10月31日、How-To Geekが「Anthropic's Claude AI found a critical Linux flaw that could give hackers root access」と題した記事を公開した。Anthropicの未リリースClaudeモデル(具体的な系統は非公開)がLinuxカーネルの重大な脆弱性を発見し、root権限奪取までの攻撃を自律的に構築したというものだ。
AIが脆弱性発見から攻撃実証まで一気通貫で実施
Anthropicの未公開Claudeモデルが、Linuxカーネルに重大な脆弱性を発見した。さらに単なる発見にとどまらず、パスワード不要・クリック不要のゼロクリックでroot権限を奪取する攻撃を自ら構築してみせた。
この脆弱性はCVE-2026-98432として追跡されており、深刻度スコアは10点満点中9.8という最高水準に位置する。なお、このCVE番号は元記事に記載されているものをそのまま引用している。
脆弱性の中身:MPTCP実装のuse-after-freeバグ
問題はLinuxカーネルのネットワーキングコードにある。具体的には**MPTCP(Multipath TCP)**の実装が対象だ。MPTCPは、Wi-Fiとモバイル回線のような複数のネットワーク接続を1セッションで束ねて使う仕組みで、近年のマルチホーム端末で広く使われている。
バグの種類は**use-after-free**と呼ばれるメモリ管理の誤りだ。新しい接続が確立される際、Linuxは接続設定を新しいソケットに渡す。このとき、別のCPUコアが同じ設定を使って再送要求に応答している場合がある。しかし最初のコアが設定を早まって解放してしまうと、もう一方のコアがすでに解放済みのメモリを読み取ることになる。
攻撃者はこの誤りを悪用し、以下のステップでカーネルを掌握できる:
- カーネルメモリのリーク
- KASLRのバイパス(KASLRはカーネルコードの配置アドレスをランダム化する防御機構)
- カーネルの制御フローのハイジャック
- 任意のシェルコマンドの実行
Claudeが構築したPoC(概念実証コード)は、最初のメモリリークからroot権限取得まで約53分で完結した。
影響範囲とパッチ状況
影響を受けるLinuxカーネルブランチは8系統に及び、バージョン4.4まで遡る。修正済みのカーネルバージョンは以下のとおりだ:
- 5.10.272
- 5.15.223
- 6.1.190
- 6.6.159
- 6.12.113
- 6.18.56
- 7.2.10
- 7.3-rc7
ただし、パッチがすべてのディストリビューションに届くまでには時間差がある。記事執筆時点では、Debian、Oracle Linux、SUSE、Amazon Linuxの一部リリースではパッチ適用済みのパッケージが提供されている一方、UbuntuとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)は未提供とのことだ。パッチ提供状況はディストリビューションごとに随時更新されるため、最新情報は各ベンダーの公式セキュリティアドバイザリを確認されたい(Ubuntu Security Notices、Red Hat Security Advisories)。
システム管理者がとるべき対応は以下のとおり:
- カーネルバージョンを確認する
- アップデートが提供され次第、適用する
- サーバーでMPTCPリスナーが有効になっているか確認する
AIによる脆弱性研究の新しい段階
これまでAIを使ったセキュリティ研究は「既知の脆弱性パターンを検索する」段階にとどまることが多かった。今回のケースはそれを大きく超えており、未リリースモデルが未知のカーネルバグを発見し、バイパス手法の選定から実証コードの生成まで自律的に実行している。
この種の能力が持つ意味は、防御側にとっての恩恵だけにとどまらない。同等の手法が悪意ある行為者に利用された場合、脆弱性の発見・武器化サイクルが劇的に短縮されるリスクがある。AIが高度な攻撃能力を自律的に行使できるという事実は、「AIの安全性」と「サイバーセキュリティ」が交差する倫理的問題でもあり、AI開発者がどの範囲・どの条件下でこうした研究を許容するかという線引きが、今後業界で問われることになるだろう。※編集部の考察
Anthropicが公開した詳細はCSOオンラインのレポートにも掲載されており、業界での反響は大きい。
詳細はAnthropic's Claude AI found a critical Linux flaw that could give hackers root accessを参照していただきたい。