11月1日、Sebastian Castellanosが「New NVIDIA UEFI GPU Unlocker Brings Up To 75% Higher AI Compute Performance To RTX 20, 30 & 40 Series GPUs On Windows」と題した記事を公開した。この記事では、NVIDIAのGeForce RTX 20/30/40シリーズGPUのTensorコア性能を最大75%向上させる非公式ツール「NV UEFI Unlocker」について詳しく紹介されている。
VBIOSを書き換えずにTensorコアを解放する
GitHubユーザーphysicsdolphinが開発したオープンソースツール「NV UEFI Unlocker」は、NVIDIAのグラフィックスドライバが初期化される前にUEFIレベルでGPUの動作を変更する。ここが重要な点で、VBIOSの恒久的な書き換えも、ドライバへのパッチ適用も不要だ。変更はOSが起動した時点で有効になり、完全に電源を切ると元に戻る一時的なものである。
これは以前からLinuxカーネルモジュールとして存在していたGPU Unlock(開発者: Zagitta)の流れを汲む取り組みだ。GPU UnlockはRTX 30シリーズのFP16/BF16演算においてTensorコアのスループットをほぼ2倍にできることを示し、AIイメージ生成ベンチマークでも最大60%近い改善を記録していた。ただし実装はLinux専用だった。NV UEFI UnlockerはそれをWindows・Linux・その他UEFIブート可能なOSに対応させ、対応世代もRTX 20/30/40シリーズに拡大した。
NVIDIAがGeForce向けにTensorコアを制限している背景
NVIDIAはコンシューマー向けのGeForceシリーズとデータセンター・プロフェッショナル向けのQuadro/Tesla(現A/Hシリーズ)を明確に製品ラインとして分けており、GeForce向けではドライバレベルでTensorコアの一部動作モードや精度オプションを意図的に制限している。これは製品間の差別化とライセンス管理の観点から行われているとされており、ハードウェアとしてのTensorコア自体は同一シリコンに搭載されていながら、ソフトウェア的に機能が封じられているケースが存在する。NV UEFI Unlockerはこの制限をグラフィックスドライバの初期化よりも前の段階、すなわちUEFIレイヤーで迂回することで、本来のハードウェア性能を引き出す仕組みだ。
実測値:RTX 2070で最大75%、RTX 4060 Laptopで65%向上
早期ベンチマーク結果として記事が挙げているのは以下の数字だ。
- RTX 2070:FP32蓄積の行列積演算(GEMM)で 36 TFLOPS → 約60〜63 TFLOPS(67〜75%向上)
- RTX 4060 Laptop GPU:FP16演算スループットで 29.89 TFLOPS → 49.33 TFLOPS(65%向上)
RTX 2070の数値はFP32蓄積GEMMとして計測されたものだ。RTX 20シリーズ(Turing世代)のTensorコアは第2世代にあたり、FP16入力・FP32蓄積のmixed-precision演算をハードウェアでサポートしている。この計測結果はTuringのTensorコアがソフトウェア制限なしに動作した場合の性能を示すものとして読む必要があり、単純なFP32 CUDAコアの理論値とは異なる文脈であることに留意されたい。
公式の互換性マトリクスによれば、RTX 20/30/40シリーズは基本対応だが一部モデルで問題あり、GTX 16シリーズは実験的サポート、RTX 50シリーズは非対応となっている。
GTX 16シリーズについては補足が必要だ。GTX 1660・1650などのTuring世代GPUながら、RTXの名称を持たないこれらのモデルはTensorコアを搭載していない。Turing世代であってもTensorコアはRTX製品ラインにのみ実装されており、GTX 16シリーズでの「実験的サポート」はTensorコアの解放とは異なる文脈での動作確認を指す可能性が高い。利用を検討する際は自分のGPUモデルのスペックを事前に確認することを強く推奨する。
これらの結果はr/overclockingサブレディットでも話題を集めており、手元のGPUで試した報告が複数投稿されている。
導入手順と注意点
インストールは公式ドキュメントに従い、UEFIアプリケーションと必要なファームウェアコンポーネントを含むブータブルUSBドライブを作成してブートするだけだ。ツールが変更を適用した後、自動的にOSへ制御を引き渡す。
ただし以下の前提条件がある。
- Secure BootをOFFにするか、EFIアプリケーションを信頼済みに設定する必要がある
- RTX 20シリーズのユーザーはGSPファームウェアモードを事前に有効化する必要がある
また、理論上のスループット向上がそのまま実用上の速度向上に直結するわけではなく、ワークロードの特性・メモリ帯域・電力制限に大きく依存する点は留意が必要だ。ゲーミング性能やDLSSの実行速度が改善するという証拠は現時点では確認されていない。
まとめ
NV UEFI Unlockerは、手元のRTX世代GPUでAI推論・学習ワークロードの性能を手軽に引き出したいユーザーにとって現実的な選択肢になりうるツールだ。永続的な変更を加えないという設計上の判断は、リスクを抑えつつ試せる点で実用的である。一方でプロジェクトはまだ実験的段階であり、全ての構成で動作するとは限らない点は注意が必要だ。
詳細はNew NVIDIA UEFI GPU Unlocker Brings Up To 75% Higher AI Compute Performance To RTX 20, 30 & 40 Series GPUs On Windowsを参照していただきたい。

