10月31日、SiliconAngleが「Google X co-founder Sebastian Thrun raises $130M for AI engineering startup Dulo」と題した記事を公開した。Google X共同創設者のSebastian Thrunが立ち上げたAIエンジニアリングスタートアップ「Dulo」が1億3000万ドルの資金調達に成功したことを伝えている。
Google XとWaymoの立役者が「ハードウェア設計AI」に挑む
Duloは、Sebastian ThrunとAdrian Aounが今年初めに共同創業したスタートアップだ。
Thrunは自動運転の黎明期を支えた人物として知られる。2007年にGoogleへ入社する前は、自律走行車の先駆けとして評価されるStanleyの開発を主導した。Google入社後はX研究所(Google X)を共同創設し、後にWaymoへと発展する自動運転プログラムを率いた。WaymoはGoogle Xの自動運転プロジェクトが独立・発展したものであり、Thrunはその立ち上げを主導した中心人物の一人だ。Google Brainの設立にも関与しており、現在のGoogle DeepMindへつながる流れを作った人物でもある。その後、GoogleのLarry Pageから出資を受けてフライングタクシーのスタートアップも創業している。
共同創業者のAounは、2013年に自然言語処理スタートアップ「Wavii」をGoogleへ3000万ドル超で売却した実績を持つ。PinterestへのエンジェルLPとしても知られる。
資金調達の顔ぶれが異様に豪華
今回の1億3000万ドルの調達ラウンドには、以下の投資家が名を連ねている。
- Eric Schmidt(元Google CEO)
- Ram Shriram(Googleの創業期からの初期投資家の一人)
- Marc Benioff(Salesforce CEO)
- John Doerr(著名VC。Kleiner Perkinsの顔)
- その他、半ダース以上のスタートアップファンド
バリュエーションは非公開だ。
これだけのシリコンバレーの重鎮が集まったラウンドは、アーリーステージのスタートアップとしては異例だ。Thrunのキャリアへの信頼と、ハードウェア設計AI市場への期待の高さが背景にあると見られる。製品の詳細がほぼ未公開の段階でこれほどの顔ぶれが集結した事実は、それ自体が市場の熱量を示すシグナルとも読める。
ハードウェア設計に特化したファンデーションモデル
Duloの公式サイトには「ハードウェア設計タスクに最適化したファンデーションモデルを開発中」と記載されている。目指すのは「lightspeedでの製造(manufacturing at lightspeed)」だ。
具体的に何を自動化するかは明示されていないが、記事では有力な候補としてエンジニアリングシミュレーションの最適化が挙げられている。製品を製造する前に設計上の欠陥を検出するために使われるシミュレーションを、AIで高速化・効率化するという方向性だ。また、Thrunは8月のインタビューでロボティクスも注力領域の一つとして挙げており、産業用ロボットや自動運転車の開発加速も視野に入っている可能性がある。
現時点では製品の詳細が乏しく、読者にとって具体的なユースケースを描きにくい段階にある。ただ、ハードウェア設計のサイクル短縮は製造業全体の課題であり、AIによるシミュレーション自動化の潜在需要は大きい。競合各社が数億ドル単位の調達を続けていることがその傍証となっている。
競合は「Bezosが共同創業に関与する120億ドルスタートアップ」
ハードウェア設計AIの分野にはすでに複数のプレイヤーが存在する。
最大の競合として記事が挙げるのがPrometheusだ。Amazon創業者のJeff Bezosが共同創業に関与するエンジニアリングAIスタートアップで、今年120億ドルの資金調達を完了している。Duloと同様にロボットなどの複雑なハードウェアシステムの開発にAIを活用する方針だ。Prometheusの調達規模はDuloの約90倍にのぼり、リソース面での差は歴然としているが、Thrunのトラックレコードと豪華な投資家陣がDuloの競争力の根拠となっている。
他にも、シミュレーションの「メッシング(meshing)」フェーズ――製品の設計図を小さな3Dシェイプの集合体に変換するプロセス――を自動化するVinci4D(2億5000万ドル調達)や、偏微分方程式の計算高速化に取り組むPhysicsX(3億ドル調達)なども資金を集めており、ハードウェア設計AI領域全体への投資が急拡大していることがわかる。
Duloはまだ製品の詳細をほぼ公開していない段階だが、Thrunのキャリアと投資家の顔ぶれが先行して注目を集めている形だ。
詳細はGoogle X co-founder Sebastian Thrun raises $130M for AI engineering startup Duloを参照していただきたい。