11月1日、The Decoderが「Anthropic's watermark rollout leaves a loophole on two older Claude models」と題した記事を公開した。AnthropicがEU AI Act対応として旧Claudeモデルへウォーターマークを拡大展開する中、特定の旧モデルではサンプリングパラメータを変更するだけで検知機能を回避できる抜け穴が存在することが明らかになった。
3つのパラメータのいずれか1つで回避できる抜け穴
今回のアップデートで注目すべき制約がある。Claude Opus 4.6(Anthropicが現時点でのベストなライティングモデルと位置づけるモデル)とClaude Sonnet 4.6(Opus 4.6の下位に位置するテキスト生成モデル)については、ウォーターマークが機能するのはtemperature・top_p・top_kの3つのサンプリングパラメータがすべてデフォルト値のままの場合に限られる。これらは生成時の単語選択のランダム性を制御するパラメータで、3つのうちいずれか1つを変えるだけでウォーターマークが付与されなくなる。
AnthropicはAPIユーザーへのメール内でこの制約を明示し、「コンプライアンス目的でウォーターマークに依存している場合は、これらの設定をデフォルトのまま維持すること」と警告している。
Opus 4.6はAnthropicの現時点でのベストなライティングモデルとされており、後継にあたる最新のOpus 5.5をも上回る評価を受けているモデルだ。文章生成用途で最も使われやすいモデルに、実質的な抜け穴が残っている格好となる。
一方、新たにウォーターマーク対象に追加されたClaude Mythos 5(大規模な創作・推論タスク向けに位置づけられるモデル)とClaude Opus 4.7については、サンプリングパラメータに関係なくウォーターマークが適用されるとみられる(メール内に同様の注意書きがない)。
なぜ今、旧モデルへのウォーターマーク展開なのか
Anthropicが旧モデルへの遡及対応を急いでいる理由はEU AI Actの12月期限だ。2026年8月2日以降にリリースされたモデルには初日からウォーターマークが組み込まれているが、それ以前のモデルについては段階的に適用している。
ウォーターマークはモデルレベルで埋め込まれているため、Amazon Web Services・Google Cloud・Microsoft Foundryなど、これらのモデルをホストするすべてのプラットフォームで有効になる。ユーザー側でオフにすることはできない。なお、Amazon Bedrockへの展開は数日遅れる可能性があるとされている。
技術的な手法としては、GoogleDeepMindの**SynthIDテキスト方式**の派生実装を採用している。単語選択のランダム性を微調整することで統計的に検出可能なパターンを埋め込む仕組みで、意味・品質・可読性には影響しないとAnthropicは主張している。追加トークンや追加コストも発生しないという。
競合他社の状況を見ると、OpenAIは2026年10月に独自ウォーターマークシステム「textGrain」を展開したが、EUのChatGPT・Codexユーザーに対してデフォルト有効にするに留まり、APIユーザーは世界中でオン/オフを切り替えられる(デフォルトは無効)。Anthropicのアプローチはより強制力が強い。
ウォーターマークは本当に品質に影響しないのか
「品質に影響しない」というAnthropicの主張には異論もある。ブロガーのJohn Gruberは、厳密には同義語でも意味がまったく同じ言葉は存在しないと指摘し、ウォーターマークキーに基づいて単語を選ぶ以上、意味的な精度の劣化は避けられないと論じている。
法律系メディアのArtificial Lawyerは別の角度から懸念を示している。AI利用を禁じているクライアントを抱える法律事務所では、ウォーターマークの存在が発覚するリスクがある。また、複数のAIが生成したテキストが1つのドキュメント内に混在する場合、ウォーターマークが重なり合うことで複雑な問題が生じる可能性も指摘されている。
Anthropicはウォーターマークの検証用にDetection APIをプライベートプレビューで提供しており、詳細はコンテンツラベリング情報ページに掲載されている。
詳細はAnthropic's watermark rollout leaves a loophole on two older Claude modelsを参照していただきたい。