、組織全体のコスト規律をどう両立させるか——Appleの今回の判断は、その問いに対する一つの回答だ。
詳細はApple cuts AI budgets for engineers to rein in rising costsを参照していただきたい。