10月30日、Global Newsが「Ottawa to invest up to $1.6B in Canadian AI firm Cohere - National」と題した記事を公開した。この記事では、カナダ連邦政府がAI企業Cohereに最大16億カナダドルを投資し、自国のAI主権確立を目指すと発表したことについて詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
「AIの未来を他国に委ねない」——カナダ首相が16億ドル投資を宣言
カナダのマーク・カーニー首相は10月29日、モントリオールで開催されたEUとの首脳会議の場で、カナダのAI企業**Cohereへの最大16億カナダドル(約1,700億円)**の連邦投資を発表した。
「AIの未来が、私たちの知らない場所で、信頼できない者たちによって決められるのを待つつもりはない。私たちはここで、正しい方法で構築する」とカーニー首相は述べた。
この投資は政府単独ではなく、Nvidia、Bell、ドイツのSchwarz Groupなど民間投資家と並走する形で行われる商業ベースの案件だ。政府は資金を段階的に提供し、Cohereは定期的に進捗を報告する義務を負う。
Cohereに課せられた条件
単なる補助金ではなく、政府はCohereに対して明確なコミットメントを求めている。主な条件は以下の通りだ。
- 少なくとも1,000人の「高賃金カナダ人技術職」を新規創出
- 2030年までに17億カナダドル以上をコンピューティングインフラ整備に投資
- カナダ国内に本社・法人格を維持
- 大学・研究機関との研究パートナーシップへの投資
- 学生・卒業生向けの機会創出
- カナダAI安全研究所との協力継続
資金の出し方が段階的で報告義務付きという構造は、政府がCohereへの"白紙委任"を避けつつ、成果に応じて支援をスケールさせる設計になっている点が興味深い。
背景:Cohereの現在地とカナダのAI戦略
Cohereは創業7年で、CEOのAidan Gomezは今回の発表で「フロンティアAI技術をグローバル規模で構築している世界でも数少ない企業のひとつ」と述べた。また、米中以外では最大のAI企業だとも主張している。
カナダ政府とCohereの関係はこれが初めてではない。2024年にはコンピューティング能力強化のために最大2億4,000万カナダドルを提供済みで、2025年には公共サービス業務へのAI活用を探る協定も締結している。今回の16億ドルはその延長線上にある、より大規模な投資だ。
さらに今年4月、Cohereはドイツの**Aleph Alpha**との合併を発表しており、両社は「ドイツとカナダを拠点とする」企業となることを表明していた。カーニー首相は今回の投資をカナダとEUが共同で構築できる具体例と位置づけ、合併後もCohereがカナダ企業であり続けることを強調した。
AIインフラの「主権」という概念——自国でLLM(大規模言語モデル)を持ち、政府・企業の機密データを国外に出さずにAIを運用できる体制——は、EUや日本でも議論が活発化している。カナダのAI担当大臣Evan Solomonは以前から「大規模言語モデルを持つ国は世界でも数少ない」としてCohereをカナダのAI戦略の要と位置づけてきた。
何が変わるか
政府のプレスリリースは「カナダの企業・政府がAI導入においてより多くの選択肢を持ち、機密情報をより強くコントロールできるようになる」と述べている。
国家が民間AI企業に巨額投資し、インフラと雇用と安全保障をセットで求めるこのモデルは、今後の各国AI政策の参照事例になりうる。
詳細はOttawa to invest up to $1.6B in Canadian AI firm Cohere - Nationalを参照していただきたい。