11月3日、The Decoderが「Anthropic cracks down on game cloning in Claude Code after wave of AI-built knockoffs」と題した記事を公開した。注目すべきは、クローンに別名をつけたりオリジナル作品として偽装したりした場合でも制限が発動するという点だ。AnthropicはClaude Codeのシステムプロンプトに制限ルールを追加することで、AIコーディングアシスタントを用いたゲームクローン作成を事実上封じた。画像・動画に続き、生成AIによる知財侵害の戦線がいよいよソフトウェア領域にまで広がっている。
Claude Codeがゲームクローン作成をシステムプロンプトで制限
AnthropicのAIコーディングアシスタントClaude Codeが、既存のビデオゲームを模倣・複製するタスクをブロックするようになった。Anthropicの社員であるAddy OsmaniがX(旧Twitter)で確認したところによると、Claude Codeのシステムプロンプトに2文が追加され、他者のゲームをクローンすることを防ぐ仕組みが導入された。
ここで言う「制限」はモデルの重みそのものを変更したものではなく、システムプロンプトによるポリシー制御である点に注意が必要だ。モデルの挙動をプロンプト水準で縛る手法は、実装コストが低い反面、後述するようにどこまで実効性を担保できるかという問題も残る。
Osmaniは、ClaudeをIP(知的財産)侵害に使用することはAnthropicの利用規約違反であると明言している。このルールはすでに数日前から有効で、クローンに別名をつけたり、オリジナル作品として偽装したりした場合でも制限が発動する。一方で、ユーザーが独自アセットを用いてオリジナルゲームやジャンルタイトルを制作することは引き続き可能だ。ただし、一部のユーザーからはオリジナルプロジェクトでも制限に引っかかるケースがあるとの報告も出ており、判定精度には依然として課題がある。
背景:AI製クローンの急増が引き金に
この方針変更の背景には、AIを使ったゲームクローンの爆発的な増加がある。ユーザーたちはAIコーディングツールを活用し、HaloやGTA Vice Cityといった有名タイトルの非公式ブラウザ移植版を大量に制作していた。
さらに拍車をかけたのが、**Reverse Engineer Anything**(REA)というツールだ。AIエージェントとリバースエンジニアリングを組み合わせ、ネイティブバイナリを可読な疑似コードに変換する機能を持つ。あるデベロッパーはこのREAを用いてAdobeのCreative Cloudアプリの一部を再現し、大きな話題を呼んだ。また、PlayStation 5もジェイルブレイクをきっかけにエミュレーターが急増するという事態に見舞われた。
こうした動きは、著作権法上の複数の論点と密接に絡んでいる。
- フェアユース(公正利用):米国著作権法107条に基づく例外規定だが、商業的複製への適用は一般に認められにくい
- トレードドレス:ゲームの視覚的・構造的アイデンティティは、著作権とは別にトレードドレスとして保護される可能性がある
- リバースエンジニアリングの合法性:米国では相互運用性目的のリバースエンジニアリングはDMCAの例外として一定の保護が認められるが、商業的クローン製造への転用は別問題だ
※編集部の考察:REAのようなツールがリバースエンジニアリングの敷居を劇的に下げたことで、これまで法的グレーゾーンとして黙認されてきた行為が「誰でもできる行為」に変わりつつある。この変化が既存の法解釈に与える影響は、今後の判例次第で大きく動く可能性がある。
画像・動画に続き、ソフトウェアへと拡大する知財問題
Osmaniは「After images and videos, the intellectual property battle is now spilling into software(画像・動画の次に、知財の戦いがソフトウェアに波及している)」と述べた。生成AIによる知財侵害の戦線は、テキスト・画像・動画を経て、いよいよコードという実行可能な成果物の領域に到達したことになる。
AIコーディングツールが実用レベルに達したことで、プログラミングの専門知識がなくても既存アプリケーションの複製が容易になりつつある。今回のAnthropicの対応は、ツール提供側がシステムプロンプトによるポリシーレベルで制約を設けるという方向性を業界に対して明示した点で意義がある。
ただし、システムプロンプトによる制限はあくまでソフトウェア的な制御であり、どこまで実効性があるかは不透明な部分も残る。Osmaniが「keep tweaking the rules(ルールを調整し続ける)」と述べているのも、現時点の対策が暫定的なものであることを示唆している。ゲームパブリッシャー側がプラットフォームに直接申し入れを行うケースが今後増えるかどうか、業界の動向が注目される。
詳細はAnthropic cracks down on game cloning in Claude Code after wave of AI-built knockoffsを参照していただきたい。