11月6日、ZDNetが「HR thinks you can learn AI skills」と題した記事を公開した。HR担当者の9割超が「社員はAIスキルを習得できる」と考えているにもかかわらず、実際には外部採用が社内リスキリングを上回っているという調査結果を紹介している。
「育てられる」と思っているのに、なぜ外から採るのか
ワークフォース支援を手がけるグローバル企業Careermindsが発表したホワイトペーパー「The AI Redeployment Gap: What Companies Lose by Hiring over Reskilling」に、興味深いギャップが示されている。
調査によると、**HR担当者の92%、ピープルマネージャーの88%が「自社の社員はAI関連職へのリスキリングが可能だ」と回答している。ところが実際の採用行動を見ると、HR担当者の51%、マネージャーの47%がAI関連ポジションに外部採用を実施していると回答。一方、既存社員を再配置・再教育しているとしたのは両グループともわずか42%**にとどまった。
「育てられると思っている」と「実際に育てている」の間に乖離がある——これは元記事著者による整理だが、数字そのものが端的にその構造を示している。
本調査は調査会社Censuswideとの共同実施で、従業員500〜1万人以上の組織に勤める米国のHR担当者595名、ピープルマネージャー547名を対象に、2025年5月15〜26日に行われた。
リスキリングを阻む「スキルの見えなさ」
なぜ内部登用が進まないのか。最大の障壁として挙げられたのが、スキルの可視化不足だ。「誰がどんなスキルを持っているか、誰をリスキリング対象にすべきかがわからない」という点を課題として挙げたのは、HR担当者の**43%、マネージャーの34%**に上る。
この問題は業界全体でも認識されている。2025年9月には、教育大手PearsonがAIネイティブのスキル管理プラットフォームWorkeraの買収に合意したと報じられた。WorkeraはServiceNow、Accenture、米宇宙軍といった組織でも活用されており、AIスキルの測定・可視化に特化したツールとして注目を集めている。
さらにCareermindsのデータでは、**HR担当者の87%、マネージャーの84%**が「自社はリスキリングを十分に考慮している」と回答している。しかし実際の採用行動はそれを裏切っており、「優先しているつもり」と「実際にやっていること」がかみ合っていない状況が浮かび上がる。
外部採用は内部登用より3〜5倍コストがかかる
このギャップには、コスト面でも大きな代償が伴う。Careermindsのホワイトペーパーが引用するThe Josh Bersin Company——HR・人材領域で広く参照される著名リサーチ会社——の調査によれば、外部採用のコストは同等ポジションを内部で充足する場合の3〜5倍に達し、採用完了までの期間も平均20日長くかかるとされる。
Careermindsのシニアパートナー、Mark Saddic氏はプレスリリースでこう述べている。
「企業はAIへの投資を進める一方で、最も価値ある資源の一つ——すでに自社で働いている人材——を見落としている可能性がある」
業種間でも対応に格差
業界別に見ると、対応の差は顕著だ。テクノロジー・通信業界では外部採用がリスキリングを15ポイント上回っている。同業界はAI人材の需要が急増している一方、必要とされるスキルセットの変化が速く、既存社員のリスキリングが追いつかないと判断されやすい側面がある。外部からの即戦力確保が短期的に合理的に見えるため、内部育成よりも外部採用が優先されやすい構造が生まれていると考えられる。
対照的なのがメディア・エンターテインメント業界で、調査対象の中で唯一、外部採用よりも内部再配置が多い業種となった。同業界のHR担当者の**56%が社員の再配置を実施していると回答した一方、外部採用を行っているのはわずか25%**だった。
AIスキル人材の確保を外部採用に頼る傾向は、短期的には課題解決に見えても、コストと時間の両面で非効率だとCareermindsのデータは示している。スキルの可視化と内部育成の仕組みづくりが、AIシフトの実効性を左右しそうだ。
詳細はHR thinks you can learn AI skillsを参照していただきたい。