11月1日、MakeUseOfが「Google says Gemini 4 Argon is the best coder alive, so I put it up against Claude Opus 5.5」と題した記事を公開した。「理想のノートアプリを作ってほしい」という曖昧なプロンプト一文だけを与えたところ、Gemini 4 ArgonはCSの学生でテックジャーナリストという自己紹介を読み取り、指示していない機能を7つ以上自律的に実装して納品してきた。「明示的に頼んだ機能すら実装しない」として繰り返し批判されてきた過去のGeminiとは、質的に異なる挙動だ。
Googleが「最強のコーダー」と豪語したGemini 4 Argon
2026年9月30日、Googleは最新フロンティアモデル「Gemini 4 Argon」を発表し、複雑なソフトウェアエンジニアリングタスクにおけるトップクラスの性能を主張した。Gemini 4 ArgonはGoogleのGeminiファミリーにおける現行最上位モデルであり、コーディングベンチマークでの高スコアを根拠にGoogleが「史上最高のコーダー」と位置づけている。
MakeUseOfのライターは以前からGeminiのコーディング性能に何度も失望してきた経緯がある。Chrome拡張機能開発、スクリーンショットからのアプリ再現、ポートフォリオサイト構築、ノートアプリ開発など、複数の実験を通じてGeminiには一貫した弱点があった。それは「とにかく早く終わらせようとする」こと。機能を未完成のまま放置し、動作確認もせずに「完成」と宣言するケースが繰り返されていた。ある実験では、400本以上の記事すべてを含めるよう明示的に指示したにもかかわらず、7本しか掲載されないポートフォリオサイトを納品してきた。
これは特定のモデルだけの問題ではなく、複数世代にわたって同様の傾向が確認されている。
今回のテスト:同じ条件でノートアプリを作らせる
Argonの実力を測るため、以前Geminiが失敗した実験と同じ課題を使った。Claude Code(Opus 5.5) と Antigravity(Gemini 4 Argon向けのコーディングエージェントツール) の両方に、「理想のノートアプリを作ってほしい」という意図的に曖昧なプロンプトだけを与え、どれだけ自律的に補完できるかを見るテストだ。
なお、今回の検証で採用された「vibe coding」とは、詳細な仕様を渡さず自然言語の曖昧な指示だけでコードを生成させる手法を指す。エージェントの文脈理解力と自律的な設計判断が問われるテスト方式として注目されている。
- 両ツールともMediumエフォートレベルに設定
- コマンドやファイル変更のたびに承認を求めないよう設定を調整
- プロンプトには「コンピュータサイエンスの学生でテックジャーナリストである」という自己紹介のみを含め、具体的な機能リストは渡さなかった
Gemini 4 Argonが変わっていた
Argonはこれまでのモデルと明らかに異なる挙動を示した。
最初に目についたのはそのペースの変化だ。急がずに開発環境を確認し、使用技術を選定し、アプリの構造を検討してから実装に入った。最終的にはClaude Codeより約20分早くビルドを完了したが、プロセスを急いだわけではない。
さらに驚いたのはプロンプトの解釈だ。「CS学生でテックジャーナリスト」という情報を単なる背景情報として扱わず、その人物像に合わせてアプリ全体を設計してきた。Argonが独自判断で実装した機能は以下の通りだ:
- 無限キャンバス(ブレインストーミング用)
- Obsidianライクなナレッジグラフ(ノート間のリンク可視化)
- 実行可能なコードブロック(プログラミング用)
- スペーシング反復フラッシュカード(学習用)
- ファクトチェック台帳(記事の主張・ソース管理用)
- Markdownエディタ(複数表示モード対応)、PDF対応・引用リンク、ローカルVault(Markdownファイル保存)
これらはいずれも指示していない機能だ。以前のGeminiが「明示的に頼んだ機能すら実装しない」状態だったことを考えると、大きな転換である。
実際に動かしてみても期待を裏切らなかった
完成したアプリ「Folio」は、デイリーエディトリアルデスク、クイックキャプチャ受信トレイ、ストーリーカード、コマンドパレット、ファクトチェック台帳とPDFソースパネルの統合表示、Split Liveビュー(Markdown原稿とプレビューの並列表示)など、UIも含めて機能した状態で納品された。
記事の著者は「現実が約束と一致した」と表現している。これまでのGeminiとは質的に異なる結果だった。
Claude Opus 5.5との比較:どちらが「意図を読む」か
今回の対決で軸となったのは「どちらが速いか」ではなく「どちらが意図を深く読んで補完できるか」だ。この観点での結果は明確に分かれた。
Argon(Antigravity) は前述の通り、曖昧なプロンプトからユーザー像を推論し、指示にない機能群を自律的に設計・実装した。ビルド完了もClaude Codeより約20分早かった。一方、Claude Opus 5.5 は着実な実装力を見せたものの、プロンプトに書かれていない機能を独自判断で追加するという挙動はArgonほど顕著ではなかった。記事の著者は、曖昧な指示への補完能力という軸においてArgonが上回ったと評価している。
ただし、コードの堅牢性・エラー処理の精度・長期的なメンテナンス性といった軸については今回のテストでは検証されておらず、「vibe codingにおける自律性」という単一の切り口での比較である点は留意が必要だ。
コーディングエージェントの選定基準として「ベンチマーク上のスコア」だけでなく「実際のvibe coding(曖昧な指示からの補完能力)」を重視するエンジニアにとって、Argonの今回の挙動は一つの判断材料になる。
詳細はGoogle says Gemini 4 Argon is the best coder alive, so I put it up against Claude Opus 5.5を参照していただきたい。