10月30日、Futurum Researchが「Alphabet Q3 FY 2026: Cloud AI Growth Contrasts With Search Challenges」と題した記事を公開した。この記事では、AlphabetのFY2026 Q3決算においてGoogle CloudのAI事業が急成長する一方、検索広告の収益化が会話型AI利用の拡大に追いついていない現状について詳しく紹介されている。
Cloud AIは倍増、Searchは12%成長——二極化が鮮明なAlphabet Q3
AlphabetはFY2026 Q3において、総収益1275.8億ドル(前年同期比+25%)を報告した。最大の牽引役はGoogle Cloudで、前年同期比103%増の307.1億ドルという急拡大を見せた。対して、Google Servicesの柱であるSearch関連収益は12%増の633.5億ドルにとどまった。なお、12%という数字は単独でみれば高成長の部類だが、Cloud事業の100%超という急伸と並べると相対的に見劣りするという構図だ。YouTube広告も9%増の112.1億ドルと、Cloud成長率との差が際立つ。
営業利益は30%増の405.8億ドル、営業利益率は30.5%から31.8%へ改善した一方、純利益は前年比25%減の261.7億ドル、希薄化後EPSは2.12ドル(前期2.87ドル)と減少している。Cloud急成長にもかかわらず純利益が落ちているのは、AIインフラへの大規模な設備投資が費用として計上されていることが主因だ。元記事では税務上の一時項目や会計処理の影響にも触れており、単純な業績悪化とは区別して読む必要がある。
Sundar Pichai CEOは「AI投資が商業クエリを含む検索クエリ全体の成長を牽引しており、前年比クエリ成長率は過去5年で最高水準」と述べている。ただし、クエリが増えても広告収益に直結していないところにこの決算の核心がある。
Gemini Enterpriseがエンタープライズ支出を拡大する構造
Cloud成長の実態を掘り下げると、Gemini Enterpriseの法人普及が大きく寄与している。プラットフォーム支出は前年同期比4倍超に拡大し、Fortune 100企業の約90%がGemini Enterpriseを利用しているという。AIサービス全体での知識業務向けシートは1億席以上を販売済みだ。
具体的な導入例として以下が挙げられている:
- BNP Paribas:65,000人超の従業員にGemini Enterpriseを展開
- Tata Steel:9ヶ月間で300以上の特化型エージェントを導入、顧客対応時間を50%削減
Geminiエージェントはタスク実行にとどまらず、コンピュート・ストレージ・データベース・セキュリティと連携するアーキテクチャになっており、顧客が自動化を進めるたびにGoogle Cloudの消費量が自然に増える構造になっている。競合のSaaSベンダーにとっては、ワークフロー統合と定量的な業務成果の提示が差別化の核になる局面だ。
TPUの外部販売——Googleがインフラ競争に打って出る
エンジニア視点で興味深いのが、**TPU(Tensor Processing Unit)**の外部展開戦略だ。GoogleはOracle・Crux AIとのパートナーシップや顧客データセンターへの直接導入を通じ、自社クラウド外でのTPU利用を拡大している。
第8世代TPUは、前世代比でトレーニング性能が最大2.7倍、推論のコストパフォーマンスが80%改善したとされる。また、Metaと共同開発したTorchTPUにより、PyTorchの既存コードをほぼそのままTPU上で動かせるようにして、開発者の移行コストを下げる狙いがある。従来TPUを動かすにはGoogleが開発したXLA(Accelerated Linear Algebra)コンパイラへの依存が前提であり、PyTorchエコシステムとの親和性は低かった。TorchTPUはこの障壁を取り除き、NVIDIAのGPUを前提に書かれたコードベースを持つ開発者層へのリーチを広げる位置づけだ。
規制やセキュリティの都合でパブリッククラウドに出せないデータを持つ企業向けに、オンプレミス相当の選択肢を提供することで、Googleのアドレッサブルマーケットを広げる戦略だ。ただし、TPUのシステム収益や製品マージンは非開示のため、ハードウェア販売がCloud事業の収益性にどう影響するかは外部からは見えない。
AI Searchの収益化ギャップ
クエリ成長と広告収益の乖離の背景にあるのがAI Modeの普及だ。AI Modeでのクエリは従来の検索と比べて平均3倍の長さを持ち、世界全体で5件に1件が音声・画像・文書を含むマルチモーダルな入力になっているという。リッチな意図シグナルが得られる反面、従来型の検索広告フォーマットとは相性が悪い。
Searchのシーケンシャルな成長率減速については、最大の要因は為替変動であり、AI代替だけで説明できるわけではないと記事は指摘している。広告面では、AI Mode広告の国際展開やマルチターン広告(会話の流れに沿った複数ステップの広告)の米国導入、そしてUniversal Commerce Protocolによる直接チェックアウト機能の追加が進んでいる。Universal Commerce Protocolとは、数十万ブランドの商品・在庫・決済情報をSearch面から直接呼び出し、広告クリックから購入までをプラットフォーム内で完結させる仕組みで、Googleが推進する広告収益化の新軸の一つだ。
また、AI MaxはSearch広告のターゲティングと入札を自動最適化するキャンペーン機能で、Google広告のヘルプセンターでも関連情報が確認できる。Telstraの事例では、このAI Maxの活用でコンバージョンが52%増、注文あたりコストが36%減という結果が出ているが、これがプラットフォーム全体に適用できるかは未証明だ。
2027年に向けた投資計画と今後の焦点
AlphabetはFY2026の設備投資ガイダンスを1950億〜2050億ドルに据え置き、FY2027はさらなる大幅増を示唆している(具体的な数値は未公表)。Q4については、為替逆風と検索収益の比較ベース悪化を想定している。
Google Cloudのバックログは5610億ドルに達しており、そのうち55%超が今後24ヶ月以内に売上転換する見込みだ。ただし、サードパーティのコンピューティングキャパシティへの依存増加が近期の利益率を下押しするリスクがある。
Gemini Enterpriseの拡大・TPU外部展開・AI Search収益化という三つの課題それぞれに異なる実行リスクがあり、インフラコストの増大を吸収しながら成長を維持できるかどうかが、次の数四半期の焦点になる。
詳細はAlphabet Q3 FY 2026: Cloud AI Growth Contrasts With Search Challengesを参照していただきたい。