10月30日、Tech Startupsが「Microsoft to raise $25 billion in debt to fund AI expansion despite record revenue and 60,000 employee buyout offers」と題した記事を公開した。過去最高水準の収益を記録しながらも250億ドルの社債発行と約6万人への希望退職募集を同時に進めるMicrosoftのAIインフラ投資戦略は、現在のテック業界における資本配分の論理を凝縮して見せている。
四半期売上9兆円超でも「借りる」という判断
Microsoftは2026年10月29日(木)、総額250億ドル(約3兆7,500億円)の社債発行の条件決定を発表した。直前に発表された2027会計年度第1四半期決算では、売上高が922億8,000万ドル(前年比19%増)、純利益が366億ドルと、Wall Streetの予想(906億3,000万ドル)をいずれも上回る好決算だった。
それでも社債発行に踏み切った理由は明確だ。Microsoftが2026年暦年に計画するデータセンター増強やAIチップ調達などの設備投資額は、ファイナンスリースを含め約1,750億ドルに上る。四半期純利益366億ドルを稼いでも、その規模の投資を自己資金だけで賄い続けるのは難しい。
CFOのAmy Hoodは決算説明会で「我々のレーティング水準であれば債券市場へのアクセスは恵まれている。まだそこを活用していなかった」と述べ、市場環境が有利なタイミングで追加調達を検討する姿勢を明示した。
今回の社債はMicrosoftにとって9年超ぶりの米国投資適格債の新規発行(Reuters報道)。10本のトランシェ(※期間2028年〜2066年の無担保優先債。トランシェとは1つの発行をリスク・期間・金利などで分割した各部分を指す)で構成され、クロージングは11月4日を予定する。Microsoftが有するAAAの信用格付け(※格付け機関が発行体に付与する最上位の信用評価。デフォルトリスクが極めて低いとみなされ、低利での大規模調達が可能になる)が奏功し、注文総額は1,000億ドル超と、調達目標額の約4倍に達したとReutersは伝えている。
同じ週に6万人へ希望退職を打診
この社債発行と不可分に語られるのが、3日前の10月26日(月)に発表された希望退職プログラムだ。対象は約6万人で、AIエクスペリエンス、Copilot、財務、人事、Xbox、WindowsおよびデバイスなどのチームがUSA・カナダ・英国・インドで対象となる。なおMicrosoftの全世界従業員数は2025年6月時点で約22万8,000人(同社年次報告書より)であり、今回の対象規模はその約26〜27%に相当する計算となる。
あくまで自発的な応募制であり、6万人が全員退職するわけではない。Microsoftは実際の応募見込み人数も公表していない。ただ、「AI投資に兆円単位を注ぎ込みながら、人件費は抑制する」という構図は数字として鮮明に浮かび上がる。
Big Tech全体に広がる「借金でAIを建てる」構造
Microsoftだけの話ではない。Amazon、Alphabet、OracleといったBig Techも、データセンターやクラウドインフラの資金調達に債券市場を活用している。Oracleは直近で別途100億ドルの調達を計画しているとされる。
こうした巨額投資には電力確保という別のコストも伴う。WIREDの調査報道によれば、Microsoftを含む大手テック企業に関連する天然ガス発電プロジェクトは、許可容量フル稼働時に相当量のCO₂排出を生じさせる可能性があると指摘されている。
重要なのは、Microsoftの借入動機が「資金難」ではない点だ。Reutersの報道によれば、Microsoftは今後もフリーキャッシュフローをプラスに維持する見通しであり、借入の動機はあくまで「AAAの格付けを活かした手元流動性の最大化」にある。格付けが高いほど低い金利で大規模調達ができるため、手元資金を温存しつつ債券市場を活用するのは財務的に合理的な判断といえる。
残る問いは「いつ回収できるか」
社債の使途についてMicrosoftは「運転資金、設備投資、自社株買い、買収、既存債務の返済などを含む一般的な企業目的」とするにとどめており、全額をAIに充てると明言はしていない。
クラウド収益は伸びており、顧客がAIコンピューティングを買い始めていることは示されている。ただ、1,750億ドル規模の投資が持続的な利益に転換されるかどうかは、投資家が今後も注視し続けるポイントだ。四半期売上が922億ドルを超える企業でさえ借り入れに頼らざるを得ないというこの事実が、現在のAIインフラ競争のコスト水準を端的に示している。
詳細はMicrosoft to raise $25 billion in debt to fund AI expansion despite record revenue and 60,000 employee buyout offersを参照していただきたい。