10月29日、Christine Seemanが「AI for everything besides coding」と題した記事を公開した。この記事では、コーディング以外の日常・業務場面でClaudeのチャットを10週間使い続けた実体験を、時間計測つきで検証した内容が詳しく記録されている。
筆者はエンジニアであり、仕事ではClaude Codeを終日使う。しかし「チャット」の使い方は別物だ。「検索してもうまく答えが見つからないとわかっている質問」を持ち込む場所として使っている。2025年8月15日〜10月25日の20件のチャット履歴を振り返り、コーディング以外でAIが本当に役立ったのかを検証した。
最も面白かった:質問を超えた答えが返ってきた
香水の値段を聞いたら、調香師の話になった。
最も手応えのあったチャットがこれだ。エルメスの香水「Un Jardin sur le Nil」の価格をFragranceXで調べ、「これが好きなら他に何を試すべきか?」と聞いた。返ってきたのはブランドの類似品リストではなく、調香師ジャン=クロード・エレナ(Jean-Claude Ellena)の作風の説明だった。
Un Jardin sur le Nilはエレナ特有の「水っぽく、グリーンで、軽い」スタイルの作品であり、そのスタイルに合致する6本をFragranceXの取り扱い品から提案してもらった。結果、「Le Jardin de Monsieur Li」3.3オンス(66.45ドル)と「Un Jardin sur le Nil」1.7オンス(71.87ドル)を購入。そのサイトで買ったこと自体、このチャットがなければなかった。
「perfumes like Un Jardin sur le Nil」で検索すればリスティクル(ランキング記事)が出てきただろう。しかし「自分がなぜその香水を好きなのか」の説明を得たことで、次の購入判断が楽になった。チャット時間は37分で、完全な「深掘り散歩」だったが、実際に購入まで至った。
もう一つ:「芳香剤を教えて」と言ったら、棚を見ろと言われた
猫3匹の家で、キッチンに猫缶の匂いが漂っていた。「最善の芳香剤戦略を教えて」と依頼し、「必要なだけ質問していい」と添えた。数往復の後、返ってきた答えは「芳香剤は最後のステップ」という診断だった。
匂いが温かい日に悪化する、明確な発生源がない──このパターンから「何かが臭いを吸収して放出し続けている」と推定。候補はリサイクルゴミ箱の入った食器棚(すすいだ缶に残った魚油が素木に染み込んでいる可能性)と、マイクロチップ対応フィーダーのパッキン(一度も外したことがなかった)。
さらに空気清浄機の提案を求めると、一度Austin Air HealthMateを挙げた後に自己訂正した。「それは臭い専用モデルで、カバー範囲が約22平方メートル。オープンフロアプランには2台のAlen BreatheSmart 75iの方が向いている」と。エッセンシャルオイルの拡散器が猫に有害な点も警告している。
実際に棚を確認したら仕上げ済みで塗装は不要だった。ゴミ箱と棚を掃除し、重曹を入れただけで改善。芳香剤は結局買わなかった。
時間はどれだけ節約できたか
計測できたチャットの比較がこちらだ。
| タスク | チャット内 | 通常 |
|---|---|---|
| 1週間のSlack消化 | 23分 | 1〜2時間 |
| コンサートプログラム作成 | 3分 | 45分 |
| 開演前スピーチ | 44分 | 1時間 |
| 1年分のピアノ月謝リマインダー | 8分 | 20分 |
| パッキングリスト | 約20分 | 20分 |
| 夕食の置き換えとAdiリスト(※後述) | 46分 | 30〜45分 |
10週間で節約できた時間は約1.5〜3時間。大半はSlack消化とコンサートプログラムの2件から生まれた。筆者自身、「まあ、どちらとも言えない(Meh, kinda.)」と評している。
表中の「Adiリスト」とは、筆者が利用するフィットネスアプリ「Adi」(Adidas Runningアプリの略称)上でのトレーニング計画リストを指す。夕食の置き換えレシピ検討と合わせて一つのチャットセッションで処理したタスクだ。
20件全体の傾向:香水以外も実用に足る
香水と芳香剤のエピソードは筆者が特筆するものだが、残る18件にも実用的なパターンが見られる。Slack消化・スピーチ草稿・リマインダー作成といった「構造化された文章を素早く仕上げる」タスクでは一貫して時間短縮が確認できた。一方、パッキングリストのように「通常作業とほぼ変わらない」ケースもあり、すべてのタスクで劇的な効果が出たわけではない。筆者が「どちらとも言えない」と評した背景には、この凸凹が正直に反映されている。
※編集部の考察:AIチャットを日常タスクに活用する試みはエンジニアを中心に広がっており、Simon Willison氏やEthan Mollick氏のブログでも類似の実験的レポートが公開されている。本記事が際立つのは「時間計測」と「成果物への変換」を軸に据えた実証的な記述スタイルにある。
浮かび上がったパターン
20件を振り返って筆者が気づいた使い方の共通点は以下だ。
- 制約を最初に伝える:「ショートパンツは履かない」「パルメザンがある」「猫3匹」「夜遅くにPCを開かない」──制約があるから、的外れな質問をしていることに気づいてもらえる。
- 返答を「素材」として扱う:「もっと短く」「面白く」「箇条書きで」「普通のカップの単位で」と編集していく。
- 成果物として終わる:メール、カレンダー登録、Slackの下書き、スマホのトラッカー、棚に置いたボトル。答えで終わらず、何かに変換させる。
- 一日の端で使う:コンサートプログラムは7時41分、夕食案は8時03分、スピーチの最終箇条書きは開演1時間前の18時58分に依頼した。
筆者の結論は端的だ。「最も役立ったチャットは、自分が本来聞くべき質問に答えてくれたものだった。どんな検索もそこには届かない」。
詳細はAI for everything besides codingを参照していただきたい。