10月27日、CNBCが「Anthropic's IPO could be 'speculative fiction' or a 'generational moment'」と題した記事を公開した。この記事では、AnthropicがS-1(上場申請書類)を証券取引委員会(SEC)に提出し、Nasdaq上場に向けた手続きを正式に開始したことを受け、IPO目論見書に対する投資家の賛否両論について詳しく紹介されている。
S-1の提出によってAnthropicの財務実態が初めて公開され、驚異的な成長率と膨大な損失という「硬貨の表裏」が市場に露わになった。強気派は「世代を画する瞬間」と称賛する一方、弱気派は「スローモーションの列車事故」と断じており、AIセクター全体の評価を占う試金石として注目を集めている。
「世代を画する瞬間」か「投機的フィクション」か
2021年にOpenAIから独立した研究者グループが創業したAnthropicが、史上最大規模のIPOに向けて動き出した。5月時点の評価額は9,650億ドルだったが、今回のIPOでは1.5兆〜2兆ドルの評価額を目指しているとされる。実現すれば、米国テクノロジー企業の時価総額トップ10に即座に入る水準だ。
目論見書が公開されるや、強気派と弱気派の両陣営から激しい反応が上がっている。
強気派が注目する数字
強気派が根拠として挙げるのは、以下の指標だ。
- 売上成長率:前年比1,300%
- ネット収益維持率(NRR):900%
- 粗利益率(推定):85%
NRR(Net Revenue Retention)とは、既存顧客からの収益が前年比でどれだけ拡大したかを示す指標で、SaaS企業の成長力を測る重要な数値だ。900%という数字は、既存顧客がサービス利用を大幅に拡大していることを示している。
エンタープライズ顧客の構成も開示された。目論見書によると、過去1年間に10万ドル以上を支出した企業顧客は1万1,900社以上、100万ドル以上は1,900社以上、1,000万ドル以上は約250社に上る。2026年最初の9カ月間では、上位5社が売上全体の約4分の1を占めた。
Redpoint VenturesのマネージングディレクターであるErica Brescia氏(同社はAnthropicの投資家)は、CNBCの取材に対して次のように述べた。
「この旅のこれほど早い段階で、これほど好調なビジネスを見るのは非常に印象的だ。Anthropicの前には、まだ天文学的な機会が広がっている」
弱気派が指摘するリスク
一方、弱気派の懸念も数字を見れば無視できない。
今年上半期だけで約8億7,000万ドルの純損失を計上している(前年同期は129億ドル相当)。ただし、この大半は転換社債や派生商品の公正価値変動によるものだ。加えて、コンピュート(計算資源)関連のコミットメント額は数千億ドル規模に膨らんでおり、競合するオープンウェイト(重みが公開された)モデルとの価格競争も激化している。
金融調査会社New ConstructsのCEO、David Trainer氏は今回のIPOを「ウォール街の巨大な詐欺」と断言する。同氏は先月、Anthropicを「2026年最も馬鹿げたIPO」と評したレポートを発表しており、目論見書を精査した後もその見方を変えていない。
「AIは社会にとって素晴らしいツールになるだろうが、ビジネスにとってはそうではない。テックバブルを経験し、金融危機を経験し、ウォール街でその内側を見てきた者として、これはスローモーションで進む列車事故のように映る」
GoogleとFacebookの初期投資家として知られるRoger McNamee氏(Elevation Partners共同創業者)も厳しい見方を示した。
「このS-1は投機的フィクションとして見るべきだ。素晴らしいストーリーだが、数百ページのその内容は、ストーリーを明確にするために書かれているわけではない」
IPOの行方と評価額の焦点
Anthropicは今後、ロードショー(機関投資家向けの説明会)を経て公開価格を設定し、Nasdaqにティッカーシンボル「ANT」で上場する予定だ。
D.A. DavidsonのマネージングディレクターであるGil Luria氏は、IPOの成否は評価額の設定次第だと指摘する。
「リスクは語れるが、現時点でAnthropicは依然として主要なAI企業であり、純粋なAIプレイだ。投資家はそのエクスポージャーを求めるだろう」
Janus Henderson InvestorsのポートフォリオマネージャーであるDenny Fish氏はより楽観的だ。「これは世代を画する瞬間だ。10年後に振り返れば、これがテクノロジーの最大のパラダイムシフトだったと分かるだろう」と語りつつも、「詳細がすべてを決める」と慎重な姿勢も示した。
今回のIPOが注目される背景には、金利上昇局面でのAIへの巨額投資の持続可能性に対する市場の懐疑があり、Anthropicへの投資家の評価が業界全体の今後を占う試金石になるとの見方がある。
詳細はAnthropic's IPO could be 'speculative fiction' or a 'generational moment'を参照していただきたい。