10月28日、TechSpotが「Congress is questioning Delaware's plan to let AI agents run companies」と題した記事を公開した。AIエージェントが人間の監督なしに企業を丸ごと経営し、その法人が訴訟の当事者にもなれる——デラウェア州が検討しているのはそんな制度だ。米連邦議会はこの構想に懸念を示し、州への文書提出を要求するとともに連邦立法による制限も示唆している。
AIが「法人」として企業を経営する——デラウェア州の構想
デラウェア州が検討しているのは、Artificial Intelligence Company(AIC)という新たな法人形態の創設だ。草案によれば、AICは30ヶ月間の規制サンドボックス(新技術を限定的に試験運用する制度)内でテストされる。銀行業を除くあらゆる合法的な事業目的を持つことができ、AIエージェントが人間の日常的な監督なしに経営判断を下す。また、AIC自体が訴訟の当事者になれる——つまり、訴える側にも訴えられる側にもなれる法的主体として設計されている。
各AICには1名のメンバー(個人または法人)が設置され、そのメンバーは会社に十分な資金を供給する責任を負う。原則として、メンバーはAICの負債から保護される。ただし、詐欺、意図的な法律違反、そしてメンバーが知っていた(または知るべきだった)会社の目的を逸脱した活動については例外とされている。
連邦議会が待ったをかける
下院監視委員会委員長のジェームズ・コマー議員(ケンタッキー州共和党)は10月26日、デラウェア州知事マット・マイヤーに書簡を送り、この法案に関する文書の提出を求めた。要求内容は安全性評価の詳細や業界の関与状況など。さらに、連邦立法によって州のAI施策を制限する可能性も示唆しており、単なる照会にとどまらない圧力となっている。
批判の核心は責任の所在だ。元記事がFinancial Timesの報道として引用する法律専門家は、提案されている責任免除は「過度に寛大であり、十分な根拠を欠いている」と指摘した。ソフトウェアが意思決定し、人間が利益を受け取る構造において、現行の例外規定が実際の被害に対して機能するかどうかは疑問が残る。
推進側の論理と財政的な動機
支持側の主な主張は「AIの行動を追跡可能にし、責任の帰属先を明確にする」というものだ。デラウェア州のCharuni Patibanda-Sanchez国務長官は、Norm AI CEOのジョン・ネイ氏とともにFortuneでこの構想を説明した。
財政的な動機も無視できない。デラウェア州は現在、法人税と法人設立手数料で年間20億ドル以上を州予算に得ており、これは歳入の約3分の1に相当する。AICの法人設立手数料も同様の収益源として期待されている。デラウェア州が米国企業の設立先として圧倒的な地位を持つのは、こうした制度設計の巧みさによるところが大きい。
「AIが会社を経営する」構想の背景
AIを経営に関与させるアイデア自体は新しくない。2025年10月にはLogitechのCEO、ハネケ・フェイバー氏があらゆる取締役会にAIエージェントを参加させることを提唱。同年11月にはOpenAIのサム・アルトマン氏が、自社をAIが経営する最初の大企業にしたいと発言している。
ただし、今回の法案はまだ草案の段階だ。地元メディアのSpotlight Delawareによれば、正式な法案提出は来年以降になる見通しで、マイヤー知事のオフィスはコマー議員の書簡を精査中と述べるにとどめている。AIエージェントに企業全体の経営を委ねるこの構想は、技術的リスクと法的責任の両面で多くの未解決問題を抱えたまま、立法プロセスの入口にも達していない段階だ。
詳細はCongress is questioning Delaware's plan to let AI agents run companiesを参照していただきたい。