10月30日、Phoronixが「PostgreSQL 19 Running Behind Schedule Due To AI/LLM Burden」と題した記事を公開した。この記事では、AI/LLMの活動増加によってPostgreSQL開発者の負担が増大し、PostgreSQL 19のリリースが遅延していることについて詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
PostgreSQL 19、例年より遅れてリリースへ
PostgreSQLは例年、毎年9〜10月に新しいメジャーバージョンをリリースしてきた。しかし今年のPostgreSQL 19は、早くとも11月以降にずれ込む見通しだ。原因として挙げられているのが、AI/LLMによるバグ報告やパッチの急増である。
PostgreSQL開発者のRobert Haasは、自身のブログ記事でこの遅延の背景を詳しく説明した。
AI/LLMが引き起こした"開発の詰まり"
Haasは遅延の要因を2つに整理している。
「まず、これほど多くのバグが報告されるようになったことで、修正に要する時間が増えた。LLMはパッチの草案を作成できるが、それらが常に正確だったり、PostgreSQLの標準に準拠しているわけではない。結局、人間がレビューしてコミットする必要があり、その人間が2025年から2026年の間に賢くなったわけでもない。
次に、リリースに含まれる内容をレビューするために使われるはずだった時間が、バックブランチ(過去バージョン)のセキュリティ問題やバグ対応に費やされた。その結果、v19をリリースする前に何をリバートすべきか判断するのに時間がかかってしまった。」
要約すると、AIが生成したパッチは"人間によるレビュー"を省略できないにもかかわらず、その量だけが増えたことで、限られた人的リソースが圧迫されたという構図だ。さらに、過去バージョンへのバックポート対応(セキュリティ修正などを旧バージョンに適用する作業)にもリソースが奪われ、v19自体の検証が後回しになった。
"バグ報告が増えること"は必ずしも良いことではない
一見すると、バグが多く発見されることはプロジェクトにとってプラスに見える。しかし今回の状況が示すのは、報告の量と開発者のキャパシティが釣り合わなければ、むしろリリースサイクルを乱すという現実だ。
LLMはコードを読み、それらしいバグレポートやパッチを大量に生成できる。しかしPostgreSQLのような歴史ある大規模プロジェクトには、コードの文脈やコミュニティのコーディング標準に対する深い理解が求められる。LLMが生成したパッチが「PostgreSQL標準に準拠していない」とHaasが指摘しているのは、まさにこの点だ。
PostgreSQLの開発コミュニティは、企業に雇用された開発者とボランティアが混在する構造であり、レビュー可能な人数には上限がある。AI活動による流入量の増加は、その上限を超えつつある。
詳細はNeonのブログも参照
今回のHaasによる説明の全文は、PostgreSQLのクラウドサービスを提供するNeonのブログ記事「Postgres 19 is late, and it's AI's fault」にまとめられている。PostgreSQL 19の具体的な変更内容や遅延の詳細が知りたい場合はそちらも参照されたい。
AI/LLMの普及が開発者の生産性を上げるという議論は多い。しかし今回の件は、OSSプロジェクトのメンテナ側に追加コストが転嫁されうるという、あまり語られてこなかった側面を示している。PostgreSQL 19の正式リリース時期は現時点では未定だ。
詳細はPostgreSQL 19 Running Behind Schedule Due To AI/LLM Burdenを参照していただきたい。