10月31日、The Decoderが「Google Deepmind creates a global map of forests with satellite data and AI」と題した記事を公開した。Google DeepMindと世界資源研究所(WRI)が衛星データとAIを用いて世界初の全球森林タイポロジーマップ「ForTy」を構築したプロジェクトの詳細が紹介されている。
「木が生えている」だけでは不十分——EU規制が生んだ地図
衛星画像から「木がある」かどうかを判定する技術はすでに存在する。問題は「その木がどんな森か」を区別することだ。
ForTy(Forest Typologyの略)は、地球上の全陸地を2020年時点で以下の6クラスに分類する:
- 原生林(Primary forest)
- 自然再生林(Naturally regenerating forest)
- 植栽林(Planted forest)——自然由来の樹種を人為的に植えて再生させた森林
- 人工林(Plantation forest)——商業生産を目的として単一樹種等を集中的に植えた森林
- 樹木作物(Tree crops)——アブラヤシ、ゴム、カカオなど
- その他の土地
「植栽林(Planted forest)」と「人工林(Plantation forest)」はいずれも人が植えた森だが、ForTyでは目的・管理形態・生態的性質の違いに基づいて別クラスとして扱っている点に注意が必要だ。記事中で略称「プランテーション」と記す場合は、後者の「人工林(Plantation forest)」を指す。
空間解像度は10メートル。欧州委員会の既存データセットが一部地域のみをカバーするのに対し、ForTyは文字通り全球をカバーする初めてのマップだとされる。
このプロジェクトを推進した主な動機はEU森林破壊防止製品規制(EUDR)だ。EUDRは2020年12月31日以降に森林が伐採・劣化した土地由来の製品の流通を禁じており、企業はサプライチェーンのリスク評価に「2020年時点でその土地がどう使われていたか」という基準点を必要とする。アブラヤシやカカオの農園は農地扱いになるため、原生林から転換された農地かどうかの判別が法的に重要になる。
地図は各1km²グリッドに最も多いクラスを表示。基礎データは10m解像度 | Image: Google DeepMind
3段階モデルで「見た目が似た森」を分類する
技術的に難しいのは、森林の種別が「今どう見えるか」でなく「その土地の歴史」に依存する点だ。長年放置された人工林(Plantation forest)は衛星から見ると原生林と区別がつかず、逆に最近伐採されたばかりのプランテーションは裸地に見えても定義上は「森林」に数えられる。
ForTyはGoogle DeepMindのAlphaEarth Foundationsモデル上で動作する。このモデルは光学衛星画像・レーダー・レーザースキャン・気候シミュレーションを統合し、各10m×10mピクセルをコンパクトな特徴ベクトル(embedding)に圧縮する。AlphaEarth Foundationsは2025年7月に「仮想衛星」として公開されたモデルで、ForTyはそのembeddingを活用した初の大規模マッピングプロジェクトのひとつだ。
分類パイプラインは3段階で構成される:
- 第1モデル:検証済みサンプルから学習した画像認識モデルで初期分類
- 第2モデル:第1モデルの予測に樹高・建物・森林損失データを加えた拡張学習データで再訓練
- 第3モデル:複数年のデータを横断して外れ値を平滑化
さらにGoogle Geminiが旧トレーニングデータをEUDRの定義に適合させる作業を支援した。
アクティブラーニングの補正ラウンドでは専門家が約4万3,000件のサンプルを追加。ヨーロッパのブドウ園が樹木作物に誤分類されていたケース、中央アメリカの自然松林が人工林(Plantation forest)と誤ラベルされていたケース、アフリカやインドネシアで見逃されていたアブラヤシなどが修正された。
3つのモデルを順次学習し、誤りの多い地域に集中したアクティブラーニングでデータを改善 | Image: Google DeepMind
精度は「全体90%」だが、EUDRで最重要な区分が弱い
8,190サイトを2名の専門家が検証した結果、全体正解率は**90.2%**。ただしこの数字は判定が容易な「その他の土地」クラスに大きく引き上げられており、クラスごとの精度にはかなりのばらつきがある:
- 原生林:89%を正確に識別
- 人工林(Plantation forest):正解率約60%。かつ「人工林」と分類された面積の約4分の1〜3分の1が誤分類
- 樹木作物・植栽林(Planted forest):検出率は約50%、「植栽林」とラベルされた地域の3分の1が誤り
まさにEUDRで区別が求められるカテゴリで精度が低い。それでも欧州委員会がEUDR向けに作成したマップと比較すると、森林/非森林分類で**95.5% vs 93.6%、森林タイプ分類で90.9% vs 87.8%**とForTyが上回る。ただしこの比較は元記事が示す数字に基づくものであり、評価に用いたデータセットや検証条件がForTyと欧州委員会マップとで完全に同一かどうかは元記事から明示されていない。数字の解釈には一定の留保が必要だ。
数字で見る世界の森林
ForTyによる推計では、世界の森林面積は約41億ヘクタール。うち自然林が約39億ヘクタール、原生林は約20億ヘクタールとされる。植栽林(Planted forest)は約2億5,000万ヘクタール、樹木作物は主にアジアに集中して約2億ヘクタールだ。
地域ごとの誤差も大きく、アジアではロシアの針葉樹林で原生林を約2億ヘクタール過大評価、アフリカでは乾燥した疎林やサバンナを森林として拾いきれず約9,400万ヘクタールを過小評価している。
一方でスウェーデンの結果は興味深い。スウェーデンの森林面積の約3分の2は人工林(Plantation forest)であり、自然林は全体の約5分の1にとどまる。樹木被覆自体は豊富でも、生物多様性の観点で重要な自然林の割合が低い可能性をForTyは示唆している。
データとコードは公開済み
マップ、分類レイヤー、テストデータはいずれもCC BY 4.0ライセンスで公開されており、Google Earth Engine上でも利用できる。コードはGitHubのGeeFlowおよびJEOリポジトリで公開されている。
各クラスの確信度スコアも提供されているため、ユーザーは独自の閾値を設定して分類を調整できる。ForTyはGoogle DeepMindが進める「Earth AI」イニシアチブの一部であり、同イニシアチブは2025年秋にGeminiと統合され、洪水・干ばつ・アオコの検出などにも活用が広がっている。
詳細はGoogle Deepmind creates a global map of forests with satellite data and AIを参照していただきたい。

