10月31日、Inside AI newsが「Kuaishou's Kling AI unit completes a near $3 billion funding round」と題した記事を公開した。中国の短動画プラットフォーム「快手(Kuaishou)」傘下のAI動画生成部門「Kling AI」が約198億元(約29.8億ドル)の資金調達を完了した。生成AI動画市場では欧米スタートアップが相次いで大型調達を行っているが、今回のラウンドはアジアの生成AI企業としては今年最大級の規模に達し、市場の競争地図を塗り替える可能性がある。
約3,000億円——アジアのAIスタートアップ最大級の調達
快手テクノロジー(Kuaishou Technology)は、傘下のBeijing Kling(北京クリング)が約198億元(約29.8億ドル)の資金調達を完了したと発表した。円換算の「約3,000億円」は1ドル≒150円を基準とした概算であり、為替レートによって変動する点に留意されたい。これはアジアの生成AI企業における今年最大級の単一調達ラウンドに位置づけられる。
出資比率の構造が興味深い。快手は「Lucky Labs」という持ち株会社を通じてKling AIを保有し、**株式の3分の2と議決権の52.45%**を維持する。外部投資家には3分の1の株式を売却しつつも、事業の意思決定は快手が握るという設計だ。これにより快手はKling AIの財務を連結計上しながら、外部資本を成長の燃料として活用できる。
今回の調達額(3分の1の株式相当)から逆算すると、Kling AIの企業価値は約90億ドルに上ると推計される。ただしこの数字はあくまで株式比率に基づく試算であり、元記事が企業価値を明示しているわけではない点を断っておく。上場しているAI企業の時価総額に匹敵する水準だ。
なぜ快手はKling AIを切り出したのか
快手がKling AIをLucky Labsという独立した持ち株構造に置いたのは、単なる組織上の判断ではない。株式の一部を外部に売却することで、本体への希薄化を最小限に抑えながら大規模な資金を調達できる。**52.45%**という議決権比率は、連結会計上の要件を満たしつつ、少数株主にも一定の影響力を与える水準として意図的に設定されたと見られる。
同様のアプローチはAlibaba(アリババ)が自社のクラウド・AI部門で先行して採用しており、中国テック大手の間でトレンド化している。
快手の主要株主であるTencent(テンセント)も、この構図から間接的に恩恵を受ける。テンセントは独自のAI動画事業を持つが、快手への出資を通じてKling AIの成長にも乗れる。快手は資本を得て、テンセントは直接保有せずにAI動画市場への橋頭堡を確保する——双方にとって合理的な関係だ。
Kling AIとは何か
Kling AIはテキストプロンプトから短尺動画を生成するサービスだ。日本語圏ではまだ知名度が限られているが、親会社の快手はTikTok(ByteDance)と並ぶ中国の二大短動画プラットフォームであり、月間アクティブユーザーは数億規模に達する。その快手が社運をかけて育成しているのがKling AIである。
競合としては、**OpenAIのSoraやRunway、Stability AIのStable Video**などが欧米市場でしのぎを削っている。Kling AIは自然な動きと物理的に整合した映像を生成できる点が評価されており、クリエイターや企業向けにサブスクリプションとビデオ生成クレジットの販売で収益を上げている。
ただし、推論(inference)のコンピューティングコストは依然として高く、今回の調達資金の相当部分はデータセンターの拡充と研究人材の採用に充てられる見込みだ。また、東南アジアや欧州市場への国際展開を加速させる計画も明らかにされている。
AI動画生成市場における資金競争
今回の調達は、複数の欧米AI動画スタートアップが相次いで資金調達を発表した直後のタイミングと重なる。地政学的緊張や中国国内の経済的逆風があっても、投資家が生成AIに大型ベットを続けていることを示す。
一方で、中国・欧米双方でAI生成コンテンツへの規制審査が強まっており、コンテンツモデレーションや著作権への対応がKling AIの長期的な成功を左右する課題となる。快手の株価は今年、広告事業への不透明感から不安定な動きを見せているが、今回の調達は具体的な財務成果として株式市場にも一定のシグナルを送る。
詳細はKuaishou's Kling AI unit completes a near $3 billion funding roundを参照していただきたい。