10月31日、The Newsが「Nvidia in talks to back Nscale's $45bn Anthropic deal」と題した記事を公開した。NvidiaがGPU販売にとどまらず、AIクラウド企業のデータセンター建設そのものに債務保証として資金コミットしようとしているという内容で、ハードウェアベンダーとしてのNvidiaのビジネスモデルが根本的に変容しつつある実態を伝えている。為替レートを1ドル=149円換算で示せば、450億ドルは約6.7兆円に相当する規模の話だ。
Nvidiaのビジネスモデル変容という核心
NvidiaがAIクラウド企業Nscaleに対し、数十億ドル規模の債務保証を行う交渉を進めている。対象は、米国ウェストバージニア州に建設予定の460MWのデータセンターだ。460MWは大型原子力発電所1基分に近い電力量で、AIモデルのトレーニングやインファレンスに必要な電力需要の急拡大規模を象徴している。
注目すべきは、NvidiaはすでにNscaleの投資家の一社でもある点だ。GPUを売る相手に投資し、さらにそのインフラ建設に債務保証まで提供しようとしている。これはハードウェアベンダーとしての従来の立場を大きく超えるものであり、Nvidiaがエコシステム全体の「インフラ保証人」へと役割を拡張しようとしていることを示している。
保証の具体的な仕組みとして報じられているのは、「残余価値保証(residual value guarantee)」という形態だ。建物そのものに対する保証であり、Nscaleが建設費の支払いを履行できなくなった場合、Nvidiaが一時的に介入し、新たな買い手や入居者の確保を支援するというものである。
なお、交渉はまだ合意に至っておらず、保証額も非公開。条件は変更される可能性があると報じられている。NscaleとNvidiaはいずれもコメントを避けた。
Nscaleとはどのような企業か
Nscaleは、AIインフラの設計・建設・運営を手掛けるUK(英国)拠点のAIクラウド企業だ。大規模なGPUクラスタを備えたデータセンターをAI企業向けに提供することを主な事業としており、近年急成長を遂げてIPOを準備している段階にある。日本ではまだ知名度が低いが、AnthropicやNvidiaといった主要プレイヤーとの大型契約を複数抱える企業として、AIインフラ市場で存在感を高めている。
今回の焦点となっているのは、NscaleがAnthropicと2026年8月に締結した総額450億ドルの賃貸契約だ。元記事はFinancial Timesの報道を引用しており、同報道によればこの契約はNscaleの受注残高1,030億ドルの40%超を占めるという(本数値はFinancial Times報道経由の引用であり、TechFeed編集部が独自に確認したものではない)。Anthropic側にとっては、AIインフラへの大規模な長期コミットメントを意味する。
財務の不透明感とIPOの雲行き
Nscaleの財務状況は、この大型契約とは裏腹に厳しい。IPO申請書類によれば、最初の建物を建設・設備するための資金はまだ確保されていない。もし資金調達が期限までに完了しなければ、Anthropicは契約から離脱できる条項が設けられている。さらに、両社は第2棟に関する450億ドル規模の別の契約についても協議中だという。
財務面でも課題は深刻だ。元記事がFinancial Timesの報道として引用している数字によれば、Nscaleは2026年前半に売上1億4,100万ドルに対して10億ドルの損失を計上している。この数値はFinancial Times報道経由の引用であり、TechFeed編集部による独立した検証を経たものではない点に留意されたい。
IPO面でも状況は変化している。Nvidiaをはじめとするステークホルダーがより厳しい条件を求めていることを受け、Nscaleは修正IPO目論見書の提出を先送りにした。上場時期は11月から12月にずれ込む可能性が高まっており、当初目標としていた300〜350億ドルの評価額を下回るリスクを一部のバンカーが懸念しているという。
AIクラウド企業全般にとっても逆風が強まっており、CoreWeaveやNebiusといった競合他社を含め、複数のAIクラウド企業が社債市場でのファイナンスに困難を抱えている状況が元記事では報じられている。ただしこの点については、元記事以外の裏付け報道を参照することを推奨する。
現場でも問題が発生
財務上の課題に加え、物理的な問題も浮上している。建設中の「Monarch Compute Campus」では、Nscaleの敷地からの排水が隣接住宅に流入する洪水被害が発生し、9月に3日間の工事停止命令が出された。不適切な雨水管理を理由とした違反通知は計10件に達しているという。同社に近い情報筋は、異常気象が原因だと説明している。
Nvidiaが今回のような債務保証に踏み込む背景には、AIインフラへの巨大な資本需要と、その調達の難しさがある。GPUを売り続けるためには、顧客がデータセンターを建てられる状態を維持する必要があり、Nvidiaにとっても無関心でいられない構造的な事情がある。ただし、今回の交渉が成立するかどうかは現時点では不透明だ。
詳細はNvidia in talks to back Nscale's $45bn Anthropic dealを参照していただきたい。