10月31日、Inside AIが「Credit Saison Reports 954% ROI from ChatGPT Enterprise Pilot」と題した記事を公開した。この記事では、クレディセゾンがChatGPT Enterpriseの1ヶ月パイロット導入で954% ROIを達成し、全社展開に踏み切った経緯について詳しく紹介されている。
当初目標の約2倍——954%というROI
クレディセゾン(約3,700名の従業員、約3,116万人のカード会員を抱える日本の信販会社)は2025年6月下旬から8月上旬にかけて、315名を対象にChatGPT Enterpriseのパイロット運用を実施した。
結果は自社設定目標(ROI 500%、月間7.5時間の工数削減)を大幅に超え、実測値はROI 954%、参加者1人あたり月平均14時間(年換算で約169時間)の削減を記録した。
パイロット後のアンケートでは、管理職の75%、一般社員の70%が「ChatGPT Enterpriseなしでは業務が成り立たない」と回答。法務部門では約80%が業務遂行能力の向上を実感し、IT部門でも80%以上が職務満足度の向上を報告している。
鍵は「経営陣が自ら使う」こと
この結果を支えた最大の要因は、経営陣の積極的な参加だ。CDO兼CTOの小野和俊氏は早い段階で方向性を示し、COOの水野克己氏に対してこう語ったという。
「社員に使うよう促すだけでは不十分だ。リーダー自身が日常的に使わなければならない」
水野氏は自ら会社調査用のカスタムGPTを構築し、日常業務に組み込んだ。経営トップが「使っている姿を見せる」ことで、パイロット結果から全社展開承認までのプロセスが大幅に短縮された。
パイロット参加者はボランティア、役員推薦者、および社長を含む全役員で構成され、国内従業員の約**10%**に相当する。
株主総会シミュレーターと、エンジニアの850時間/月削減
パイロット中に特に注目を集めたユースケースが、音声モードを使った株主総会シミュレーションGPTだ。従業員がリアルな質疑応答を事前に練習できるツールで、シニアリーダーシップの強い関心を集め、音声AIの広範な採用を後押しした。
また、エンジニアリングチームが活用しているCodexは、月間850時間の工数削減効果を出しているとも報告されている。CodexはOpenAIが提供するコード生成・補完に特化したAIモデルで、現在はChatGPTおよびAPIに統合される形で提供されている(独立したサービスとしてのCodex APIは2023年に終了しており、本記事で言及されているのはOpenAIのコーディング支援機能全般を指すものと見られる)。
社内での知見共有はSlackのチャンネルを通じて行われ、クレディセゾンのCenter of Excellence(CoE)が運営。成功事例だけでなく失敗事例も共有する文化が定着しているという。OpenAIは役員向けトレーニングと初心者向け実践ワークショップを提供した。
次のフェーズ——「Corporate AX」へ
クレディセゾンはAI戦略を3つの軸で整理している。
- Employee AX:従業員の働き方の変革(今回のパイロットが該当)
- Customer AX:顧客体験の改善(AI活用のコールセンターを開発中)
- Corporate AX:AIを前提とした組織設計・役割分担の見直し(現在、適用領域の特定段階)
同社はCorporate AXについてこう述べている。
「Employee AXで止まることはできない。AIを起点として組織設計と責任分担を再定義する——それがCorporate AXへの挑戦だ」
なお、今回の954%というROI数値は自社測定・短期パイロットに基づくものであり、独立した第三者検証を経たものではない点には留意が必要だ。ただ、具体的な計測手法と経営層の可視的なコミットメントを組み合わせた導入事例として、他の金融機関が参照するベンチマークになり得る内容である。
詳細はCredit Saison Reports 954% ROI from ChatGPT Enterprise Pilotを参照していただきたい。