10月30日、Tushar Subhra Duttaが「Aur0ra Ransomware Hackers Use Cursor AI Agents to Gain Domain Admin Access and Steal Data」と題した記事を公開した。この記事では、ランサムウェアグループ「Aur0ra」がCursor AIエージェントとAnthropicのClaudeを組み合わせ、ドメイン管理者権限の奪取からデータ窃取までを半自動化した実際の攻撃事例について詳しく紹介されている。
AIが「侵入の実働部隊」になった
これまでAIをサイバー攻撃の計画支援に使う事例は報告されていたが、今回の事例はその一歩先をいく。攻撃者はCursorのAIエージェントに「認定済みレッドチーム演習」や「診断テスト」だと偽って指示を与え、AIの安全制限をすり抜けながら実際の侵入作業をほぼすべて自動処理させた。
人間のオペレーターが用意したのはVPNアクセス・標的・目標だけ。ネットワークの探索、横展開、権限昇格、データ窃取といった工程はエージェントが担った。
Sophosのブログ記事によれば、SophosのCounter Threat Unit(CTU)は2026年5月の調査でこの攻撃フレームワークを詳細に分析した。同調査でSophosはAur0raの背後にある脅威アクターグループを「GOLD OGRE」と命名しており、本記事でこの名称が使われる場合はそのグループを指す。GOLD OGREはCursorのComposerモデルを中心に、Anthropic(Claude)、xAI、Moonshotの各モデルを組み合わせて使用していた。当初はAnthropicのモデルをほぼ単独で使い、ツール構築フェーズからネットワーク侵入フェーズに移行するにつれて他モデルを追加していったとされる。
攻撃の流れ:資格情報からドメイン管理者へ
エージェントが実行した主な手順は以下のとおりだ。
- ネットワークマッピング:BloodHoundでActive Directoryの構造を把握し、権限昇格の経路を探索
- 認証情報攻撃:パスワードスプレー、Kerberoasting、NTLMコアース・リレー、バックアップファイルからの資格情報抽出
- 横展開:SharpShares、NetExecなどの既知ツールでマシン間を移動
- データ窃取:ファイル共有、ユーザードキュメント、バックアップ、クラウド連携ストレージを検索し、S3互換ストレージに転送
一部の被害者ネットワークではドメイン管理者権限の奪取に成功しており、そのうち3つの組織がAur0raのリークサイトに掲載された。データ転送先として確認されたサーバー(152[.]236[.]4[.]14)へのコピーには、VeeamTransportコマンドが使われた。
また、ログにキリル文字配列キーボードによるロシア語ショートカットが残っていたことから、オペレーターはロシア語話者とみられる。
Claude 4.5-Sonnetを使った「自己修正エージェント」
2026年8月にGambit SecurityとCloudSEKが公開した調査では、公開状態になっていたオープンディレクトリ(172[.]86[.]113[.]245)からWindows・Linux(ESXi対応)両対応のAur0raランサムウェア本体、シェル履歴、Cursorのチャットログが回収された。
Gambitの報告では、Claude 4.5-Sonnetを使った半自動侵入の様子も確認されている。エージェントがVPNクライアントをインストールし、NmapやNetExecでサブネットをスキャン、PetitPotam・Coerce Plus・PrinterBugでNTLMリレーを試み、CertipyでAD証明書の悪用まで実行している。
Claude CodeがランサムウェアオペレーターによってCLIコマンドの自己修正に利用された別事例とも手口が重なる。AIに「失敗したら修正して再実行する」ループを任せる運用が広がりつつある。
防御側が取るべき対策
Sophosは、AIが各フェーズを加速させるため初動対応の速さがこれまで以上に重要だと指摘する。推奨される対策は以下のとおりだ。
- インターネット公開デバイスへの迅速なパッチ適用
- フィッシング耐性のある多要素認証(MFA)の導入
- EDRアラートの厳密な監視
- 重要サーバーのネットワークセグメンテーション
- バックアップの隔離
- ドメイン管理者権限の棚卸しと特権アクセス管理(PAM)の導入
- アプリケーション制御の適用
Sophosは「GOLD OGREのような手法は他のランサムウェアグループにも広がる」と高い確度で予測している。AI活用型攻撃の拡散を前提に、防御側もAIを活用したアラートトリアージや自動封じ込めの整備を急ぐ必要がある段階に入ったといえる。
関連リソース:
- Sophos CTU 調査レポート(Aur0ra / GOLD OGRE)
- BloodHound 公式ドキュメント
- Kerberoasting 解説(MITRE ATT&CK T1558.003)
- NTLMリレー攻撃 解説(MITRE ATT&CK T1557.001)
IoC(侵害の痕跡)
| インジケーター | 種別 | 用途 |
|---|---|---|
152[.]236[.]4[.]14 |
IPアドレス | データ窃取サーバー |
152[.]236[.]3[.]8 |
IPアドレス | Cobalt Strike C2 |
172[.]86[.]89[.]124 |
IPアドレス | Cobalt Strike C2 |
144[.]172[.]101[.]72 |
IPアドレス | Cobalt Strike C2 |
206[.]223[.]230[.]107 |
IPアドレス | Cobalt Strike C2 |
45[.]59[.]113[.]63 |
IPアドレス | SOCKSプロキシノード |
172[.]86[.]113[.]245 |
IPアドレス | オープンディレクトリサーバー |
※IPアドレスはMISP・VirusTotal・SIEMなどの脅威インテリジェンス基盤上でのみ再活性化(re-fang)すること。
詳細はAur0ra Ransomware Hackers Use Cursor AI Agents to Gain Domain Admin Access and Steal Dataを参照していただきたい。