11月3日、Sebastian Castellanosが「Anthropic Warns Self-Improving AI Milestone May Be Imminent, As Claude Writes Over 90% Of Its Code.」と題した記事を公開した。ClaudeがAnthropicのコードベースへの貢献の90%以上を担っているという事実が、AnthropicのSEC提出書類によって明らかになった。同社は同書類の中で、AIによる再帰的自己改善(RSI)の閾値に近く到達する可能性を内部推計が示唆していると警告しており、「AIが自分自身を改良する」という局面が現実的な射程に入りつつある。
ClaudeがAnthropicのコードの90%以上を執筆
2026年9月時点で、ClaudeはAnthropicのコードベースへの貢献の90%以上を担っている。さらに、2026年第3四半期のエンジニア1人あたりの平均日次コード出力は、2024年水準の45倍以上に達した。ただし記事は明示的に補足しており、これらの数字はあくまでコードの量を測定したものであり、エンジニアリング生産性の等価な向上を示すものではない。また、測定方法や基準の詳細は書類内に開示されておらず、数字の解釈には留意が必要だ。
この事実が明らかになったのは、AnthropicがIPOに向けて2026年11月2日にSECへ提出した修正S-1/A申請書だ。S-1/Aとは株式上場前に提出が義務づけられる登録申請書の修正版であり、投資家向けにリスク要因や事業見通しを開示する法定文書にあたる。AnthropicはIPOを目指すにあたって、AI能力の急速な進展をリスク要因として同書類に記載した。TechCrunchが最初に報じたもので、将来モデルに関する内部予測として以下のように記載されている。
「当社の内部推計および将来モデルへの期待値(現行モデルではなく)は、当社のResponsible Scaling PolicyにおけるAI起因の劇的な進歩加速の定義を、近く満たす可能性があることを示唆している。」
現時点では、Anthropicの既存モデルはまだこの閾値を公式に超えていない。しかし投資家向けの法定開示文書にこの警告を明記したことは、同社が内部的にこの問題を切迫したリスクとして認識していることを示している。
RSI(再帰的自己改善)とは何か
再帰的自己改善(Recursive Self-Improvement, RSI)とは、AIが自分自身のより高度なバージョンの開発を支援することで、能力が指数関数的に向上していくプロセスを指す。AIの能力がある時点で研究者の理解や安全な制御を上回るペースで進歩しうる、という問題意識から注目されている概念だ。
AnthropicのResponsible Scaling Policyでは、RSIの閾値を「AIが競争力のあるコストで研究人員全体を代替するか、自動化された研究・エンジニアリングを通じてAI能力全体の進歩速度を2倍にすること」と定義している。個々の開発者の生産性を2倍にするだけでは足りない、より厳しい基準だ。
AnthropicがAI開発の進化を図示したもの。最終段階では、Claudeが独自にその後継モデルを構築・訓練・継続的に改善する再帰的自己改善の将来像を描いている。画像クレジット:Anthropic
人間の判断はまだ優位にある、が
Anthropicは研究論文When AI Builds Itselfにおいて、Claudeがソフトウェアエンジニアリング・実験・研究タスクを担うケースが増えていると説明している。ただし、研究目標の選定や広範な科学的判断においては、人間の研究者がまだ重要な優位性を持っていると明記している。
また、Anthropicは開発の加速が、安全性・アライメント・セキュリティ対策の実装速度を上回るリスクを警告している。同社はこれまでにも、重大な能力向上が起きた後になって初めてそれを認識したという事例があったことを認めている。
「スローダウンを呼びかけつつ、開発は続ける」矛盾
2026年9月、主要AI企業の幹部らがフロンティアAI開発の減速を呼びかけた。しかし各社はより強力なモデルの開発・リリースを継続している。画像クレジット:Emerald Book(AIガバナンスを専門とするシンクタンク)
Anthropic CEOのDario Amodeiは2026年9月にもRSIのリスクと開発ペース抑制の必要性を訴えていた。しかし同社を含む主要AI企業は、より強力なモデルの開発・リリースを続けており、業界全体として安全性と競争を天秤にかけた際の優先順位が問われている。
RSI閾値への到達は「現実的な射程」に入った
AnthropicはIPO前のリスク開示という公の場で、RSI閾値への接近を明記した。現状、同社はClaudeが意味のある人間の監督なしに自律的に次世代フロンティアモデルを開発することを安全に許可できる段階ではないとしており、開発プロセスに対する人間の制御を維持するための追加的なセーフガードの検討を進めている。
コードの90%超をAIが書き、エンジニア1人あたりのコード出力が数十倍規模に拡大しているという現実は、RSI閾値の定義である「研究人員全体の代替」や「AI能力進歩速度の2倍化」とは質的にまだ異なる。しかし同社自身が「近く満たす可能性がある」と投資家向け法定文書に記した以上、これはもはや遠い将来の仮説ではなく、現在進行形のリスク管理の問題として業界全体が受け止める必要がある段階に来ている。
詳細はAnthropic Warns Self-Improving AI Milestone May Be Imminent, As Claude Writes Over 90% Of Its Code.を参照していただきたい。

